ダンプさんの苦悩
ひゃっはーだって苦悩するんです
「……そこの紙の言うとおりだ。現在里では死者が眠ることができないでいる」
ダンプさんがテーブルに両肘をついて、項垂れてしまった。
「亡くなられた方は、そもそも寝るとか、ないのでは?」
だって死んでしまっているってのは、横になって動かないと同義でしょ?
「里では、死んだ者が死を受け入れられず、普段と同じ生活をしている」
「……は?」
「死者の家族は悲しみを引きずったまま、普段通り動いている家族を見ているのだ」
ん?
普段通り動いているならそれは生きているのでは?
「死を認められぬ死者は周りを認識できず、ものを言うことはなく、ただかつての行動を繰り返しているのだ。そこに家族がいても、その虚ろな瞳には映っておらぬのだ」
ダンプさんの声は、今にも泣きそうなほど震えていた。
『この世界では、死者は世界樹経由で生まれ変わるのですわ。残されたものは、また出会うことを願って、死者を送るのですわ』
【そう信じられておるのであるな。我に死はないからわからんのではあるがな】
『悲しみを克服するために、心の儀式なのですわ。飲んだくれドラゴンには理解できない崇高な精神なのですわ』
【死という概念すらない神が、表面上の理解を示しているだけなのであるな】
人外たちが何かを言っている。
ただ、文化というか風習というか、もしかしたら宗教的な考えかもしれないけど、俺の常識とはかけ離れすぎてて、理解が追いつかない。
そもそも死者が動いていることが理解不可能だ。
「……兄が、狩りの最中に獲物に反撃され死んだのだが、そのせいで眠りにつけず、森をさまよっている。兄を眠らせてやってほしい」
ダンプさんは、「頼む」とテーブルに額を擦りつけた。
だらっと続きます