始まりは唐突
だらだら進みます
目が覚めたら木しか見えなかった。
背中から香る土と草の匂い。むくっと起き上がって周りを見ても、木木木木木。
360度パノラマで木が見えた。
「どこよココ」
昨晩は、終電前に帰宅できた。そのままベットに倒れて。
「ココにいたる、と。わかるわけねーじゃん」
いま地面に転がっていた場所は、木々の中でも、たまたま開けた場所のようで、鬱蒼とした周囲の中で、暖かな日差しに照らされている。おにごっこができるくらいの、幼稚園の園庭くらいかな。
俺は、その中で暖められたホカホカのスーツに包まれた、草臥れたリーマンだ。暖かくて二度寝しそうだけど二度と目覚めない気がするから頑張って目を覚ます。
「……違和感がいい仕事してるよな。サイコーのデキでしょコレ」
むしろ違和感しかない。
鬱陶しいネクタイを外してスーツのポケットに突っ込んだ。代わりがないから汚すと買いに行かないといけないし。
「今北産業的な説明が欲しい。かなり切実に」
立ち上がってスーツを叩いて土を払う。木々の向こうからはかしましい鳥の鳴き声と物騒な雄叫びが騒がしい。正直、身の危険しか感じない。
「こんな時はスマホで調べ……」
いつもならポケットで存在感を主張しているそのスマホが、なかった。