見覚えのあるその顔
みおぼえ、あります
「ダンプさんの、お兄さん?」
茂みの向こうで、森の奥を眺めている風の、厳ついお兄さんがいた。何をするでもなく、こちらに気が付いた風でもなく、ただ森の奥を見つめているようだった。
「兄者は、世界樹に向かうところで魔獣に襲われ、命をとした」
ダンプさんは歯を食いしばっている。目は、お兄さんを見つめたままだ。
「ぐ……」
背後から聞こえた嗚咽に振りかえれば、フルフェイスのヘルメットを脱いでいた姪っ子ちゃんが俯いて震えていた。
お兄さんにまた目を向ける。横顔だけど、表情が抜け落ちているのは分かった。
生きているかと問われれば、明確にNoだ。
あれは、連勤で疲れ切っていた、俺と同じだ。何も考えられず、毎日毎日ただ同じ動作を繰り返していた、俺だ。
魂なんてないだろう。俺にもなかっただろうな。生ける屍だ。
なんかもう、見ていられない。
俺は、茂みに歩いて行った。
『ちょ、それは危険すぎるのですわ』
【そっちに行ってはいかんのであるな】
女紙様とプリティちゃんの声を振り切って、お兄さんめがけて進んだ。
一歩進むごとに視界の端にある残機が減っていく。
「残機制度万歳だ」
歯ぎしりしながら、ぼやいた。恐れはない。残機がある限り死なないしな。
だからこそ、やらなきゃいけねーんだ。
お兄さんの前にたった。残機は50まで減っていた。生きてるんだ、何の問題もない。
「ダンプさん、お兄さんの名前は」
「……ユニックだ」
「ユニックさん、どうすればいいかわからないけどとりあえず俺に任せてくれ」
ユニックさんは救わなければならない。目の前にいるのは、世界が違うけど、まさに俺だからだ。
滑っと続きます