第四章 古(いにしえ)の調べ
一
学校が終わり、柊矢の車を待っているとき、ふと見上げると森が出現していた。
柊矢の車が小夜の前に止まり、柊矢が車を降りてきて助手席側に回ってきた。
「柊矢さん、森が……」
小夜は森を指さした。
「行ってみるか?」
「はい」
相変わらず森は静かで、美しかった。風が吹いても葉の一枚すら動くことなく立っている樹々。
小夜は思わず見とれていた。
旋律が溶けて、普通の森に戻ったらどんな景色になるのかな。
きっとすごく素敵だろうな。
沙陽さんの、この森に帰りたいって気持ちがよく分かる。
ふと見ると、沙陽が屈んで何かしていた。
「あ」
小夜が思わず声を出すと、沙陽が振り返った。
沙陽が立ち上がった。
小夜はポケットの中のペンダントを握りしめた。
柊矢さんのお祖父様の形見を無くすわけにはいかない。
沙陽がこちらに近付いてこようとしたとき、
「おい!」
柊矢が小夜の前に庇うように立った。
「柊矢さん」
小夜は柊矢を見上げた。
別に小夜を選んだわけではないだろうが、それでも守ろうとしてくれたのが嬉しくて顔に出てしまった。
沙陽が何とも言えない顔をして二人を見ていた。
「こんなところで何をしてる」
「ちょっとしたアルバイトよ。スポンサーがこれを欲しがってるから」
沙陽は手にした小さな花を見せた。
この森に生えていたものだから旋律で凍り付いている。
「どうしてそんなものを……」
「この花に触れれば旋律が聴こえるからよ。この花のね」
「何のために?」
「山崎敏夫って言えば分かる?」
確かアイドルの曲などを作っている作曲家だ。
沙陽は二人に背を向けて歩み去ろうとした。
「ちょっと待て」
沙陽が足を止めた。
「こいつの家の火事の晩、歌ってたのお前だな。あの火事はお前の仕業か」
小夜が息を飲んだ。
「その子の家の火事はポイ捨て煙草の火のせいでしょ」
煙草のせいだと知っている。
火事の原因はニュースや新聞には出ていなかった。
無関係なら知っているはずがない。
やはり、あのムーシカは沙陽だったのだ。
あのときは沙陽が森から戻ってたと知らなかったから彼女の声とは思わなかったが、思い返してみればあれはこの女の歌声だ。
「タバコだけじゃなくて古新聞も置いたでしょ!」
柊矢は驚いて小夜を振り返った。
「なんのこと?」
沙陽がしらを切った。
「私が家を出たとき、古新聞の束なんかなかった!」
「あなたが外出した後に出したんじゃないの」
「古新聞は濡れたら引き取ってもらえなくなるから古紙回収の日の朝までは外に出さないもの。古紙回収の日はまだ先だったから外に出したりするわけない。燃えやすくなるように古新聞の束を置いたんでしょ!」
「私はタバコなんか吸わないし古新聞の束のことも知らないわ。私が歌ったら風が強くなった。そのせいで煙草の火が燃え上がったとしても、それは私のせいじゃない」
「そんな……」
柊矢は沙陽の方へ踏み出そうとした小夜の肩を掴んで引き留めた。
「お祖父ちゃんがあなたに何をしたの! お祖父ちゃんを返して!」
「行ったでしょ。原因は煙草のポイ捨てだって。でも、出掛けてたなんて運が良かったわね」
「あなたがムーシカを歌わなければあんな大火事にはならなかった! なんで……、なんで……」
小夜が涙が小夜の頬を伝って落ちた。
沙陽はそっぽを向いていた。
柊矢は小夜を抱きしめた。
「悪かった。俺の配慮が足りなかった。お前のいないところで聞くべきだった」
小夜は泣きながら首を振った。
柊矢さんのせいじゃない。
どうして?
どうして、沙陽さんはお祖父ちゃんを殺したの?
