〆はカルボナーラ
しめです
酒盛りも宴たけなわで、いつの間にか夜になっていた。
ダンプさんは窓ガラス前に立って、ワインボトルを手に持って、外で舞い踊る光の集団を眺めていた。ときおり腕で目をこすりながらワインをラッパ飲みしている。ユニックさんのことでも思い出しているのかもしれない。
ミキサーちゃんは、泣きつかれたのかテーブルに突っ伏して寝てしまっていた。酒を飲ませてよい年齢か聞くの忘れてた。体も立派だし、大丈夫な御歳でしょ。ヨシッ!
『ミキサーちゃんは、10歳なのでお酒も大丈夫ですわ』
「ブホォォォ」
『エルフは成長が早いのですわ。10歳ともなればお子様がいらっしゃる女性もいるのですわ』
「マジかよ……」
【ふははは。ある意味合法ロリであるな】
「プリティちゃん、なんでそんなこと知ってるの?」
この、合法ロリ男の娘め。いやこの場合は合法ショタというべきか?
「レディに年齢を聞くのは武家諸法度を踏みにじる行為に等しい。つまり獄門である。よって年齢を尋ねなかった俺は無罪」
隙も無い見事な論理展開だろう。
小腹もすいたので山盛り半熟卵カルボナーラを出す。見るからに濃厚なクリームで、半熟卵とベーコンの盆踊りが素晴らしい競演をしている。思わず口が緩むくらい、美味しそうなのである。
『大好物なのですわ!』
女紙様が山盛り半熟卵カルボナーラに覆いかぶさった。ずぞぞぞと下品な音とともにカルボナーラが消えた。
『伊能さま、お代わりがほしいのですわ』
紙をホワイトクリームまみれにした女紙さまがにっこり笑った、気がする。
女紙様を捕まえて、ウエットティッシュを取り出して、ぎゅむぎゅむ拭いてやる。
【食い意地のはった女神であるな】
プリティちゃんですら苦笑いだ。
「まぁしょうがない」
俺と同じかもっとひどいブラックな職場にいたわけだし。山盛りでは足りないだろうから富士山盛りくらいの半熟卵のせカルボナーラを出してやる。食いそびれた俺には毒でしかない。
『ひゃっはーですわ!』
とカルボナーラに飛んで行った女紙様を横目に、ふと外を見た。遠くの、本当に遠くのほうで、ぼんやり青く光る塔が見えた。
ダンプさんにはあれが希望に見えたんだろうか。
「そう言われれば、そう見えなくもない、かな」
元の世界で見たスカイツリーの何倍も綺麗に見えたのは、ヤドリギシステムを知ったからではないと、思いたい。
しめ鯖と続きます