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本だけ転移しました

作者: 無二エル

ゴブゴブ(なあ、これなんだ?)

ゴブゴブ(なんか落ちてるな)


森の中

狩りに出ていたゴブリン達が何かを見つけ、騒いでいる


ゴブゴブ(お前らどうした?早く帰って食事の準備をするぞ)

ゴブゴブ(いや、お前もちょっとこっちに来て見てくれよ)

ゴブゴブ(なんだよ一体、ん?・・・これはたしか・・・人間が持ってる本と言うものじゃないか?)


一冊の薄い本

土の上に無造作に置かれた色付きの冊子

その場に置いてあるにはそぐわない異質さに、ゴブリンは無視できない


ゴブゴブ(人間の持ち物なのか?でもこの表に描かれているのはエルフ様じゃないか?)

ゴブゴブ(エルフ様だな、美しい女のエルフ様だ)

ゴブゴブ(じゃあエルフ様の持ち物なのか?)


エルフ様

我らゴブリン等が足元にも及ばない高貴な存在

全てにおいての能力に秀でた手の届かない存在


ゴ、ゴブゴブ(た、大変だ、エルフ様の落とし物なら持ち主に返してあげないと)

ゴ、ゴブゴブ(で、でも、エルフ様と言っても、どのお方の物だか・・・)

ゴ、ゴブゴブ(そ、それに、我々のような下賎の者がエルフ様の持ち物を触っていいのか?)

ゴブー(うーん)


悩む3匹のゴブリン

エルフ様は我らのような者達にでも困った時には手を差し伸べてくれる優しい方々だ

でも種族が違うので常識の違いがある

我らは少しばかり粗雑で無神経なせいか、良かれと思って行動した事でも怒らせてしまう時がある


ゴブゴブ(触らない方が良いんじゃないか?)

ゴブゴブ(しかし・・・このまま雨でも降ればこの辺はぐちゃぐちゃになるぞ?)

ゴブゴブ(汚れちゃうだろうな、それにあまり丈夫そうには見えない、多分雨で脆くなると思う)

ゴブー(うーん)


困った困った

怒られるのも嫌だし、だからと言って放っておくわけにも・・・


ゴブゴブ(やっぱり無視は出来ない、持ち主さえわかれば・・・)

ゴブゴブ(そうだな、このまま放ってはおけない)

ゴブゴブ(どこかに名前でも書いてあるんじゃないか?)

ゴブゴブ(お前、字読めるの?)

ゴブゴブ(読めない)

ゴブゴブ(俺も読めない)

ゴブー(うーん)


どうしよどうしよ

我らは知能が低くてこういう時どうしていいのか・・・

ああ、せめて人間くらいの知能があれば


ゴブゴブ(・・・取り合えず、中を見てみるか)

ゴブゴブ(中?・・・ああこれ、紙が重ねてあるのか)

ゴブゴブ(や、破くなよ?そーっと持て)


そーっと、そーっと

1匹のゴブリンが恐る恐る持ち上げる

良かった、今のところそんなに汚れているようには見えない


ゴブゴブ(横にも字が書いてあるぞ、これ名前じゃないか?)

ゴブゴブ(どうかなー、どのみち読めないからなー、裏はどうだ?)

ゴブゴブ(不規則な太さの線が縦に並んでる・・・その下に文字が)

ゴブゴブ(あ!それは数字だよ、数を表す文字だ)

ゴブゴブ(おお、良く知ってるな!)

ゴブゴブ(形が簡単だからな、これは1だぞ)

ゴブゴブ(おお、これは?)

ゴブ・・・(・・・)

ゴブゴブ(なんだ、1しか分からんのか)


バーコードの下の数字を見つめ、頭を悩ませる

ここにも持ち主のヒントは無かった


ゴブゴブ(仕方ない、開いてみるか)

ゴブゴブ(気を付けろよ)

ゴブゴブ(随分薄い紙だな、俺が見たことあるのはもっと分厚くて歪んでたが・・・)


ピラッ


ゴブゴブ(エルフ様が出てきた)

ゴブゴブ(これ、絵が描いてある本なのか)

ゴブゴブ(文字も書いてあるけど、やっぱ読めないな)


ピラッ


ゴブゴブ?(な、なんか、エルフ様が襲われてるぞ)

ゴブゴブ?(え?エルフ様を脅かせる存在なんているわけが・・・)

ゴブゴブ!?(こ、これ!我々じゃないか!?目つき悪いけど我々の特徴に似てるような)

ゴブゴブ?(ええ?涎垂らしながら邪悪な顔をしてるけど、我々なのか?)


3匹のゴブリンがエルフに襲い掛かる

今んとこそんな内容の本


「何をしている?」

ゴブッ!?(え、エルフ様!?)

ゴブゴブ!?(な、なぜ、このような場所に!?)

ゴブゴブ?(あ、ひょっとしてこの本は、貴方の物なのですか?)

「たまたま通りかかっただけだが・・・本?」

ゴブゴブ(あ、貴方の物ではないのですね・・・)

「よく分らんが・・・どれ、見せてみろ」

ゴ、ゴブゴブ!?(え!?ちょ、ちょっと待ってくださいね!ちょ、ちょっとお前らこっちに来い!)

「?」


不思議な顔をしているエルフ

因みに女だ


ヒソゴブ(おい、まずくないか?こんな物)

ヒソゴブ(エルフ様が襲われてる本だもんな)

ヒソゴブ(それも、我々のような下賎の者が襲っている本だぞ?どんな誤解を受けるか・・・)

ヒソゴブ(でも、途中までしか見てないぞ?この後華麗にエルフ様が活躍するような本なんじゃないか?)

