第9話「5月4日 PM6:31~」
本文からは端折ってしまったので捕捉したい。
冒頭で嵐に連絡をし、段取りをしたのは死角空間側に居る墾の本体。
あと、SPring8はディープ・ソート単発で制御してます。
ディープ・ブルーを失った応急措置として、匿名結社が取り敢えずSPring8だけでも動けるようにしたという設定。
物語にあえて書かないだけで、設定はしてます。
世界電波塔
─ 四人の転校生 ─
第9話「5月4日 PM6:31~」
ドガアアアアアッッッッ!!!!
警察病院病棟
その3階の外壁が爆裂した
世界電波塔こと、小江戸八重葉が入院していた、その病室の外壁だ
巨大な鋼鉄の腕に抱かれた少女が飛び出してきた
それを追って跳躍をする少年
3階の高さから平気で飛び降りた墾を、目を丸くしてみていたのは八重葉
「凄いね東新田くん」@八重葉
「え?ああ、しまっ!えーと、これも重機がくれた超能力さ」@墾
「そーなんだ、」@八重葉
「みんなにはナイショだからね」@墾
「うん、わかった」@八重葉
墾と自分二人だけの秘密…正確には創やマリコも知っているだろうが…そういうものがある。それが妙に嬉しかった
病院の中庭を突っ切る鋼鉄の巨腕と少年
陽が下がったばかり。まだぼんやりと地平線が赤らんでいる
建物の輪郭は琥珀色の異世界
幻想的な瞬間を、FAKE NEWSの住人が駆け抜ける
自分がそこにいる不思議
すべからくが十人並の自分が超化学の側にいる不思議
まるで他人事の様
だが、他人事の様に俯瞰することを、彼女を選んだ世界電波塔は許さない
その奇怪なる鋼鉄の化け物は、少女に世界を再設計させようとしている。彼女の、夢の中で
「うがっ」
マリコが交機仕様のMotoGPマシンにまたがる
無論、カミオカンデを止めるためだ
墾の兄、創。右足を引きずってマリコの前に立ちふさがる
「フン。マリコ、好きにさせておけ」@創
「うが?」
「いいんだ。警察お抱えの医学者どもは一度さじを投げているのだ。それを上からの圧力で無理やり再挑戦させても、結果なんて出ないんだよ。彼女を、八重葉ちゃんを消耗させるだけさ」@創
「うが…」
「フン。一歩出遅れたことにすればいい。言い訳は任せておけ。現場も見ないでふんぞり返っている年寄…」@創
「うーが」
「…ああ。永久橋の早さなら、今からだってカミオカンデに追い付けるのは分かっている。テキトーにしらばっくれるよ」@創
「うがーう」
「安心しろ。あれでも私の弟だ。命に代えても、彼女を守り抜くだろう。心の強さに限っては、私以上さ」@創
創に警護の武装警官から無線が入る。墾が八重葉を連れ去った件についてだ
「判っている。お前たちは追わなくていい。あとは私に任せておけ」@創
創はGPS腕時計でカレンダーを確認する
「ゴールデンウィークも終盤だな。丁度いい」@創
マリコの顔をじっと見る
「マリコ。お前なら全然いける。大丈夫だ」@創
「うが?」
マリコは創が何を言いたいのか、まったく理解できない
ちょこんと、首をかしげるのみ
警察病院の門の前まで来て、墾は鋼鉄の腕を死角空間に引っ込めた
「こっちだ」@嵐
鋼鉄の腕から降りた八重葉の手を引いたのは夏野嵐
病院の向かいの路地裏にタクシーを待たせてあり、3人走って乗り込んだ
「隣駅までやってくれ。出来るだけ裏道を使ってな」@嵐
嵐の指示に従って、タクシーは走り出した
最寄駅では警察に待ち伏せされる可能性がある
幹線道路では検問を敷かれる可能性がある
流石は御庭番の血筋、墾は嵐の手際に感心した
タクシーは住宅街や小さな商店街を縫って進み、隣駅が見えて来た
「運転手。駅をゆっくり通り過ぎて、その先の路地を右に入ったところで降ろしてくれ。ゆっくりと言っても、不自然でない程度にな」@嵐
ややアクセルを緩めて駅前を通過するタクシー
座席に深く座り、腕を組んだまま、鋭い眼光で駅周辺を睨む嵐
二人が睨まれているわけでもないのに、墾と八重葉は、嵐のレーザービームの様な目に萎縮してしまう
怯える八重葉
墾も生唾を飲み込んだ
駅前を通り過ぎるわずかな時間の緊張感
路地裏でタクシーを下車した3人
墾も八重葉も、これから当然駅へ向かうものと考えていたので、嵐の背後に並んだ
しかし、