「お祖父ちゃん……」
腕の中で泣いている小夜を見下ろしながら、自分の迂闊さを悔いていた。
多分、狙われたのは小夜の祖父ではない。小夜だ。
でも、それは小夜には言えない。
「消えろ、沙陽。二度と俺達の前に姿を見せるな。これ以上こいつを傷つけることは俺が許さない」
それだけ言うと、小夜を落ち着かせようと抱きしめたまま背を撫でた。
沙陽は一瞬、柊矢と小夜を見た後、すぐに視線を逸らしてその場から去って行った。
小夜が落ち着くと、柊矢は彼女を連れて家に帰った。
「今夜はデリバリーにしよう。お前はしばらく部屋で休め」
柊矢の言葉に、小夜は大人しく部屋に入っていった。
願わくば、沙陽を憎まないよう、柊矢は祈った。
沙陽のためじゃない。
小夜に、憎しみという醜い感情を持って欲しくないからだ。
汚い感情に、小夜のきれいな歌声が穢されて欲しくない。
だから、沙陽を憎むな。
「え、それホントなの?」
楸矢が声を潜めて聞き返した。
今、小夜は風呂に入っているから普通に話しても聞こえないはずだが、念の為彼女の耳に入らないよう小声で話していた。
「坂本さんに聞いたが、確かに古紙回収の日の大分前だったし、濡れたら引き取ってもらえないから当日の朝まで外に出さないっていうのも本当だった。そうじゃなくても、古新聞の類は火事の原因になるから、外に置かないように町内会で周知徹底しているそうだ」
「じゃあ、わざわざ古新聞の束を置いてから火の付いたタバコを捨てたの? 沙陽ってそこまでやるの!?」
「沙陽自身が置いたわけじゃないだろうがな。沙陽は喉を痛めるタバコの煙を嫌ってるから」
多分、ペンダントを奪ったときと同じように誰かにやらせたのだろう。
「だが、歌ってたのは沙陽で間違いない。お前も気を付けろ」
「柊兄もでしょ。それにしても、当分小夜ちゃんの送り迎えはやめられないね」
あの火事は小夜を狙ったものだ。
多分、あの森やクレーイス・エコーに関する何かで小夜が邪魔だったのだろう。
だとしたら、またやるに違いない。
あいつらはどうして、そこまでしてあの森に拘るんだ?
小夜は風呂に浸かりながら、何度も顔を洗っていた。
散々泣いたので目が腫れぼったいのだ。
沙陽さんは「私は運が良かった」と言った。
柊矢さんは何も言わないけど、あれはお祖父ちゃんじゃなくて私を狙ったって言うこと?
だとしたら、私のせいでお祖父ちゃんは死んだの?
私のせいで……。
また涙が溢れてきて、慌てて顔を洗った。
お風呂から出たとき、目が赤くなっていたら泣いていたことを気付かれてしまう。
もう泣かないって決めたのに……。
泣いてばかりいたら柊矢さんも楸矢さんも迷惑するだろう。
そうだ、少し歌わせてもらおう。
そうすればきっと元気が出る。
きっとまた明日からやっていける。
小夜は風呂から上がった。
「お先に失礼しました」
「あ、小夜ちゃん、上がったんだ。じゃ、俺もお風呂入ろっと」
楸矢はそう言って立ち上がった。
楸矢が風呂に入ったので、小夜は音楽室に入った。
小夜が歌い始めると、追随するように斉唱や重唱、それに演奏が始まった。澄んだソプラノ、華やかなメゾソプラノ、重厚なアルト。それぞれが織りなす合唱を、歌いながら聴いていると、いつしか悩みや悲しみは薄れていった。
もう大丈夫。
きっと明日はまた笑顔になれる。
柊矢さんの言うとおり、誰かを恨んだり憎んだりしてる暇があったら、もっと勉強や家事を頑張ろう。
歌えばムーシコスのみんなが応えてくれるんだから。
私には柊矢さんも楸矢さんも清美もムーシコスも付いてる。
だから大丈夫。
二
柊矢も楸矢も、小夜のムーシカを聴いて大丈夫だと思ったのか、いつも通りに接してくれた。変に気を遣わないでいてくれるのが嬉しかった。
これなら訊いても大丈夫かな?
「あの、柊矢さん」
学校からの帰り、迎えの車に乗り込むと、小夜は柊矢に声をかけた。
「なんだ?」
柊矢は運転しながら返事をした。
「送り迎えしてくれるのって、その、沙陽さんがあの火事を起こしたって知ってたからですか?」
「いや、沙陽がやったって言うのは、この前気付いた。だからその場の勢いで問い詰めたんだ。もっと前に気付いてたらお前の前では聞かなかった。悪かった」
柊矢は前を向いたまま謝った。
「いいんです。でも、それならどうして……」
小夜は首を傾げた。
「本物のペンダントを持ってるだろ。あいつら、いずれ偽物だって気付く。そのとき、また襲ってくるはずだ」
小夜は小さく息を飲んだ。
「でも、なんでそこまで……」
ペンダントをスカートのポケットから取り出すと、まじまじと見つめたが特に変わったところはなかった。
「あ、そうだ、柊矢さん、山崎敏夫って……」
小夜の問いに、柊矢が左手でラジオを付けてJーPopを流してる局にあわせた。人気の女性アイドルグループの歌が流れてくる。
柊矢がJーPopを聴くとは思わなかった。
「この曲をよく聴いてみろ」
小夜は意味が分からないまま、曲に耳を傾けた。
「俺も普段はポップスなんて聴かないから最近まで気付かなかったんだが……」
あれ? なんか、この曲……。
普段アイドルの曲は聴かないのに、何故か聴き覚えがあるような気がした。
あちこちで流れてるからかな?
