いすゞの里の世界樹
大きいことは良いこと
ダンプさんが向かったのは畑の先に広がる森だった。どうやらあの畑は里の外周部らしくって、その森の空に視線を向ければ、なにやら銀色の鉄塔が目に入った。四つ足でどっしりとした鉄塔だ。
スカイツリーはあやうっかしいほど細いんだよね。あれでよく大きな地震にも耐えられるよ。
「もしかして世界樹って、あれのこと?」
『世界樹の特徴である銀色の幹ですわ』
「……あれはどう見ても鉄塔だよなぁ……」
しかも、展望台を備えてある、観光もできるタイプの鉄塔だ。
「東京タワーよりは低いな、どこのだろう」
鉄塔は、そもそもが電波塔だから各地にあって、やっぱり観光名所にはなってる。俺も、札幌に日帰り出張の時に、強行していったことはある。高いところから眺めるときつい仕事のことを忘れられて、なんだかのんびりできてたなぁ。
アレが日本の鉄塔かどうかはわからないけどさ。
『世界樹の根元に行けばわかるのですわ』
また女紙様がらみなのですかね。まぁお役目ってのの一つなんだろうなぁ。
ともかく、いまはダンプさんのお兄さんの問題を片付けないと。うまくいったら、里の人の目も変わるんかもしれないし。
てくてくと畑のあぜ道を進んでいく。麦の穂が風に揺れ大きな波を作っていて、非常にのどかだ。
【エルフは、ちまちまと、手間をかけるのがすきであるな】
「魔獣の肉はおいしいが、手ごわい。常に計算できる食糧がなければ里は維持できない」
【我にはできぬ生き方ではあるな】
「大昔の祖先は魔獣の狩りで生きていたと聞くが、当時はエルフの数も多く、体躯も大きかったとは聞く。いまの小さくなってしまったエルフの体では、狩りで生きていくのはきつい」
【ふははは、確かに小さくはなったがそのぶん手先がずいぶん器用になってであるな】
「体に合わせた生き方になっただけだ」
……あの、ダンプさんは、あれでも小さくなってしまったのですか?
大昔のエルフってのは、どれだけ巨人だったのよ。
ぬめっと続きます