「東新田弟」@嵐
「どうか、ひ・ら・く、と御呼びください」@墾
「カミオカンデを起動しろ」@嵐
「はい?ここで…ですか?」@墾
「ああ、わたしとお前、二人で八重葉を逃がすぞ」@嵐
嵐は二本の警棒を両手に握った
その圧、本気だ
そして墾は背後に”その”野獣の気配を感じ、カミオカンデを起動した
「千の眼を見開け!カミオカンデ!!」@墾
そして後ろへ振り返りざま、拳を突き出す
「マリコさん!失礼します!」@墾
「うがっ!」
3人の背後には創とマリコが居たのだ
マリコはMotoGPレーサーの前輪で墾の拳を受け止めた
鋭い視線を交錯させる、嵐と創
「フン。私の手を読んだというのか?御庭番の後継者」@創
「東新田弟から八重葉を脱走させたいと聞いた時、これは賭けになるとわかっていた。東新田兄に知られずに行動するのは不可能だし、永久橋の速度に勝つのも困難。あり得る勝機はあなたが内々の解決を望んだ場合だけ。それがこの状況だ」@嵐
創に向かって警棒を構え、いよいよ前のめりに軸足を踏み込まんとする御庭番の子
「さぁあさぁ!我が二刀を見たが運の尽き。お覚悟なされよ」@嵐
その姿を見て、右足を引きずる警察のエリートは手をたたいた
彼女に、拍手喝さいを送った
「お見事。合格だよ、お庭番」@創
嵐は墾に「拳を引け」と言いながら、警棒を仕舞った
「何を企んでいる。出世頭」@嵐
「お前に出世頭と言われるとこそばゆい。お前は誉ある夏野家でも後世に名を語り継がれる女になる」@創
「わたしは親族を困らせた鬼っ子。故に年下である辰の下だ」@嵐
「お前は命格の大きさ故、格式という石頭に理解されず入門が遅れた。その程度は調べてある」@創
「話を戻すぞ。どういう魂胆だ、東新田兄」@嵐
エリートはため息をついた
「どうも頭でっかちの学者どもは度胸が無くてな…論理的な言葉遊びばかりで、とんと話が進まぬ」@創
「それはあなたの私見だな」@嵐
「ああ、そして”警察官”の目による分析だ。どうにもいかぬよ。世界電波塔を観察しているだけでは、遠く無い未来に手遅れの事態になる」@創
「あなたが焦っているだけでは?」@嵐
「世界の危機だぜ、焦るとも。この緊急事態に焦らずしてどうする?」@創
「焦りを肯定するとは末期的な。冷静に判断をなされよ。出世頭」@嵐
エリートは手を伸ばし、嵐の顎をつまんで、彼女の瞳の奥をじっと覗き込んだ
「私とお前は似ている。絶望的な状態でも、1%の希望に賭ける。必要ならば神にだって逆らう」@創
「告白の類ならたちが悪いぞ」@嵐
嵐は創の手を払いのけた
「これから世界電波塔の脅威に立ち向かう。君が居れば、例え希望が1%しかなくたって立ち向かえる。それが夏野嵐という命格だ」@創
嘘偽りのない表情と声でそこまで言われて、鬼の風紀委員は頬を紅潮させた
それでも、柄にもない自分の赤面が恥ずかしくても、八重葉の明日を背負った視線をそらすことはしない
創はGPS腕時計を操作した
嵐と墾の腕時計に作戦がダウンロードされた
弟は作戦の内容を確認し「兄さん、これは」と、驚きの表情を向けた
創は無言で敬礼をした
嵐も、続けて墾も敬礼で返した
腕時計に表示されていたのは、八重葉を安全に自宅まで送る経路
「連休明けまで、世界電波塔を頼んだぞ」@創
そう言い残して、創はマリコとその場を去った。上空のヘリを「フン」と鼻息一つで小ばかにして
マリコはヘリが匿名結社の手の者と知っていて、牙をむきかける
そんな野獣マリコの頭を創が撫でる
「放っておけ。二兎を追うものはなんとやら。今は電波塔の移送が優先だ」@創
マリコの匿名結社に対する憎しみは深い
マリコは15歳までは普通の少女であった
それが、匿名結社が行った実験の失敗により、人語を失い、野獣となってしまった
マリコこそ、世界電波塔の、最初の被害者なのだ
上空のヘリに乗っているのは少年兵スーダン
彼は、彼の重機SPring8のターゲットスコープ越しに、5人のやり取りを見ていた
「厄介な二人が戦術領域から外れました。今なら電波塔を狙えます」@スーダン
無線の相手は被り物の二人
『余計なことは考えるな。スーダン』@唐揚
『あなたは言われたことを正確にやればいいのよ。スーダン』@檸檬