ちょっと変わってる曲だから印象に残ったとか?
でも、それともちょっと違うような?
「柊矢さん、この歌……」
「山崎敏夫の曲だ」
「聴き覚えがあるような気があるんですけど」
「これはムーシカをJーPop風に編曲したものだ。歌詞が日本語になってて、歌っているのも演奏しているのもムーシコスじゃないから別物みたいに聴こえるが」
ムーシコスが歌うのは基本的に既にあるムーシカで、新しく作ることは滅多にない。
多分、山崎敏夫もムーシコスなのだ。
作曲家になったものの、作曲の才能はあまりなかったのだろう。
それでムーシカを借用しているのではないか。柊矢はそう言った。
家に着いて、車から降りると、柊矢に声をかけた。
「あの、柊矢さん」
「ん?」
「沙陽さんがあの火事を起こしたって知った後でも、私、あの人を憎めないんです。お祖父ちゃんを死なせた人なのに」
祖父のことを口にするとまた涙がこみ上げてきた。
「私って薄情なんでしょうか」
柊矢は小夜の頭に優しく手を置いた。
小夜が柊矢を見上げる。
「それでいい」
柊矢はそう言って微笑んだ。
わ、微笑った……。
胸が痛くなるほど優しい笑顔だった。
「どうした? 鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔して」
「い、いえ……」
小夜は真っ赤になって俯いた。
柊矢さん、ずるい!
好きにならないように必死で押さえてたのに、こんな風に微笑うなんて!
夕食の席に着いてしばらくすると、ペンダントのことが話題になった。
「あのペンダント、本物なら何か使い道があるっていってましたよね。でも、ホントにそうでしょうか?」
「どういうこと?」
煮物を食べながら、楸矢が訊ねた。
「あれはムーシコスが何かに使うものってことですよね? それなら私にも使えるんじゃないかと思って、色々試しましたけど、何も起きませんでしたよ」
「色々って?」
「クレーイスに向かって歌ってみたりとか、握って念を込めてみたりとか」
「ホントに何も起きなかったの?」
「はい。……そういえば、関係あるか分かりませんけど、毎回あの森が見えました。でもそれだけで……」
「それだ」
柊矢が言った。
「どういうこと?」
「沙陽達はあの森に帰りたいんだろ。そのクレーイスで森を呼び出したいんじゃないのか?」
「でも、あの森なら今までに何回も現れてますし、その場に沙陽さんがいたことも何度かありましたよ」
確かに小夜の言うとおりだ。森は今までに何度も現れている。
それなのに何故小夜を襲ったりするんだ?
「けどさ、現れたときに森に帰れるなら、俺達も行ってなきゃおかしいじゃん」
「え?」
小夜が首を傾げた。
「嵐の時とか、俺達あの森に入ったじゃん。でも、俺達を残して森は消えた。森に帰るには何か他に条件があるんじゃないの?」
「それがそのペンダントか……」
それか、クレーイス・エコーと呼ばれた自分達かのどちらかだろう。
そういえば沙陽はパルテノン神殿のようなものがあったと言っていた。
もしかしたら、シャーマンのような者が必要のかもしれない。
それがクレーイス・エコーなのだろうか。
昔、沙陽が森に入っていって消えたときは、特別な何かが起きたということか。
知らないことが多すぎる。
椿矢をつかまえてもっと詳しい話を聞くまでは判断のしようがない。
考えるのをやめて、食事の続きを始めた。
柊矢は小夜に、これ以上実験するのをやめるように言うのを失念していた。
夕食の片付けが済むと、小夜は自分の部屋に戻った。
お風呂に入る前に、もう少しだけ試してみよう。
ペンダントを机の上に置くと、その前に立って深呼吸した。
えっと、沙陽さんが歌ってたムーシカは……。
目を閉じると旋律と歌詞が浮かんできた。なんのためのムーシカかは分からないが、何かに危害を加えるようなムーシカではないのは理解できた。
小夜は静かに歌い始めた。
次々に斉唱や重唱、演奏が加わっていく。
小夜が歌い始めたのか……。
すぐには何のムーシカを歌っているのか気付かなかった。
が、何気なく外を見ると森が見えた。
それも今までより広く、空にはあの森の上に浮かんでいた天体まで見える。
沙陽が歌ってたムーシカだ!
これだ!
このために沙陽は何度も歌っていたのだ!
柊矢は小夜の部屋に飛び込んだ。
「おい! 今すぐ歌うのをやめろ!」
小夜は驚いた様子で柊矢を見上げた。
他のムーシコスの歌や演奏は続いていたが、小夜は歌うのをやめた。
再度外を見ると森は消えていた。
しまった!
沙陽達に気付かれた!
