地の果てその世界②
闇が深い
膝の感覚が戻ってきたので立ち上がる。邪魔な背広は脱いだ。おっとスラックスも邪魔だ。靴もポイする。俺と女神様しかいない世界に遠慮はいらない。床のカーペットもきれいだし。
「ジャージ上下サイズはL、履きやすそうなスニーカー、カモーン」
思い浮かべて口に出せば、ジャージの上下と白いスニーカーがポトリと床に落ちた。すぐに着替える。
『ここに嫁入り前のレディーがいるのですわ。少しくらい考慮してほしいですわ?』
「レディーは暴飲しないとおもいマース」
『あれは無礼講というマナーですわ』
「無礼講で無礼講をしちゃいけないのが社会人のマナーですが?」
『出世なんてクソくらえですわ!』
もう二度と戻らないのですわ、と紙には続いていた。
どうも女神様の闇が深い。ブラックな待遇を千年も続けてれば、捻くれもするか。
というか「戻らない」とか、謎の言葉が多いのがとても気になる。嫌な予感しかしない。
『あ、でっかいドラゴンですわ。こっちに向かってきますわ』
「はい?」
『かっこいいのですわ!』
ガラスの向こうの空に見えた点のような物体がずんずん大きくなって、迫ってきていた。
あれか、鳥に見えたのって、もしかして、コレ?
水色の空によく目立つ、真っ赤で毒々しい、幼少のころ遊んだゲームでよく見た姿だ。
「まじかぁぁ」
だらだら続きます