「では、引き続き監視を続けます」@スーダン
『いや。お前には別な任務を与えるよ』@唐揚
「別な任務…」@スーダン
『五六博士に進展があったのよ。そちらを任せるわ』@檸檬
『世界電波塔は新たな展開を迎える。電波塔の監視は、面が割れていない我々の方が都合いい。五六博士も我々が対応したいが…残念ながら忍術の心得が無くてね。分身の術は使えない』@唐揚
『お前ならばわたしたちの手足となり、五六博士の対応をしてくれる。そうね、スーダン』@檸檬
「イエス、マァム」@スーダン
少年兵は手でパイロットに合図をし、ヘリを帰投させた
少年兵が手にしているのは大掛かりな電子機器を搭載したガングリップ
無論これには直径9cmの漆黒の円があり、重機SPring8とつながっている
SPring8は起動しており、その300mm巨砲は彼がトリガーを引きさえすれば、いつでも発射できる状態にある
そのターゲットスコープが狙うのは、夏野嵐
警察病院で、少年兵は彼女に完敗している
一対一の戦闘としても完敗であったし、思想的にも彼女の正義を打破できなかった
物理的にも、論理的にも敗北をした
彼女という存在は、自分を…なによりも妹の存在を否定する
この世から消し去ってしまいたい
ヘリはあっという間に2km遠ざかったが、SPring8の300mm砲の射程は150kmある
スーダンはトリガーに指をかけた
「ドーン」@スーダン
褐色の少年兵は300mm砲を打つ真似だけをして、ヘリのシートへ戻った
嵐の顔が頭に浮かぶ
凛としてまっすぐに立ち、その目は正義を信じて疑わない。重責や苦痛に耐える、強靭な肉体と精神を持つ。そして、何不自由ない、将来を約束された家柄
神様は不公平だ
少年兵は、妹の不憫に心を痛めて、ヘリの壁を殴りつけた
「あの女…絶対に殺してやる…」@スーダン
地獄をかいくぐってきた少年は、顔を歪ませ、鼻水を垂らしながら、邪悪にすすり笑った
「眼球をえぐりだされ。手足をもがれ。自分の臓物を口に突っ込まれても、まだ”正義”を掲げていられるか。楽しみだな。俺と妹は!そういう目にあってきたんだ!!」@スーダン
吐き捨てた
少年兵の胸のもやもや
彼には分っている。嵐なら、自分を受け止めてくれる
頼れる、姉のような存在
だが、それを、それを認めるわけにはいかないのだ
「……ただでは…殺さない」@スーダン
「よしっ!でけた!」@幸子
川沿いの丘陵地帯
傾斜のきついわずか8坪の土地
なんにせよ使いどころに困る類の土地だ
駐車場に使われていたものを新城幸子が、安く買い取った
そして、パーキングメーターなどを撤去したそのままの土間コンクリートの上に、4坪の仮設住宅を建てたのだ
「わたしの隠れ家!」@幸子
敷地の隅に屋外トイレユニットと屋外シャワーユニットが並んでいる
仮設住宅は4坪ながらエアコン・ミニキッチン完備
一応、住める
新品のパソコンデスクは可愛らしい北欧風の木製
オーク材の匂いを嗅いで「ん~」と悦に入る
そこにぽんぽんとぬいぐるみを並べて行く
白い天井
桜色の壁
推しのポスターを張る
「エアコンON!」@幸子
ぴっ、ふいぃーん
5月初旬。エアコンが活躍するには正直早いが、もう秘密基地の装備が動いただけで、なんかうれしい
「アガるなー」@幸子
ベージュのソファベッドに寝ころんだ
ギャルギャルしい六畳間…
の!
奥に目をやるとサーバーラックがドンドンドンと3つ並んでいる
工場用防寒ビニールカーテンの向こうは電子の要塞。温度は18℃に保たれている
屋外には非常用の発電機を設置し、ガチ24時間運転を可能にしている
それをジト目で眺める幸子
「ラックだけで、30Aが8つ、20Aが10コ。10ギガの専用線が3本、ドメイン1つ…あたし、やっちまったよなー」@幸子
そう、この小さな仮設住宅は、ITの天才が己の欲望をまんま形にした空間
ギャルとラックマウントサーバーがせめぎ合って融合した、超絶変態空間なのだ
この夢の空間を維持するのに必要な月間の電気代と通信費は…
「わーっ!わーっ!考えたくない!ダメダメダメ!そういうの考えたらアカン!ギャルは無駄に前向きなところが美点だから!」@幸子
幸子は脱色した髪を掻き毟った。現実から目を背けるために
グオン!グオオオオン!!
