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課題4 2人の関係を誤魔化せ①

キャロラインが馬車の中でロイに白状していた頃、王城の一室では騒がしいほどの大声が響いていた。



「キャロラインがサブローと対峙した?!」



 声の主はアルフレッドだ。彼は国立公園で熊が暴れたと報告を別の書類に目を通しながら聞いていたが、キャロラインの名前が出た瞬間書類から目を離すと、会話の内容を聞き大声を上げたのだ。



「それで、キャロラインに怪我は?」


「ご安心ください。熊は誰も傷付けることはせず森に帰ったそうです。」


「そうか!でも何故キャロラインがあの公園に?近付くのを嫌がっていたはずなのに?……おい、キャロラインの側には誰かいたのか!」



 ただ報告をしているだけの騎士に何も咎はないはずなのに、アルフレッドの恐ろしいほどの剣幕に騎士は震え上がっていた。



「熊に襲われそうになっていた初老の男性と、もう1人男性がいたと聞いております。」


「何ーーーー!!!!男だとーーー!何処の馬の骨だ!キャロラインに手を出すなど覚悟ができているんだろうな!」



 男がいる聞いた途端、アルフレッドは城中に響くほどの大声をあげ、報告に来ていた騎士の胸ぐらを掴み振り回す。いくら鍛え抜かれた騎士でもアルフレッドの威圧と力に完全に伸びていることなど、アルフレッドは気づいていないほど周りがみえていなかった。




「随分騒がしいと思ったら、やはりお前かアルフレッド。」



 第一師団の部下達はアルフレッドを止めようと必死になっており、部屋は王城の一室だと思えないほどカオスな状態となっている。

 そんな情景に驚くこともせず、淡々と声をかけれる人物は1人しかいなかった。



「これは、ウィリアム殿下。どうかされましたか?」


「お前……あれだけ大声を出しておいてよくそんな間抜けなことを言えるな。」



 騒ぎの張本人のアルフレッドが、余りにも自らの行動に問題があることなど気づいていないことにウィリアムは深いため息を吐き呆れながら声をかけても、大声を出した自覚がないアルフレッドは、ウィリアムが何を言っているのか理解できないという顔をしているのを見て、もう一度ため息を吐いた。



「ミソニの大熊として他国に恐れられているお前が、ただのシスコンだと知られたら、他国は度肝を抜くだろうな。」


「ウィリアム殿下、キャロラインは可愛いのですから、変な男に捕まらないよう守るべきなのです!!」


「わかったわかった……。後の話は私が聞くから、とりあえず落ち着いて彼を解放しなさい。ただの報告に来ただけなのにこんな仕打ちは余りにも可哀想だ。」


「これは失礼しました。大丈夫か?」



 アルフレッドはウィリアムに言われて胸ぐらを掴んでいた騎士の顔を覗いたが、彼から返事はなかった。



「大丈夫なわけないだろう?お前が散々振り回したんだ。とりあえずすまないがお前達、彼を医務室へ連れて行ってくれ。上司への報告は私から伝えておく。彼には休暇を与えるよう頼んでおくよ。」




 ウィリアムはアルフレッドを止めようとしていた第一師団の騎士に声を掛けると、アルフレッドのせいで気絶させられている騎士を医務室へ連れて行くように伝える。

 第一師団の騎士達はようやくこの場が収まったことに誰もが安堵の表情を浮かべていた。




「申し訳ありません、ウィリアム殿下。」



 先程の威勢はどこへやら。何の罪もない騎士を気絶させてしまったことに落ち込んでいるアルフレッドは、熊よりも子犬のように小さく見える。実際はがたいがいいアルフレッドが子犬に見えるわけないのだが、それぐらい彼は落ち込んで小さくなっていた。




