ちょっとずる
ずるします
「んーー、乗り心地はいまいちだけど、歩くよりも楽ちんだ。しかも速い」
座るだけでぎゅうぎゅうなシートと座っている俺の前に広がるモニターと計器類。地面の凸凹を拾いながらも滑らかに滑っていくクローラー。うなりを上げるガスタービンの音。
どこぞの国の主力戦車ってやつだ。ことあるごとにマイナーチェンジ案をぶち上げるも開発にとん挫している、名戦車だ。
「なんとなくで運転できるのは、これもチートってやつ?」
適当にハンドルを握ってるだけでガタゴト走るんだ。さっきは主砲も撃ってみた。肩こり腰痛まで一気にぶっ飛ぶ勢いの衝撃で、残機が減ったまである。
『わたくしが、こっそり陰で操っているのですわ』
無言だが、女紙様にはそう書かれてしまった。気を利かしてくれたんだろうけど、そこはこう、「さすがですわ!」とか言ってほしかったな。戦車は男の子のロマンよ? でもありがとう!
はいそこの赤いドラゴンさん、こっち見ない。男の子、だからね? 男の娘じゃないからね?
そりゃ―どっかのアニメでかわいい女の子が戦車に乗ってヒャッハーしてたけど?
でも女の子だからさ!!
「この鉄の荷車は、何というか、理不尽の塊だな」
ダンプさんは戦車の主砲にまたがって警戒をしているようだ。まぁ、プリティちゃんが作ってるガタガタ道をぬるぬる踏破するなんて、認めたくはないだろうけど。しかも鉄の塊が、ね。
「んーでも、俺が歩くよりも格段に速くつきそうだし。些細なことには目を背けておいてプリーズ」
滑っと続きます