システム「ヤドリギ」
システムなのです
わかると言われてもねー。
「どうも俺には理解できないんだけど。ヤドリギってなによ?」
『魂のヤドリギが機能しないということは輪廻が回らず新しい命が生まれないことを示すのですわ』
「いやそのヤドリギをしらねーのよ、アテクシ。そりゃさ、言葉としては聞いたことくらいはあるよ? 一応、大人だったし。でもさ、この世界のヤドリギって、俺が思ってる、いわゆる植物ってことじゃないんでしょよ」
俺は植物図鑑を取り出して、該当項目を読んでるんだけどさ。寄生してるって植物なんだよね。冬鳥のちょうどいい餌になってるとか、役には立ってるみたいだけど。
『伊能さまの世界では植物でしかないのですわ。でもここでは、死んだ者の魂を新しい生物に移し替える役割があるのですわ』
「……移し替える?」
『そうですわ。あらゆる生物は、魔獣でさえも生まれ変わるのですわ。もちろん伊能さまも、ですわ』
「ちょっとお待ちなさいなそこの女神様。俺もその中に入ってるの?」
あら、そこは秘密なのでしたわ、などと紙には続いている。
この女紙様はどれだけ何を隠しているのか。酒をちらつかせて尋問しようかな、ホントに。
「里で死んだ者は里に還ってくる。俺は父からそう聞いていた」
先頭を歩くダンプさんがいう。
「兄は死んだが、また里に帰ってくるはずだった。里の民も、死んだ者は帰ってくるはずだった。世界樹に異常がなければ」
声には、怒りが込められているようにも感じた。
さっきの姪っ子ちゃんが言っていた滅びってのは、これのことか?
つまりだ、死んだ人が死を受け入れなければ生まれ変わることもなく、その結果生きている人が減る、と。
里で死んだら里の人間に生まれかわる、としたら……
「人口が減る一方ってことか。過疎の村を想像しちゃうな」
【ほほぅ、エルフではそう伝わっておるのであるな】
「……プリティ殿、違うのか?」
ダンプさんが振り返った。その顔は、驚きと不安がごっちゃになった、ちょっと泣きそうにも見えるものだった。
ごろっと続きます