エンカウント、ドワーフ
エンカしました
「ウォォォォォ!」
バシャバシャ水を蹴りながら走る。運動不足な社畜にはキツイ。掛け声だけは立派で、実際は遅い。
【……陸を走れば速いのであるな】
川岸の草むらをトコトコ小走りのプリティちゃんからお声が。
「それ、早くいって!」
川底含め川岸は草地になっていて、ここが急に増水して没したんだとわかる。なんで水が増えたんだよ。
陸に上がってダッシュ。その手のある所まですぐについた。再び川に入って、水の中の体を確認する。うつ伏せになって顔は見えない。スカートっぽい服を着ているが背中が剥きだした。黒い髪が水面に広がって、ちょっとホラーでコワイ。
小さい体で子供のように見えるけど、子供にしては腕は太いように見える。
けどそんなのは気にしてられない。
「生きててくれよ!」
体に腕を回して自分の腹に押し当てて一気に引き上げる。ここは気合いだ。数徹の徹夜を潜り抜けた社畜をなめないでほしい。
川から引き揚げて背から抱える形で岸まで引きずる。どっせーいと草むらにあおむけに寝かせた。
『あら、女の子ですわ』
【女の娘ではないのは残念であるな】
『ドワーフ、のようですわ』
【ふむ、木の上の巣に住むドワーフが流されるのは、珍しいのであるな】
何やら話をしているふたり?は放置だ。
確かに胸がやや膨らんでいる、ようにも見えるが服のせいかもしれない。生成っていうのかちょっとごわごわしている素材の服だ。女の子らしいが、小さい体に太い腕。ちょっとアンバランスな印象だ。
背中に虫の羽らしきものが見えたが見なかったことにする。オレハナニモミテイナイ。
「……呼吸をしてねえ。心臓マッサージだ」
会社の救急措置の講習は問答無用で毎年受けさせられてんだ。社畜をなめるな!
どどどと続きます