まずは明かりをつけよう
明かりをつけましょぼんぼりにー
エレベーターは非常に不安を掻き立てる音で上がり始めた。ゴキャキャキャとか、普通なら聞かない音を奏でてる感じで、俺の残機が減らないか心配になるくらいには、不安定な音だった。
「……落ちないよね?」
【落ちたら助けてやるのであるな】
『ではわたくしもご一緒するのですわ』
【駄女神は浮かんでるので考慮外であるな】
『困ったドラゴンなのですわ』
緊張感のかけらもない会話がなされている。普通のエルフたる二人に視線をやれば、武器を構えて目を周囲に走らせていた。
魔獣はいないけどそれよりももっとやべー状況ではあるのだがそんなことは言えない。
「なにかあったら女紙様にぶら下がるよ」
『ま、まかせるのですわ! 女神が女神たる所以を知らしめてやるのですわ!』
やった、やったのですわ、伊能様の信頼を勝ち取ったのですわ!、と文字は続いている。
俺、不信だったし、態度に出てたろうなぁ。
なんて考えていたら「ぴんぽーん」とベルが鳴り扉が開いた。
「……まっくらだ」
おそらくは展望デッキなんだろう空間は、闇だった。エレベーターの明かりが届く範囲のみ視認できて、それ以外は漆黒ともいえる空間だった。
閉ざされている。
何がとは言えないけど、直感がそう告げてきた。
「真っ暗なんて縁起が悪い。まずは明かりだ」
俺が一歩を踏み出すと、一瞬でフロアに明かりが灯った。
フロアは板張りで、ちょっと強度的に心配になる仕様だった。壁面はやっぱりガラス張りで、外が見えるようになっている。外からの光が入っていなかったのは謎だ。
【見えているものが真実とは限らないのであるな】
プリティちゃんが、さっきの言葉を繰り返す。
「……板張りの床もしゃれてると思えば、怖くはネーナ」
すみません、強がってみました。理解できないものは怖いです。
滑っと続きます