歌うのをやめさせたことが裏目に出てしまった。
他のムーソポイオスは歌い続けているのに、小夜が歌うのをやめた途端森が消えたのだ。
小夜が本物のペンダントを持っていると知られてしまっただろう。
「あ、あの、柊矢さん?」
小夜が戸惑った様子で柊矢を見ている。
「大声を出してすまなかった」
「私、何か悪いことしてしまいましたか?」
小夜が不安げな表情で訊ねてきた。
「いや、何もしてない」
「でも……」
「そいつの使い方が分かっただけだ。驚かしてすまなかった。とりあえず、当分そのムーシカは歌わないでくれ」
「はい」
とはいえ、沙陽達はもう気付いた。
今後はこれまで以上に小夜の身辺に気を配らなければ……。
三
三日後、小夜は放課後に清美とファーストフード店に行ってもいいか訊ねてきた。
「分かった。場所は?」
小夜がファーストフード店の名前と場所を言うと、
「気を付けろよ」
と言って電話を切った。
放課後、小夜が清美とファーストフード店に入ると、柊矢が先に来て隅の方に座っていた。
「柊矢さん、どうしたんですか?」
小夜が柊矢の横に行くと、
「たまたま時間が余っただけだ。俺のことは気にするな」
その言葉に小夜は清美のところに戻った。
「時間が余ったから早めに来ただけだって」
「ふぅん」
清美はそれ以上追求することなく、それぞれ注文をすると柊矢から離れたところに座った。
「あれ? 小夜、それ、コーヒー?」
匂いで気付いたようだ。
「うん」
小夜は一口飲んで顔をしかめた。
「どうしたの? 急に」
「柊矢さんも楸矢さんもコーヒーで私だけお茶だから。ただでさえ、小鳥ちゃんとか奥手とか言われてからかわれてるから、せめてコーヒーだけでも飲めるようになろうと思って」
「小鳥ちゃん? あはは。確かに小夜って小鳥ちゃんってイメージだよね」
「清美、ひどい!」
「ひよこちゃんって言われなかっただけマシじゃん」
「清美って、柊矢さん達よりひどい」
小夜は清美を睨むと、コーヒーをまた一口飲んだ。
苦い。
「そんなに苦いなら砂糖やミルク入れればいいじゃん」
「あ、そっか」
小夜はそう言って砂糖に手を伸ばしかけて、すぐに引っ込めた。
「ダメダメ。砂糖やミルク入れたら結局子供扱いされるもん」
もう一度、コーヒーに口を付けると、顔をしかめた。
「どれどれ」
清美は小夜のコーヒーを一口飲んだ。
「意外と美味しいじゃん」
「嘘! 清美、嘘ついてるでしょ!」
「嘘じゃないよ、美味しい。あたしも頼んでこよっと」
清美はそう言うと、コーヒーを買いにいった。
席に戻ってきて、美味しそうにコーヒーを飲む清美を、小夜は恨めしそうに見ていた。
「清美の裏切り者~」
清美は自分で言うとおり、もう子供じゃない。
まだ大人じゃないけど、子供でもない。
自分はまだまだ子供だ。
小夜は溜息をついてコーヒーを飲んだ。
苦い……。
「静かにしろ」
清美の背後に男が立ったかと思うと、彼女の表情が固まった。清美の背に何かを突きつけてるようだ。
小夜の横に沙陽が立った。
「よくも騙してくれたわね。声を上げたらその子を殺すわ」
小夜と清美は怯えた表情で顔を合わせた。
「何が欲しいのか分かってるわね。よこしなさい。今度小賢しい真似をしたらホントにその子を殺す」
小夜がポケットに手を入れたとき、沙陽の横に柊矢が立った。
「こいつに手を出したらただじゃおかないと言っておいたはずだ。そいつと一緒に今すぐ帰れ。でなければお前の喉を潰す」
ムーソポイオスにとって歌えなくなるのは死ぬより辛い。
柊矢と沙陽はしばらく睨み合っていたが、やがて、
「行くわよ」
清美の後ろに立っている男を促すと帰っていった。
「清美! 大丈夫!? 怪我はない?」
「う、うん、今の何?」
「今日はもう帰った方がいい。家まで送ろう」
「清美、車の中で話すから。行こう」
「分かった」
小夜は車の後部座席に清美と並んで座り、沙陽は小夜が持っているものを狙っている、と話した。
「この前のひったくりって言うのも……」
「うん、男の人が襲ってきて奪おうとしたの」
「それで送り迎えしてもらってたんだ」
「巻き込んでホントにごめんなさい」
小夜は頭を下げた。
「いいよ。何もなかったんだし」
そう言ってから、
「小夜、絶対気にするでしょ」
小夜の顔を覗き込んだ。
「え?」
小夜が清美の顔を見返した。
「小夜は悪くないんだから、気にしちゃダメだよ」
「うん、有難う」
「あ、そこ曲がったところです。このマンションです」