ヒソゴブ(ああなるほど、身の程知らずな我々を罰するような内容なのか)

ヒソゴブ(そうか、この本は物語なのか、我々が子供にするようなおとぎ話が描かれているという事か?)

ヒソゴブ(じゃあエルフ様がピンチっぽかった理由も解かるな)

ヒソゴブ(物語は起伏も大事だからな、振り幅が大きいほど話が面白くなる)

ヒソゴブ(実際に我々がエルフ様を脅かす事など不可能だが、物語の演出なんだな)

ヒソゴブ(じゃあこれ、エルフ様に渡しても大丈夫だな)

・・・ヒソゴブ(・・・なんか、やっぱり嫌な予感がするような気も)

・・・ヒソゴブ(・・・俺もだ、内容を最後まで確認しておいた方が良いような)


「おい、いつまで待たせる気だ?」


腕を組み、指をトントン

少し機嫌が悪くなってきている女エルフ


ゴブゴブッ(も、申し訳ありません)

ヒソゴブ(ど、どうしよう)

ヒソゴブ(な、なんとか誤魔化せないか?)

ヒソゴブ(無理だろ、我々のような者が頭の良いエルフ様の裏をかける訳が)

「遅い!」

ゴブッ!(も、もう無理だ、わ、渡すしかないよ)

ゴブゴブ(そ、そうだな、どうかエルフ様が大活躍する物語であってくれ)

ゴブゴブ(薄い本だけど内容満載の本であってくれ)


恐る恐る、ゴブリン達が薄い本をエルフに渡す

やれやれとそれを受け取る女エルフ


「・・・これ、私にそっくりだな」

ゴブ?(ええ?)

ゴ、ゴブ(そ、そうですかね)


まあいい、中を見てみるか


ピラッ


「・・・やっぱりそっくりだ、顔も姿形も」

ゴ、ゴブ(そ、そうなのかな)

「だってほら見てみろ、服装までそっくりだぞ」

ゴブゴブ(見えません、しゃがんでください)

「あ、ごめん」


立って見ていては背の低いゴブリン達には覗けない

一緒に見る事になっちゃったけどはたして良かったのか


ピラッ


「ん?お前たちが出て来たな」

ゴ、ゴブ(ぼ、僕らこんな邪悪っすかね)

ゴ、ゴブ(も、もうちょっと品があると思うんすけど)

「おや、お前達に襲われてるぞ、私が」

ゴブゴブ(もう貴方って事になってるんですね)

ゴブゴブ(物語に入り込むタイプの人なのかな)


さて、さっき見たのもここまでだ

ゴブリン達は緊張する

果たしてこの先どうなるのか

エルフの指がページをめくる


ピラッ


「!!!・・・わ、私が!・・・私がお前達に凌辱されてる!!」

ゴブ~!!(うそーーー!!)

ゴブ~!!(最悪だ―!!)

ゴブ~!!(それ僕らじゃ無いですー!!)

「お前達じゃないか!これはお前でこれはお前だろ?この私の口におかしな物を入れようとしているのがお前!」

ゴブ~!!(僕ら個体差無いっすよー!!)

ゴブ~!!(ゴブリン大体みんなそんな感じですー!!)


ピラッ


「!!!・・・そんな!・・・3匹が一斉に私の体を!!」

ゴブ~!!(ひえー!!)

ゴブ~!!(そんな先を争うようにしなくてもー!)

ゴブ~!!(順番にすればいいのにー!)

「よ、四つん這いにされて・・・い、一気に・・・」

ゴブ~!!(ああー!!もうこっからの逆転ないわー!!)

ゴブ~!!(表紙の人がこうなったら終わりだわー!!)


ピラッ


「!!!・・・なんか!出されてる!!体のありとあらゆる場所に!!!」

ゴブ~!!(なんでまだめくるのーー!!)

ゴブ~!!(ドロドロだーー!!)

ゴブ~!!(でもなぜか恍惚の表情だー!!)

「は?・・・私が『もっとして』と言い出した」

ゴブ~!!(そんなワケねー!!)

ゴブ~!!(書いた奴アホー!!)


本を閉じ、ゆっくりと立ち上がる女エルフ

全身から黒いオーラが出ている気がする


「・・・これは、お前達が作ったのか?」

ゴブ?(え?)

ゴブ?(え?)

ゴブ?(え?)

「私を想像し、物語の中とは言え自分達が私を辱める、そんな欲求を持っていたのか?」

ゴブ?(え?)

ゴブ?(え?)

ゴブ?(え?)


ち、ちが・・・

ど、どう説明すれば

わ、我々は、たまたま落ちてるのを見つけただけで

でも、すっかり自分の事だと思ってるし・・・


「もういい!死んでしまえ!」

ゴブゥ?(ええっ?)

ゴブゥ?(そ、そんな)

ゴブゥ?(ま、魔法を撃とうとしているぞ)


「滅せよ!!」ドーン

ゴブ~(ああー)

ゴブ~(そんな~)

ゴブ~(来月結婚するのに)



消滅

必要以上に強い魔法に、周囲一帯跡形もなく消滅した

近くにあったゴブリンの国も含めて


こうして、だれかが作った同人誌のせいでこの世界のゴブリンは絶滅した

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 重箱の隅をつつかれる前にノクタへ移したほうが良さそうな気がします
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