謎の川と水没者
ちっさい河です
「水、水ナンデェェ!!」
俺の膝上まで水につかっていた。いすゞの村に向かった時はこんな水はなかったはずだ。そらま、戦車に乗ってたから気が付かなかったかもしれないけどさ。
なんでだ、と顔を前に向ければ、そこには向こう岸が見えないほどの幅の川が横たわっていた。
波もどんぶらこと気持ちよさそうにうねっている。結構な流れで、水量も多そうだ。
「ナンデヤ!」
突っ込むときだけ関西弁を使うのは日本人の特性だ、ゆるせ。
『確かここには、小川があったのですわ』
「小川? 大河の間違いでしょ?」
『チッサイカワヤデー川があったはずですわ』
「ちょっとそこの女紙様? あーたこの世界は知らないはずよね? ってかその名前ェェ!」
『え、あ、間違えましたわ、オッキイカワヤデー川だったのですわ!』
「どっちにしろ知ってるんじゃん! そして名前ェ!」
こんにゃろと女紙様を捕まえようとしたらひらりと空に逃げてしまった。神様のくせに逃げるはナニゴトか。かえってこーい。
『あ。あそこに誰かがいるのですわ』
女紙様が川?沿いにひらひらと飛んで行ってしまう。でも人がいるといわれ、そっちに視線を動かせば。
「子供?」
小さい手が川岸近くで水面から突き出ていた。微動だにしていない。
「……ヤベェ、マジだ」
ダッシュで川の中を駆けた。
どんぶらことつづきます