清美の指示でマンションの前に車を止めた。
柊矢が後部座席に回ってドアを開ける。
「送っていただいて有難うございました」
車から降りた清美が頭を下げた。
「部屋の前まで送らなくて大丈夫か?」
「狙いは小夜なんですよね。だったら小夜を守ってあげてください」
「清美……」
「じゃ、また明日ね。小夜」
清美は手を振るとマンションに入っていった。
柊矢は清美が無事にマンションに入ったのを見届けると、自分も車に戻った。
「いい友達だな」
車を出しながら言った。
「はい」
そのとき、ムーシカが変わった。
今までも聴こえていたのだが。清美の前では言えなかったので黙っていたのだ。
この声……。
「柊矢さん」
小夜は柊矢を見上げた。
「椿矢か。中央公園にいるかもしれないな。行ってみよう」
柊矢は車を中央公園に向けた。
「あ、椿矢さん」
小夜は中央公園のベンチでブズーキを弾きながら歌っている椿矢を見つけた。
柊矢と小夜はムーシカが終わるのを待った。
椿矢が終わりを告げると、野次馬達は散っていった。
「その楽器、ブズーキとか言ってたな」
「どこの国の楽器なんですか?」
「ギリシア。柊矢君だっけ? 君はキタラだったね」
「キタラもギリシアの楽器でしたよね。楸矢さんの笛もギリシアのものなんでしょうか」
「あの笛はギリシアじゃないね」
椿矢が楽器をしまいながら答えた。
「じゃあ、どこのですか?」
「さぁ? もしかしたらムーシケーから持ってきたものが全然進化してないのなのかもね」
「ムーシケー?」
柊矢が聞き返しながら、さりげなく椿矢が立ち去れない位置に移動した。
今日こそは全ての質問に答えてもらうまで帰さないつもりだった。
それを見て取った椿矢が、降参というように両手を挙げて、
「ちゃんと話すから喫茶店にでも移動しない?」
と提案した。
「ダメだ。喫茶店は営業時間が終わったら追い出されるからな」
「そんな時間まで質問攻めにするつもりなの?」
椿矢が可笑しそうに笑った。
「でも、柊矢さん、ここじゃ寒いですよ」
小夜が腕をさすりながら言った。
確かに、こんなところに長時間いたら小夜が風邪を引く。
かといって小夜を一人で帰すのは論外だ。
「じゃ、こっちだ」
「へぇ、彼女の言葉なら聞くんだ」
「か、彼女じゃ……」
小夜が赤くなった。
「違うんだ。彼氏はいるの?」
椿矢が面白がって訊ねた。
「い、いません」
「じゃあ、僕が立候補してもいい?」
「え!? あの、えっと、その……」
小夜が狼狽えていると、柊矢が小夜と椿矢の間に割って入った。
「おい、こいつをからかうな。お前もいちいち真に受けるな」
「あ、はい」
からかわれてたんだ。
柊矢さんや楸矢さんがからかうのも、こういう反応を面白がってるからなのかな。
柊矢は自分の車に向かった。
「車に乗れ」
後部座席のドアを開けて、小夜を乗せながら、椿矢に助手席に乗るように促した。
「行き先はどっかの山奥とかじゃないよね?」
それには答えず、柊矢はドアを閉め、運転席に回ってシートに座った。
エンジンをかけるとヒーターをつけた。
いつの間にか森が出現していた。
森の手前に大きな池があり、地平線近くに月の何倍もの大きさの天体と、天頂近くに月のようなものが見える。
柊矢は助手席に向き直った。
「さて、話してもらおうか」
四
「どこから話せばいい?」
「この森はなんだ?」
「ムーサの森だよ」
「沙陽はムーシコスはこの森から来たと言っていたが」
「そ。大昔、ムーシコスはムーシケーから来た。昔のこと過ぎて、ムーシコス自身も知らない人がほとんどだけどね」
「ちょっと待て。この森のことをムーサって言ったのに、今ムーシケーって……」
「ムーサはこの森の地名だよ。今、僕達がいる場所が新宿って言うのと同じ」
この綺麗な旋律の森がムーサ。
「このムーサがある惑星ムーシケーと、あの地平線近くの惑星グラフェー、そしてあの衛星ドラマ。その三つの天体が構成する惑星系の総称がテクネー」
「ちょっと待て! 惑星って何だ」
「君達だってこの森が地球上のものじゃないって事くらい気付いてたんじゃないの?」
柊矢は黙り込んだ。
確かに、白く半透明な巨木や空に浮かんでいる大きな青い天体を見れば、この森があるのは地球ではないんじゃないか、くらいの疑問は涌く。
「この森は本当にあるのか? 幻覚か何かじゃなくて」
「地球からどれくらい離れてるかは知らないけどね、ちゃんとあるよ」
