~前章~
親友が武将で、今仕えてます。
別段転生したとかそういうことではない。日本は第二の戦国時代で親友が戦国武将の末裔というだけだ。
南海トラフ地震に端を発した文明史上最悪とよばれるこの大災害によって関東平野は沈み、残ったわずかな陸地が無法地帯になっただけだ。東京なんてもうない。横浜も、メッセもなにもかも水の底だから。
「とのー。評定の時間ですよー。」「はーい。」
この間抜けな返事をしたのが俺の主君、金谷胤継。我々の統治する国、豊栄団の長である。もとの名前は恭平。戦国大名であった金谷氏の18代目。胤継は家系図の名前らしい。
「全く、猫と戯れている暇なんてないのですから」
評定をしに階段を上がる。といっても城ではない母港の校舎だ。五階建ての校舎の五階にある会議室が我々の評定をする場となっている。地震に耐え抜いた校舎はあちこちがヒビだらけで、西側の部分は崩落している。
会議室に入れば、家臣団が雁首揃えている。ただし、大人はいない。全員子供、それも高校生までの人間だ大人の生存は確認できなかった。父親は東京の会社に朝出勤してから全く会っていない。母親はこれまたママ友とランチしに東京に行ってから戻ってこないおそらく、否確実に死んでいるのだろうが。その他の人間は成人のみにかかる奇妙な感染症で死んでいった。正に生き地獄だった。
しかしこの城のみの話だ。他の所がどうかなんて分からない。
さて話を戻そうか。当然家臣団は母校に集まった人間なのだから知り合いだらけである。
左側から元サッカー部の主将 釜崎 聖、
元野球部の主将 大野 敬信、
元剣道部の主将 二ノ宮 秀央、
元科学部の部長にして学年一位 赤坂 昌之介、
元野球部の筋肉 田島 剛、
元帰宅部の薬剤師 飯山 良介、
元科学部の電磁波王 奥山 朔也、
現生徒会長 舞阪 望、
元生徒会長 籤原 香名子、
吹奏楽部の生んだ戦闘狂 名嘉 弘,
演劇部の変人女子 富士宮 稜子、
元剣道部の門番 曲田 正閏、
そして自分、作戦立案および近習の 清瀬 曉。
だいたい各係りの長だけでこんなもんだ。ただし実際は俺の弟、清瀬 光が農業などにおいての指導を行っている。サバイバル雑誌読み漁ってたような人間だから当然といっちゃあ当然なのだが。
評定は基本的に各々の係の進捗報告で終わる。一応敵襲があったときには作戦会議をも行うが、そんなことは今まで全くない。基本的に平和である。で今日の評定もまたなにもなく終わった。
(明日から科学技術の再建を進めねばならんな…)
そう考えてきたらけたたましく鐘が鳴った。敵襲の合図である。この国の建国から三ヶ月、初の戦であった。