44話「援軍の到来」
討伐軍4000、それはデニスや村人たちにかなりの動揺を与えた。
しかしその情報がもたらされても、誰一人として離脱をしようとする者はいなかった。
「皆、覚悟は決まっているようだな」
ヨーゼは義勇兵を見ながら、そう呟く。
ただこのままでは数の上でも練磨の上でも劣るこちらの負けは必至だ。何か打開策を立てなければならない。
「獣人族の援軍は?」
本来ならば援軍に頼りっぱなしというのは下の下の戦略だが、今は仕方ない。
「まだ情報は入っていません」
「そうか……」
それから数日後、北東の街や村々を追われてか、デニスの元に集う難民は多くなった。
そのため再度募集した義勇兵は合計で500人となり、規模はそこそこになった。
「これ以上の被害を止めるためにも、野戦は避けられないな」
デニスはゴロウとヨーゼ、カンタンで卓を囲み作戦を練っていた。
「戦術上有利な地形は――」
「敵はこちらよりも多い。ならば誘導は――」
「野戦をするにしてもある程度の防備は必要だな。なら――」
3人が具体的な話をしていると、そこに伝令が入ってきた。
「報告します! 獣人族の援軍がまもなく到着します!」
「おお! やっとか。その数は」
「アドリア様が率いる先方部隊500です」
500、それは敵の数に対してまだまだ足りないが頼もしい数だった。
「後続には更に1000の兵が続いているそうです」
そして最後の報告もまた、デニスたちにとって朗報だった。
「合計で2000ほどでござるな」
「敵の半数。厳しいが勝てない数ではないな」
ヨーゼとゴロウは少し肩の荷が下りたような余裕を感じているようであった。
「それで、エメの方から情報は?」
「そちらからの報告はまだありません。伝令を急がしてはいますが、報告のための人員もままならないためです。お許しください」
「……そうか。よしっ、下がってろ」
それから更に数日後、アドリア率いる500の軍勢がダンジョン前に到着した。
その獣人族の兵士は象やサイ、ゴリラなど全員大柄、しかも完全重武装の種族ばかりを集めていた。
まさに精鋭。そのガタイの大きさはトロールとも負けて劣らないほどであった。
「まずは近くの私兵たちを集めましたわ。少しはお力添えになればいいのですけど」
「十分すぎるよ。助かる。後続の兵士は?」
「まもなく到着しますわ。構成は軽歩兵と騎馬兵。軽歩兵と言っても小柄な種族と馬並みに速い種族でできていますわ」
「となると実質全員騎馬兵か。そちらの人員は足りていなかった。大いに戦力になってくれるはずだ」
デニスがアドリアとその兵士たちをねぎらっていると、更に吉報が入った。
「デニス様! エメ様と連絡が取れました」
「そうか! それで、どんな状況だ?」
デニスが伝令兵にの顔を覗いて、話を急かした。
「魔族の残党軍300! 他にも西の魔族族長と話をしているそうです」
「おお!」
話を聞いていた全員が続々と集まる援軍に感嘆の声を上げる。
これで数の上では敵の半数以上、戦い方を工夫すれば勝ち目も見えてくるものだ。
だが、次の報告は期待したものではなかった。
「報告です! 討伐軍先方1000が北東の平原に現れました!」
「来たか」
デニスたちは来る日がまもなくであるのを確信し、身を強張わせた。
「アドリアには作戦の詳細を確認してもらう。他は既定の場所で行動しろ!」
デニスの掛け声でその場の兵士たちは粛々と持ち場へと急いで行くのであった。




