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52話「いつかその時まで」

 ザシャが討ち取られた一方、討伐軍もまたデニスたちの軍勢に対して敗走を始めていた。


 特にエメが集めた1000あまりの魔族軍正規兵たちは消耗した討伐軍にかなう相手ではなかった。


 唯一戦意を喪失していない新神教兵は最後まで戦うも、その数は少なく次々と討ちとられていくのだった。


「勝鬨をあげろ!」


 デニスは混成軍たちに勝利を確信させると、すぐに倒れたヨーゼの元へと駆け寄った。


「ヨーゼ!」


 周りにはエメ、カンタン、ゴロウが集まり応急処置をしているおかげかまだ息がある。それにヨーゼが持っている『ヒルドル』の盾が神器解放をしている様子が分かった。


「ヒルドルの盾は戦場にて戦死者をよみがえらせる力があるとされている、だが――」


 デニスが見る限りヒルドルの盾の稼働は完全ではない、せめて致命傷による死の歩みを緩やかにする程度で十分ではなかった。


「エメ、回復魔法は!?」


「いまやってるです。ですけど回復魔法は得意ではないですし、この重体だとよほどの魔法使いでなくては……」


 ヨーゼの死は近い。様々な努力にもかかわらず、この戦いの功労者は息を引き取ろうとしているのだ。


「誰か! 誰でもいい! 回復魔法を得意とする者はいないか!」


 デニスは周りに呼び掛けるも、返事はない。ここにいるのはほとんどが兵士であり、魔法使いではない。


 今いる魔法使いはエメくらいなもので、しかもそれ以上の逸材は今この場所に存在していなかった。


 それでもどうにか、ヨーゼの命をつなぎ留めなければならない。完治でなくとも良い。せめて時間を稼げば――。


 その時、デニスは脳内で閃くものがあった。


「カンタン、ゴロウ! ヨーゼをダンジョンに運ぶぞ!」


「移動は危ないですよ! 何か方法でもあるのですか!」


「ある! それはお前も分かってるはずだ」


 エメはダンジョンという言葉に気付くものがあり、ヨーゼを運びながら治療するのに専念を始めた。


 デニスたちが向かったのはダンジョンの最奥、モンスターの改造・分離・保管のできる施設だった。


「まさか、モンスターの施設でヨーゼ殿を治療するつもりでござるか!」


「そこまでできるとは思ってないよ。だが、保管の力なら延命手段になるかもしれない」


 デニスの言葉にカンタンもゴロウもはたと気づいた。


「理論的には、可能です。人族もまた魔素を持った生き物。ダンジョンのモンスターと大きな違いはないです。けど、モンスターほど保管の力が働くか分からないです……」


「それでも、今はこれに頼るしかない!」


 デニスたちは急いでヨーゼを楕円形の器に満たされた粘液質の液体の中へと沈め始める。


 そんな中、ヨーゼが僅かに目を開いたのだ。


「ザシャは……」


「大丈夫だ。奴はもう倒した。安心しろ。怪我が治れば国王の元へ問いただしに行くんだろ?」


「ああ、そうか。そうだな。国王様へ、私と、デニスと共に、助命の嘆願を――」


 ヨーゼは完全に意識が混濁してしまっている。デニスはしばしの別れを惜しみながらもヨーゼを装置の中に収めた。


「エメ! 装置の調子は!?」


「問題ないです。起動します!」


 エメが装置に付随している文字盤を操作すると、ヨーゼを入れた器が定位置にセットされた。


「これでしばらくは傷をそのままに、保管できるはずです」


「しばらくってどれくらいだ?」


「もって1か月だと思うです」


「そうか……」


 だとしても、ヨーゼの一命は取り留めた。それだけでも値千金の価値がある。


「待ってろ、ヨーゼ。時間内に高等な魔法使いを見つけて来るからな」


 デニスは器の中に浮かぶヨーゼを見つめ、必ず助けると決めるのであった。

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