ダンプさんの事情
スペアリブはおいしい
天望回路の外は漆黒の闇。すでに夜の帳は下りてしまい、天望回廊の明かりだけが目立っているはず。このあたりが世界樹に間違われる要因なのかもしれない。
そうしているうちにダンプさんを交えての酒盛りが始まった。大柄すぎるダンプさんがこじんまりとテーブルについている姿は、とても良い酒のつまみになっている。
酒も進むというやつだ。
「で、ダンプさんはなぜここに来たんです?」
スペアリブに覆いかぶさり貪っている女紙様を視界に入れつつ、まずはここに来た理由を確認することにした。
もちろん、お酌も忘れない。社畜に染み付いた習性だ。
「この前の月の欠けからあたりから、里の世界樹の様子がおかしくなった。調べようと世界樹の天辺に上ったときに、この世界樹が見えた」
俺を見るダンプさんの目は真剣だ。でもちょっと待ってほしい。
「ってことはですね、ダンプさんの里の世界樹って、あの、ここから見えるはずです、よね?」
「あぁ、見えるはずだが」
とダンプさんが天望回廊のガラス面を見た。
「あぁ、真っ暗ですしね」
「……本来であれば、里の世界樹が輝いていて、ここから確認できるはずなのだ」
「うーん、ここにきてから、ことあるごとに景色を眺めているんですけど、それは見たことがないです」
「里の世界樹が光らなくなったのだ」
ダンプさんの表情が、あからさまに暗くなった。
光らなくなったら、なんなのだろう?
『予想はつくのですわ』
スペアリブのたれがべったりくっついた紙が言葉を発していた。もう少しきれいに食事をしようよ女紙様。
ウェットテッィシュを出して、黙ってそれを拭き取った。
誰だよこの女神さまのしつけをしたのは。お説教だぞ?
『世界樹は魂のヤドリギですわ。それなくして死者を弔うことができないのですわ』
拭いたばかりなのにまたスペアリブのたれで汚れている女神様がそういった。
だらーっと続きます