あしながの集落の世界樹
アキホちゃんをいけにえに差し出した長は無視した。話をしても通じないでしょ。日本人にもいるよね、日本語が通じない人。たぶんそれ。アキホちゃんも怖いのか俺にしがみつきっぱなしだし。
注がれる白い目? 黒い目で見返してやるわ。
【我が燃やしてもよいのであるな】
「燃やしても意味がないから放置が一番」
クレーマーみたいなもんだし。
『見つめられるとぞくぞくするのですわ』
紙がぴーんとしてるけどあなた何をしてるんです?
この人もほっとこう。
「で、これが世界樹?」
俺の目の前には高層オフィスビルがある。しゃれたデザインで総ガラス張りで、何なら入り口が自動ドアだ。奥にある自動改札も見える。やだな-あれ。これから監獄に入るんですよって感じでさ。
「すっごく見覚えがあるのは気にしないようにしよう」
俺の職場のビルにしか見えないけど違うのは5階部分から水がダバダバ滝のように流れていることかな。あそこに行くのかー。
「アテクシ、あそこから流されて」
「絶叫系アトラクションよりも怖そうだけどよくぞ無事でって息してなかったねそういえば」
そりゃまあそうなるか。
近寄ってもいないのに自動ドアがにゅいーんと開いた。おいでませされてて怖いな。
「まぁでもいかないとさー。行くと残機も減るんだろうけど」
【逃げてもよいのであるな】
「逃げても残機が減りそうだし」
『人にはできることできないことがあるのですわ』
「いや女紙様今更それ言う? まぁアキホちゃんを放置できないしさ。怖いけど行くよ」
アキホちゃんはまだ俺にしがみついてるし何なら震えてるし。出たとこ勝負でいえーいだ。