いすゞの里の世界樹(真)
真、です
ユニックさんは、俺が目の前にいるのに、まったく気が付いていない感じだった。視線は、どうやら森に固定されているのか、焦点はあっていないように見える。ダンプさんから聞いてはいたけど、目の前で見ると、ショックがでかい。
肉親だったふたりにすれば耐え難いものだったろうな。痴呆に近いかもしれないが、これはなおタチが悪い。ユニックさんは生きてないんだから。
「もうちょっと、待っててくれな」
ユニックさんの腰をポンと叩いて、そうしてから俺は皆の元に戻った。
残機は20まで減っていた。
まだ慌てる機数じゃない。
【無茶をするのであるな】
「その割には助けに来なかったじゃなん」
【ふははは、それは、我の役割ではないのであるな】
「んじゃ誰の?」
俺がそう答えると、プリティちゃんは何とも言えない笑顔を見せてきた。
んー、プリティちゃんもなにか隠してるっぽいな。俺がスカイツリーを出してからすぐにきたし、いつの間にか和んでるし、プリティちゃんがいなかったらいすゞの里にはこれなかったろうし。
まぁ、細かいことは後回しだ。
「よし、いこう」
ダンプさんの腰をポンとたたいた。
「……もう少しでつく。ミキサー、遅れるなよ」
「叔父貴うっさい」
ミキサーちゃんのくぐもった声を確認してから、ダンプさんはまた歩き始めた。
それから数分後、世界樹とやらの根元についた。
銀色の、四つ足の、トラス型タワー。地面部には、ノブ付きの鉄扉。タワーの足の一つに記念プレートが埋め込まれている。
「……名古屋テレビ塔か」
ま、何でもいいんだけどさ。
「エレベーターじゃないんだな」
スカイツリーみたいに地上部にエレベーターの扉がない。あけてくれと言わんばかりの、鉄扉はあるけど。
「あの扉は、何をしても開かない」
ダンプさんは首を振る。
「俺なら開くんだろうな」
ドアノブをぎゅっと握る。ドアの内部で、ガチャリと音がした。
ぬるっと続きます