「じゃあ、地球人は古代にこの星から宇宙船でやってきたって言うのか!?」
「地球人じゃなくて、ムーシコス。地球人は元々地球にいたよ。宇宙船は必要ないでしょ。こうして繋がってるんだから歩いてこられる」
それもそうだ。
「でも、どうしてムーシコスはムーシケーを捨てて地球へ来たんですか?」
あれだけ沢山の旋律に満ち溢れた世界はムーシコスにとっては天国のようなものだ。
離れたがった者がいるなんて想像も出来ない。
自分だったらしがみついてでも離れなかっただろう。
「あくまで想像だけど」
椿矢はそう前置きをして、
「旋律が凍り付いたからじゃないかな」
と言った。
「なんで凍り付いたのかなんて聞かないでよ。知らないからね」
確かに旋律で草木も水も凍り付いてしまった世界では生きていけない。
仕方ないから豊かな自然に満ちた地球へ行って暮らそう、となってもおかしくはない。
丁度地球と繋がっているのだし。
「お前の言うとおり、テクネーと地球が繋がってるとして、沙陽達は帰りたいなら何故帰らない?」
「テクネーはグラフェーとムーシケーとドラマの総称。繋がってるのはムーシケーだけ。多分ね」
椿矢は柊矢の言葉を訂正した。
「帰ろうにも帰れないらしい。森に入って行っても地球に戻ってきちゃうらしいんだ」
そう言ってから、
「戻ってきちゃう理由も知らないからね」
と先手を打って答えた。
「まぁ、どちらにしても、凍り付いた旋律を何とかしないと向こうへ行っても暮らしていけないけど」
「何とかする方法があるのか?」
「手段は知らないけどあるみたいだね」
「ムーシカが離れた所にいるムーシコスに聴こえるのはどうしてなんですか?」
「ムーシケーは音楽の惑星だから音楽は意識の底で共有してるとかじゃないかな」
「知らないことばかりじゃないか」
柊矢が咎めるように言った。
「これでも普通のムーシコスよりは詳しいよ。現に君達は知らなかったでしょ」
椿矢の言うとおりだ。
ムーシカに古典ギリシア語の歌があると言うことは、紀元前二千年頃には地球へ来ていたことになる。
柊矢が使っているキタリステース用の楽器――キタラ――がギリシアのものであることを考えても、ムーシコスの一部が大昔のギリシアにいたことは確かだろう。
もう四千年も地球人に交じって暮らしてきたのだ。
ムーシコスが地球に来た事情など忘れるには十分すぎるほどの時間がたっている。
自分と、このクレーイスがあれば、沙陽達はムーシケーに帰れる。
沙陽さん達を帰してあげられないだろうか。
沙陽達を帰して、自分も旋律が溶けたムーシケーに時々遊びに行きたい、というのは虫が良すぎるだろうか。
勿論、沙陽のために何かすると言うのに抵抗がないわけではない。
なんと言っても沙陽は祖父を死なせたのだ。
「質問には答えたよ。そろそろ解放してもらえるかな」
「沙陽か、その仲間の連絡先を……」
「悪いけど知らない。連中に関わる気はないからね」
椿矢は柊矢の言葉を遮った。
「確かに旋律に満ちた惑星っていうのは魅惑的だよ。でも、考えてもみてよ。現代文明に慣れきった僕達が電気や水道のない世界で生きていけると思う? 大昔に祖先が住んでたってだけで文明のない惑星に行く気はないよ。音楽は地球にだってあるからね」
椿矢は「行く」と言った。
沙陽のように「帰る」とは言わなかった。
これが残留派と帰還派の意識の違いだろう。
柊矢が車の鍵を開けた。
「それじゃ」
椿矢は車から出ると闇の中に消えていった。
入れ違いに楸矢がやってきた。
スマホのGPSで探してきたらしい。
楸矢は助手席に入ってくるなり、
「柊兄ぃ~。小鳥ちゃんとデートするならそう言っておいてよ。そしたら夕食自分で何とかしたのに」
恨めしげに柊矢を睨みつけた。
「ああ、忘れてた」
「あ、あの、楸矢さん、私達デートじゃなくて……」
「じゃ、なんで小鳥ちゃんは後部座席にいるの?」
小夜は楸矢の言葉に首を傾げた。
「デートなら助手席の方にいるんじゃないんですか?」
その言葉に、柊矢と楸矢は顔を見合わせた。
「ホントにデートじゃなかったんだ」
小夜はさっぱり分からない、と言う表情で柊矢と楸矢を交互に見比べた。
「どういうことですか?」
その問いに、
「小鳥ちゃんが大人の付き合いするようになったら分かるよ」
と言う返事が返ってきた。
また大人の付き合い。
ムーシケーが旋律で凍り付いたことといい、大人の付き合いといい、小夜にとっては未知のことが多すぎる。
小夜は溜息をついた。
