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第38話:悪巧み

 時雨悠人は驚いていた。


 心の底からだ。


 (まさか、これでも押し切れないのか!?)


 ルカの持ち掛けてきた契約に了承したことで、勇者の時ほどではないが、それなりの魔力を使用することができている。


 失って取り戻して分かる、万能感。


 戦いはすぐに終わらせることができると思ったのだが。


 (強すぎないか!? それとも、今の時代は、これくらいが当たり前とか言わないよな)


 雨のように降り注ぐ、クリスタルの槍を鎖と剣で弾きながら、アリアの強さに対して悪態をつく。


 (しかも、この槍面倒過ぎる!?)


 槍のいくつかは、液体へと変化して、弾いた際に飛沫となり、意思を持ったように時雨悠人にへばりつき、時雨悠人の魔力の流入を妨害してくる。


 粘着性なので一度付着すると剥がすために、僅かの手間が必要だ。


 その隙を眺めてくれるような、相手でもない。


 では、バリアを張ればいいのかと言えば、時雨悠人のバリアを破るのに特化しましたと言わんばかりに、クリスタルの槍の色が黒色へと変化し、凄まじい勢いで削ってくるのだ。


 他にも色は多様に変化して、粘着性の火になったり、黒い雷、鏡のように変形して時雨悠人の攻撃をお返ししたりとやりたい放題である。


 なによりも――


 (向こうもルカの魔力を使っているというか、横取りしてるけど、どうにかできないのか!?)


 『無理です』


 (即答だな!)


 『無理なものは無理と言ったまでです。それに……長くは持たない』


 (意味深な発言をする癖は直っていないんだな……どう意味)


 『心外です。愚か者の表情を見ればよく分かるでしょう』


 (愚か者って)


 アリアと愚か者が上手く結びつかない時雨悠人だが、ルカに促されるように彼女の表情を改めて伺う。


 先程まで余裕がありますと言わんばかりに、楽しそうにしていたのだが。


 「ん?」


 アリアの表情に余裕はなくなっていた。大量の汗に、息も荒く、苦しそうな顔を隠しきれていなかった。


 『このまま戦っていれば勝手に自滅すると推測します』


 (何かした?)


 『何も。何かしたのは彼女ですよ。私の魔力を無理やり横取りしている報いというやつです』


 (そんなリスクがあったのか!? 俺は平気だけど……)


 『当たり前でしょう。私の勇者であるのですから。それで、どうします? このまま戦っていれば勝てると推測しますが』


 『……体のリスクは自覚しているはずだし、そのままジリ貧で負けてくれる相手ではない気がする。それにセブンスの体も心配だ。セブンスを取り戻しても、肉体が壊れていたら意味がない』


 『治せばいいのではないですか?』


 『今の俺で他者をどこまで治せるかは分からない。それとも、確実に治せるくらいにパワーアップさせてくれる?』


 『契約と釣り合わないのでお断りします。それでは、どうしますか?』


 『どうにか捕えるかどうかして、戦闘不能にするしかない。その後に、ラプラスにアリアの接続を切るか、可能なら俺自身で……』


 『そうですか……どちらにしても、私は見ていることしかできないので。時雨悠人、あなたの自由にしなさい』


 『ああ、絶対にセブンスを助けるよ』


 返答はない。飽きてしまったのか、それとも黙って自分を見ているのか。


 どちらにしても、セブンスを救うための力を土壇場で渡して貰えたのだ。感謝せざるを得ないだろう。


 もちろん、タダではなかっただ。


 ※


 全てを失った。


 いや、全てを渡した――肉体の全てを渡し、今残っている時間が少しずつ消えていく。


 それが自分の本来の役割。


 本来なら1000年前に果たすべきであった役割だ。


 セブンスという人形は、創造主であるマスターの魂の器となる役割を担って生み出されたのだから。


 だから仕方がない。


 (シグレの声が聞こえた気がしたけど……仕方ないよね)


 彼はどう思うだろうか。


 怒るだろうか。泣くだろうか。それとも――


(少しでも何かを思ってくれて、覚えていてくれたら嬉しいな)


 もう一度会いたいという思いがないわけではない。


 だけど、それ以上に魔導人形としての役割を捨てるわけにはいかない。


 なのに――


 (なんで私は後悔しているんだろう)


 自分が分からない。マスターよりも大切なものはないはずなのに。


 『――ですか?』


 また、声が聞こえる。


 だけど、シグレではない。


 何処で聞いたことがあるような?


『ん? 届いていない。ならば……どうでもいいですか』


(誰……ラプラス?)


『届いてしまいましたか……ならば、契約をお互いに果たす必要があるようですね。面倒ですが、契約は契約です。それにしても、彼にも似たようなことを言われましたね……キャラ被りは致命的です。また変えますかね。』


 どうやら違うらしい。喋り方は似ているが、声が違う。でも、何処かで聞いたことはある。


(あなたは、誰?)


「知りたいなら、目覚めなさい。そうすれば、理解できます」


(無理。私は、マスターに肉体を渡したから。その内私も……)


『許されない』


(え?)


「それに、人形。あなたには、契約を守って貰う必要がある。代わりに私も契約を果たしましょう」


(けい……やく?)


 何を言ってるのか分からない。


 だがセブンスが戸惑っていても、相手はお構いなしだ。


『まずは、思い出して貰います』


「なに……を?」


『あなたが望んだことを』



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