「反省する前に冷静になるんだ。近くにいて駆け付けてよかったよ。もう少し遅くなっていたら第一師団が全滅するところだったな。」


「申し訳ありません。」


「お前のその力は他国への脅威になる。だが国内でその脅威を撒き散らすな。もう少し妹離れをして冷静になれ。」


「仰るとおりです。」


「話を聞くから私の部屋へ来い。ちょうど護衛の時間だろ?」



 アルフレッドが率いる第一師団は王族の警護にあたる。時間で交代制であり、ちょうどアルフレッドが護衛に当たる時間になっていた。



「お前達、後は頼む。では参りましょう。」




 アルフレッドは仕事に気持ちを切り替えると、先程暴れていたのが嘘であるかのように師団長の顔をして部下に指示を出し部屋を後にした。


 残された部下達は部屋も騎士達も無傷で済んだことに安堵のため息を全員が吐くのであった。




 ――――――――――――――――――――




「で、お前はキャロライン嬢とともに男がいると聞いた途端、あんなに取り乱したということか?」



 格式高い調度品が並ぶ部屋で、アルフレッドは立ったまま椅子に座る青年に先程の出来事を尋問されていた。


 アルフレッドに尋問している相手はウィリアム。この国の第一王子であり次期国王という立場の人物だ。彼はアルフレッドとは同じ年のため仲が良く、アルフレッドの暴走を諌めてくれる希少な人物の1人であった。



「申し訳ありません。状況を全て聞く前に取り乱しました。」


「あれは取り乱すというよりも脅しに近かったぞ?とにかく例え妹のことだとしてももう少し冷静になれ。大切な騎士に怪我人が出るところだったぞ。」


「反省しております……。」


「たまたま駆け付けたのが私だったからいいものを、お前の父親の耳に入ったら大惨事になるところだった。」


「確かに、父に見つかれば師団長としての自覚が足りないと叱責され、今頃医務室送りでした。」


「まあ……それもそうだが。私が言いたいのはお前と共に暴走されたら全ての師団が動く羽目になるところだったと言いたいんだよ。」


「……父は大丈夫だと思いますが……。」


「……お前父親のことを見くびらないほうがいいぞ?お前ほど過保護ではないが……キャロライン嬢が以前体調を崩した日があっただろう?」


「半年ほど前ですかね。」


「そう、あの日お前は当然のように朝から仕事が手につかないから帰しただろう?その日お前の父親は仕事をこなしていた。だがな……珍しく焦っていたよ。」


「父がですか?」


「そうだ。ほら窃盗団のリーダーが自白したの覚えているか?」


「はい。王都で犯罪を繰り広げていた奴らですよね?確かリーダーがなかなか自白しなくて手こずっていたのに、急に自白して解決したと記憶していますが。」


「そう……あれな……お前の父親が自白させたんだよ。」


「父が?!」


「なかなか口を割らないから、お前の父親が尋問することになったんだ。だが尋問の日、キャロライン嬢が体調を崩した。一刻も早く帰りたかったんだろう……どう白状させたかは分からないが、あっという間に自白させたよ。……あれだけ強気だったリーダーが自白した後は怯えていたと聞いている。……お前の父親が何かやったんだろうな。全く……お前達親子はキャロライン嬢に執着しすぎだ。そろそろ彼女を自由にしてやれ。」


「わかってはいますが……、キャロラインが変な男に捕まらないから心配で仕方ないのです!」


「ならどんな男なら納得する?」


「……………………私や父より強い男です!」


「お前それ……誰もいないぞ?!お前のせいでキャロライン嬢は結婚できなくなってもいいのか?!」


「可愛いキャロラインの花嫁姿は見たいです!ですがキャロラインが他の男と添い遂げるなど……想像できません!!」


「待て待てお前、泣きそうになるなよ……。全くキャロライン嬢が心から愛する男性が現れたらどうするんだよ。このままだとお前嫌われるぞ?」


「キャ……キャロラインに嫌われる!!あ―――――!!」


「落ち着け!!おいそれ以上暴れるとこの部屋が壊れる。お前はもう帰れ!!!」




 ウィリアムからの嫌われるという発言がかなりこたえたのか、アルフレッドは暴れ出す。第一王子であり王太子であるウィリアムの執務室を破壊したとなれば、それこそ大問題だ。ウィリアムが叫んだアルフレッドをこの部屋から追い出す言葉は、王城に響き渡るのであった。

お読みいただきありがとうございます

今日から課題4の始まりです



続きは明日の11時に更新予定です




引き続きよろしくお願い致します

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