大切なリズム
リズム大事です
「そ・う・だ・あ・うれ・しい・ん・だ・い・い・きる・よ・ろ・こ・び」
1秒に2回のリズムで心臓マッサージをする。体が小さくて胸全体を押すことになっちゃうけど、躊躇はない。ほんの少しの躊躇で人は死ぬんだ。この世界にきて自分自身で思い知ったしな。
顔がアンパンのヒーローのマーチは心臓マッサージに最適なリズムなんだよ。生きるためのマーチ。すっげーお似合いじゃん。
「た・と・え・え・むね・の・きず・が・い・い・たん・で・も」
女紙様もプリティちゃんも、何をしているのか理解できないのか、じっと俺を見てる。
「ん?」
心臓マッサージを曲の2番まで続けたあたりでこの子の顔がピクリと動き、がほっと口から水をはいた。
「よし、呼吸が復活した。はいた水で窒息しないようにっと」
この子の顔を横に向けて、指を口に突っ込んで口の中に残っているものをかき出す。
「……割と覚えてるし、体が動くもんだな」
結構いい加減に講習を受けてた記憶があるんだけど、火事場のくそ力ってやつかな。
「げほっうげほっ」
えづいてるのか咽ているのかわからないけど、この子の背中をさする。
「ぶじかー、生きてるかー」
せき込んでいるだけで返事はない。意識はまだ戻ってないっぽな。
「まぁでも息を吹き返したからっと、どこか草むら以外に寝かせられるところは」
仰向けはまずいから、荷物みたいに脇に抱く。振り向けばそこに女紙様。
『……ふふ、さすが社畜の鑑なのですわ』
女紙様ありがとうございます。でも、お褒めの言葉よりもこの子を寝かせる場所を作っていただきたく。
どんつくどんと続きます