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第21話:魔物違い

 魔物であって、魔物ではなかった。


 このゼノグラウンドにいる魔物は、時雨悠人が戦ってきた魔物と違い、ゲームや漫画、絵本、小説といった、物語の中から飛び出てきたような姿をしていた。


 時雨悠人が勇者として戦ってきた魔物とは姿形が全く違うといっていい。


 何よりも、保有している魔力の質が根本から違う。


(あの龍や、後からやってきた巨人っぽい奴からも人の憎しみを煮詰めたような気持ち悪い魔力は感じないしな。全くの別物だ。それにしても、本当に俺以外でも魔法が使えるし、戦えるんだな。いや、セブンスが使っているのは魔術か)


 時雨悠人が知っている魔物とは違う上に、空想上でしか存在しないはずの龍、そして新たにやってきた全身を龍の鱗と同じような素材で構成された巨人にも驚いていたのだが、それ以上にセブンスの戦いに驚いていた。


 最初は龍相手に防戦状態のさなか、巨人が追加されたことで、本気で心配していたのだが、それは全くの杞憂であった。


「突然一方的になったというか、攻撃が通るようになったようだけど、徐々に攻撃の出力を上げた?」


 セブンスは、龍と巨人の攻撃を空中を自由に動き回りながら回避し、カマイタチのような魔術で斬撃を放っていた。


最初はずっと弾かれていたので、このままで大丈夫かと思っていたが、徐々にセブンスの攻撃は堅牢なクリスタルの装甲に亀裂を入れるようになっていった。


 今では、容易に装甲を切り裂き、龍と巨人を血まみれにしている。


 最初は、攻撃を重ねることで、クリスタルの装甲にダメージを蓄積させた結果かと思ったのだが、まだ全くダメージを与えていない箇所も、一撃で深い裂傷を与えている。


 だからこそ、威力を徐々に上げているのかと思ったのだが、ラプラスは、それを否定する。


「いいえ。セブンスが使っている『切断スラッシュ』の威力は、一定ですよ」


「でも、最初と違ってスパスパ切断できるようになっている……うお!?」


 セブンスの魔術が龍の首を刎ね飛ばす。


 ズゥン……数十メートル離れた場所でも、倒れる音が時雨悠人の耳に届く。


 そして、残る一体である巨人とセブンスは戦い始めた。


 その巨人も既に片腕を失っており、時折巨人が全身から発生させている、全方向の衝撃波もセブンスには何のダメージも与えられていない。


「セブンスは魔眼で相手の魔力や魔術の性質が分かります。解析も得意なので、一度見た魔術や魔法なら二度目はほぼ相殺できますし、魔力に頼った防御の突破も容易です。龍と巨人の装甲も、少し時間を掛ければ、セブンスなら弱点を発見することができます。威力が徐々に上がって見えるのは、解析が進んだことによって、魔物の装甲がセブンスの攻撃を止められなくなったのでしょう」


「ま、魔眼?」


「はい。そして、セブンスは基本属性の魔術を全て使うことができます。そのため、魔力が介在しているなら、ほぼ全てに対応することができます。魔法、魔術、そして魔力が宿った魔物の装甲、これら全てに、です」


「……」


 何その、チート。


 それが、時雨悠人の端的な感想であった。基本属性がどういったものか分からないが、自然に存在するものなら全部使えたりするのだろうか。


 加えて魔眼で弱点が分かるなら、あらゆる弱点を突くことができるだろう。


(そんなセブンスを……魔道人形を作ることができたマスターって何者なんだ?)


 セブンスやラプラス、そして稀に話に出てくるセブンスの姉妹達である魔道人形を作ったマスターについての情報は少ない。セブンスとラプラスは、あまり話そうとしないし、聞いても話を逸らされる。


 あまり話したくないのだろう。


(もし、俺が勇者として戦っていた時にいてくれたら……)


 セブンスのような魔道人形が沢山いたら、どれだけ心強かっただろうか。


 そして、魔道人形を生み出すようなマスターと呼ばれる人間も、規格外なんだろう。魔力の性質がわかり、幅広い属性の魔術を使える魔道人形を生み出せるのだから、間違いなく規格外なんだろう。


 そして――時雨悠人は一人で戦うことはなかっただろう。周りから恐れられなかったかもしれない。


 何よりも殺されずに済んだかもしれない。


「ユウト?」


「ん? ああ、セブンスってとんでもないんだなって思って……でも、色々な属性の魔術を使えるのに同じ攻撃しかしないんだな」


「見た目は同じでも、属性の配分は変えているはずですよ」


「配分?」


「あの龍や巨人の装甲は単純な炎に強い、雷に強いとかではなく、複数の属性に対して耐性を持っていますし、魔力そのものに対して耐性を持っています。加えて、物理的な攻撃にも強い耐性と、個体による耐性の違いもあります」


「それ、弱点なくね?」


 ラプラスの説明を聞く限りだと、どれだけセブンスが弱点を看破できる目を持っていても弱点を持っていない相手には意味がない。だが、現実ではセブンスは龍の首をふっ飛ばし、巨人も一方的に切り刻んでいる状況だ。


「セブンスは複数の属性を合成することで一番効果的な攻撃をしています。弱点……ではないですが、属性的な不利にはならないです」


「ご、合成!? そんなことできるのか? いやできているから、あの龍の鱗や巨人の装甲を突破しているのか。いや……属性はどうにかできても、魔力耐性もあるんだろ?」


「そこは、セブンスの魔術の威力でゴリ押しです」


「な、なるほど……」


 どうやら、あの斬撃の魔術の威力自体は、かなりのものということなのだろう。そして、属性の合成とはどういったものなんだろうか。


 そもそも、属性にどのような種類があるかも時雨悠人は分からない。


 (炎と雷でファイアボルト……なんて漫画に出てくる魔法は思い浮かぶけど。セブンスの斬撃はカマイタチのような斬撃で……風の属性だけじゃないのか)


 斬撃だから風とか利用しているのだと思っていた時雨悠人だが、どうやらそんな単純ではないらしい。


(後で、セブンスに聞いてみる……か。それに、戦いももう終わりだし)


 視界の先では、セブンスの攻撃で残った最後の腕を吹き飛ばされて、大きな雄叫びをあげる巨人。痛みか、それとも怒りによるものか分からないが、これから待ち受ける結末も巨人は分かっているのだろう。


 「終わりですね」


 ラプラスの言葉とともに、巨人の首が落ちる。



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