いすゞの里にて
これにて2章おわり
世界樹が復活したダンプさんの里には、三日ほど滞在した。
俺という異物が世界樹を元に戻したことを里の民に説明したところ、ダンプさんへの厳しい目がだいぶ緩んで、やはりというか宴が始まってしまったからではある。
そして宴には酒がつきもので、俺はこの世界の酒を飲まされた。
里で栽培した麦のどぶろくで、白濁した濁り酒だ。アルコール度数は高くはないけど、ヨーグルトみたいな香りと味わいで、なんとも摩訶不思議な味わいだった。
「これが合うんだ」
ダンプさんに差し出された野菜の酢漬け(獰猛なキャベツだったらしい)がまた絶妙にあうんだこれが。酸味に酸味を重ねるというか、混ぜるな危険というか、なんだか癖になる組み合わせだった。
「実は、これを作ったのはミキサーでな」
と言われダンプさんの横でおとなしくしているミキサーちゃんを見た。ピンク色の髪を後ろでひとまとめにしただけの純朴な美人さんだ。体形含めで10歳とは思えないんだがこの世界と俺がいた世界は違う。その常識で判断しちゃダメなんだろうな。
「酢漬けは里の女の必須スキル。これを作れるようになって一人前と認められる」
と言いつつミキサーちゃんがお代わりを押し付けてくる。自信作なんだろう。もっしゃもしゃと食う。
「味は里によって違う。いすゞの里は酸味が強いと言われている。この酒に非常に合う。もっと食べる」
今度は壺ごと押し付けられた。壺はおなかに抱えられる大きさでその中に酢漬けがみっちり詰め込まれている。さすがにこんなには食えない。テイクアウト可能だろうか?
ミキサーちゃんはじっと俺を見て、せかしてくる。ぐぅ、ツライ。
「伊能殿すまないな。ミキサーは小さい時から感情を表すのが苦手でな。それには父を救ってくれたお礼が入ってるんだ。受け取ってやってくれ」
困惑している俺に、ダンプさんが助け舟を出してきた。
そんな意味があるなら受け取る選択肢しかない。
手元に本家どぶろく(違法)をだし、いすゞの里のどぶろくと飲み比べだ。
「ほう、その酒は……かなり素性がよさそうですね」
「むむむ、拙者のとは香りが違いますな。原料は、なんですかな?」
「とても興味深い……少しいただいてもよろしくて?」
どう見ても巨躯でヒャッハーな里の方々が俺に近寄ってくる。酔ってるからか顔も赤いし千鳥足だしなんか知らないけどナイフを持ってるし、でも知的で丁寧な言葉で話しかけてくる。
高コミュなあいさつと殺伐とした格好で俺の脳みそが焼ききれそうだ。
「まぁいいや、出しまくるからあるだけ飲んでくれ」
なるようになれ。
明日も陽はのぼる、昨日とは違う朝日がな。
――ピコーン
お役目②をクリアしました。ボーナスとして残機が100追加されます
頭にはまたそんな声が響いた。
現在の残機 19+100
ぬめぬめ続き