「柊兄達、夕食は?」
「まだだ。どこかで食べていこう」
柊矢はそう言うと車を出した。
「は? 異星人? 沙陽、本気でそんな話信じてんの?」
「こいつから無理矢理奪おうとしたところから見ても、そうなんだろうな」
「友達まで巻き込むとなると、本気ってことか」
楸矢はステーキの添えられているフライドポテトを口にした。
楸矢さんは半信半疑みたいだけど……。
小夜は椿矢の話を信じていた。
ムーシケーは、ムーサの森は、実在する。
だって、あの森で凍り付いている旋律、あれは本物だもの。
「沙陽ってさ、頭おかしいんじゃないの?」
楸矢は次のフライドポテトにフォークを突き刺した。
「仮にムーシケーだの、クレーイスだのの話が本当だとして、そのペンダントが必要だったら素直にそう頼めばこんなに大変なことにはならなかったのに」
そう言うとフライドポテトを口の中に放り込んだ。
「話しには来たな」
「そういえば、追い返しちゃったんだっけ」
楸矢はやべ、という表情を浮かべた。
「あのとき話を聞かなかったことがこんな大事になるとはな」
柊矢も失敗した、と言う表情でコーヒーを飲んだ。
「まぁ、今更後悔しても仕方ない」
「そうだね」
小夜はポケットの中でクレーイスをいじりながら俯いていた。
今からでも、沙陽に協力することは出来ないだろうか。
そう二人に提案したかったが、どうしても口に出せなかった。
これは柊矢と楸矢の祖父の形見だ。
それがなくなるかもしれないことを考えると言うのを躊躇われた。言えば柊矢も楸矢も構わない、と言ってくれる気がした。
でも、内心では祖父の形見を利用されるのは気分がいいものではないはずだ。
それに、祖父を死なせた沙陽に協力したくないと思ってしまうのも事実だ。
「小夜ちゃん、食べないの?」
小夜の前に置かれたリゾットはまだ半分近く残っていた。
「あ、今食べます」
「急ぐことはないぞ」
「はい」
五
翌日、柊矢の迎えの車に乗って学校から帰ってくると、スマホが鳴った。
スマホのディスプレイに、清美、と出ていた。
何の用だろ。
小夜はスマホに出た。
「きよ……」
「この子は預かったわ。次の電話を待つのね」
沙陽はそう言って通話を切った。
清美が攫われた!
小夜は真っ青になった。
その様子に、台所から出てきた楸矢が気付いた。
「小夜ちゃん! どうしたの?」
「楸矢さん」
「何があった」
楸矢の声に、柊矢も近寄ってきた。
「清美が、沙陽さん達に攫われたみたいなんです」
「ホントに!? 小夜ちゃん、それは確か?」
「電話してきたのは清美のスマホからでした」
「家にもかけてみろ」
柊矢の言葉に、清美の家に電話したが、母親が出て、清美はまだ帰ってない、と言われた。
それを伝えると、
「彼女のスマホ、どこのだ?」
柊矢が訊ねてきた。
「え?」
「キャリアによってはスマホの場所を探すサービスがあるだろ」
「あ! そうでした!」
多少もたついたが、清美のスマホの場所が分かった。
「新宿の……」
「中央公園、でしょ」
楸矢が小夜の言葉を引き取った。
「森が出てる」
楸矢の言葉に外を見ると確かに森が見えた。
「行こう、小夜ちゃん」
楸矢が言った。
「はい!」
小夜がそう返事をすると柊矢は車の鍵をポケットから取り出した。
楸矢は青いビニールシートにくるまれたものを持ってきた。楽器だろう。
中央公園は森の端だ。
この辺りには樹はなく、目の前には池が広がっていた。
小夜達が森に入って行くと、森の存在感が一層増した。
「クレーイスが近付いたからだな」
辺りから、小さなベルが鳴るように、旋律の切れ端が聴こえてきている。
「旋律が溶け始めてるな……」
柊矢が辺りを見回しながら言った。
「森が……喜んでる」
弾むように、旋律の欠片が辺りを漂っていた。
樹々が身じろぎをする。
すると鈴のように旋律の断片が鳴った。
超高層ビルの天辺辺りから、溶け始めた旋律が雪のようにふわふわと舞い落ちてくる。
「この旋律は……」
旋律から喜びの感情が伝わってくる。
「嬉しいんだ。凍り付いてるのは本意じゃなかったんですね」
小夜が呟くように言った。
だとしたら、何故旋律は凍り付いているのだろうか。
少し歩くと、そこに沙陽と見知らぬ男が立っていた。
清美がいない!
「沙陽さん! 清美は……」
言いかけた小夜にスマホを放ってよこした。
「おい、それを返していいのか」
男が言った。
「スマホに人質としての価値なんかないでしょ」
スマホ?
