できること=酒盛り
この作品は酒とつまみで出来ております
ダンプさんとミキサーちゃんはガラス窓に走っていった。ダンプさんの巨体が走ってもびくともしない床は、大丈夫そうだ。
ふたりは周囲360°ぐるりのガラス窓に張り付いていた。
「なにも、起こらない?」
ダンプさんから困惑の声が耳に届く。
「父さん、父さんがこっちを見てる!」
ミキサーちゃんが泣きそうな声で叫んだ。
こっちを見た?
意識的に動いたってこと?
俺もミキサーちゃんがいる窓に走った。彼女が指し示す先に、確かにユニックさんはいた。
うつろではなく、しっかしと、俺を見ていた
力強い瞳で、俺に訴えていた。
「あっちには鍛冶屋のアルミさんが。キャブ姉さんもいる! こっちを見てる」
ミキサーちゃんが叫び続けている。ダンプさんに視線をやれば、彼はゆっくりと首を横に振った。
「ふたりとも、半年前ほどに死んでいた」
ダンプさんはまた外を見た。
「……死んだことを認識できなかった者たちが集まっている……」
ダンプさんは、黙ってしまった。その大きな背が、やたら小さく見えた。
「……んじゃ、やれることをやりますかね」
俺のやれることなんて、多くない。というかできないことだらけだ。
【ふははは、なかなか良い顔なのであるな】
俺が窓から離れると、プリティちゃんが揶揄ってくる。まあまぁ期待してる感じもするけど。
ちょうどエレベータの扉前まで戻って、俺のスキルででかいテーブルを出す。
缶ビールと日本酒とテキーラとワインと、あとコーラとオレンジジュース。
つまみは、刺身と寿司とあとからあげな。足りなければ追加する。
ドンドンドンとテーブルに並べてけば、みな胡乱な目で見てくる。
わかってねーなー。弔いってのは、ひとしきり悲しんだ後は酒を飲むもんだ。亡き人を惜しんで。懐かしんで。さらばと送り出すんだよ。
「さぁって。酒盛りの時間だ!」
ごくごくと続きます