小夜は自分のスマホから清美の家に電話をしてみた。
すぐに清美が出た。
「もしもし」
「清美!」
「なんだ、小夜か」
清美のがっかりした声が聞こえた。
清美の無事が確認できた小夜はほっとした。
「ゴメン、小夜。今電話待ってるから後でいい?」
「うん。それじゃ」
小夜はそう言うとスマホを切った。
切ってから、清美が待っているのはスマホを見つけたという電話だと気付いたが、今その話をしている時間はない。
後で電話し直そう。
「あなた達にも分かるはずよ。森は起きたがってる。私達を帰れるようにしてちょうだい」
「沙陽……さん、その前に小夜ちゃんに言うことがあるんじゃないの?」
「なにを?」
沙陽は本当に分からないようだった。
「小夜ちゃんの家を火事にしたんでしょ」
「そうだけど、その子は無事じゃない」
なんだ、そんなことか、と言う表情で答えた。
「小夜ちゃんのお祖父さんは亡くなって、小夜ちゃんは家も何もかもなくしたんだぞ!」
「だから?」
「頼み事する前に謝るのが筋ってもんじゃないのか」
「ああ、そ。悪かったわ」
全く悪かったと思ってない顔で言った。
「沙陽……っ!」
楸矢が怒鳴った。
柊矢は楸矢の肩に手を置いた。
「あいつには言うだけ無駄だ」
「これじゃ、まだ帰れないわ」
確かに、溶け始めているとは言え、まだ森は凍り付いている。
「クレーイスを持っているなら、旋律を溶かす歌が歌えるはずよ」
小夜の祖父が死んだのは沙陽のせいだ。
それを思うと沙陽の言いなりになって森を起こすのは抵抗がある。
しかし、森は起きたがっている。
森の望みは叶えてあげたい。
小夜はどうすればいいか分からず柊矢を見上げた。
小夜の視線に気付いて振り向いた柊矢が驚いたように目を見開いた。
「おい、ポケット!」
柊矢の言葉に下を見るとスカートのポケットが光っていた。
取り出してみるとクレーイスが光を発していた。
小夜は手の中のクレーイスを見下ろした。
確かにクレーイスから旋律が溢れてくる。
小夜の知らなかった旋律だ。
このムーシカは……。
クレーイスを柊矢に渡すと、彼は理解したようだ。
柊矢が楸矢に手渡すと、彼も分かった、と言う表情で頷いて小夜に返した。
楸矢はビニールシートから楽器を出すと、柊矢にキタラを渡した。
柊矢と楸矢が楽器を奏で始める。
小夜がそれに合わせて歌い始めると沙陽が嬉しそうな顔になった。
小夜のムーシカにムーシコスのコーラスや演奏が加わっていく。
沙陽はほくそ笑んだ。
今まで自分の邪魔をしていたムーシコスが、何も知らずに協力してると思うと傑作だった。
勿論、自分に賛同してくれなかったことは悔しいが。
だが、その喜びも長くは続かなかった。
小夜の歌が森の中を広がっていく。
歌声が優しく旋律の切れ端を包む。
それにつれて、溶け始めていた旋律の欠片が凍り付き、雪のように大地へと降ってきた。
樹々が嫌がるように身じろぎした。
小夜には森が抗おうとしているのが手に取るように分かった。
嫌だよね。
音のない世界でただ眠っているだけなんて。
昔のように歌っていたいんだよね。
ごめんね。
小夜は心の中で謝りながらも歌うのをやめなかった。
それが自分の、クレーイス・エコーの役目だから。
理由は分からないけれど、自分がクレーイス・エコーだと言うことも、クレーイス・エコーがやらなければいけないことも、心の中で理解したから。
殆どの旋律の欠片が再び凍り付くと樹々も諦めたように、次々と眠りについていった。
歌が終わる頃には、また元の凍り付いた森に戻っていた。
「おい!」
「これはどういうこと!」
男と沙陽が同時に叫んだ。
「お前らの言うとおりに奏でただけだが」
「ムーシケーがまだ時期じゃないって……」
小夜が言い訳するように言った。
「なんでそんなことが分かるのよ!」
「それは……」
「ムーシカで分かるだろ。クレーイスから溢れてくるムーシカを歌ったら森は元に戻った」
そうなのだ。
小夜はクレーイスから湧き上がってくる旋律を聴いてすぐに気付いた。
これは封印のムーシカだと。
多分、その昔、ムーシケーを凍らせるために奏でられた旋律。
柊矢と楸矢もすぐに理解した。
他のムーシコスも、これは人を傷つけるムーシカではないと判断したから小夜に同調した。
いつしか森は消えていた。
「これが仕返しってわけ。よく分かったわ」
沙陽はそう捨て台詞を吐くと、男と共に歩み去った。