外から威勢のいい乾いたエンジン音が聞こえてきた
暗幕カーテンを指で避けて、窓から外を見る
「どこの暴走族だぁ?それともマフラー壊れてるのか?やっぱ仮設住宅の壁じゃあ音、素通しだな」@幸子
暗幕カーテンをばしゃりと閉めて、再びソファベッドに身を沈めた
タブレットPCを取り出す
LinkedInで仕事の依頼をチェック
「それより、仕事増やさないと。この隠れ家維持できないから」@幸子
彼女のスケジュール表は多数の仕事でみっちり埋まっている。と、いうか、2~4の仕事を同時進行するスケジュールになって居る。無理しすぎ
「手、動かさないと。終わらないから。金にならないから」@幸子
バリバリとプログラムを書き始めた
「ん?」@幸子
気のせいか、爆音を発していた車両が、我が隠れ家の前で止まったような気がした
暗幕カーテンを再び指で避けて、窓から外を見る
インテリ男性が一人、野生味あふれる女性が一人窓の外に立っている
創とマリコだ
幸子は創と目が合った
「げ、」@幸子
自分以外のすべてを見下したような目
苦手な種類の人種だ
右足を引きずりながら近付いてくる
「フン。親御さんに聞いたらこちらだと教えられてやってきたが…想像以上のタマだな。新城幸子」@創
幸子は暗幕カーテンをそっと閉めた
「やばい!やばい!なんかやばいやつキタ!」@幸子
仮設住宅の反対側の窓に向かう
「あたし、戦闘力ゼロだから。三十六計逃げるに如かずってね」@幸子
ガラリ!窓を開ける
しかし、
「うが」
マリコが待ち構えていた
「ひぃっ!」@幸子
恐怖に凍り付く幸子
インテリ男性が右足を引きずってゆっくりと歩いてきた
幸子はさらに逃げようとしたが、マリコに「うがっ!」と威嚇され足がすくんだ。逃げ切れる気がしない
「あ、あたしなんか食べても、おいしくないですヨ?」@幸子
なぜか、疑問形
「うが?」
マリコは、あんまり幸子が怖がるので、逆に不思議がっている
「そう怖がるな。確かに我々は警察の人間。だが、お前の違法行為の事情徴収に来たわけではない。お前に仕事を依頼に来ただけだ」@創
創は警察手帳を提示した
幸子は怪しんでそれを指で突っつく
「安心しろ、本物だ。何なら警察に電話をして照会してくれてもいい…ちょっと特別なチャンネルを使っていただくがな」@創
そこまで言われて、幸子はインテリ男性の身分を信じた
「仕事って、国のですか?あたし、女子高生ですよ」@幸子
「ああ、」@創
「ギャルっスよ?」@幸子
「判っている。今私がコントロールしている作戦は、少々変則的なチーム編成を必要としているのだ」@創
「変則って」@幸子
そりゃあ、自分が変わり者だってことは自覚している。しかし、それでも初対面の人間に”変”と判を押されるのは面白くない
「そうへそを曲げるな。FAKE NEWSの類にも立ち向かえる、柔軟な発想ができる切れ者が必要という意味だ」@創
「はぁ、」@幸子
「頭が固い学者様では歯が立たない、常識無用の難事件と心得てくれ」@創
「若い身空で事件の重要参考人とかまじかんべんなんだが」@牡丹
ファミレス
嬉野牡丹が中埜鐘と喜多野を前にぶーたれている
「東新田から電話来たときマジびびったわ。連絡先抑えられてるとか。個人情報保護法云々より、いよいよ手が後ろに回るのではないかと心配してね」@牡丹
牡丹は二人のビアジョッキにメロンソーダを注ぎ込んだ
「それが”マグカップどれがいい?”とか根ひょうきんなこと聞かれてさ、柄にもなくイチゴのマグ選んでしまったぜい」@牡丹
牡丹は二人のビアジョッキにさらにココアを注ぎ込んだ
ビアジョッキ内の液体は、もはや飲み物と言えるのか?
かなりグロテスクなビジュアルとなった
そして、その味もまた同様にグロテスクであると想定される
牡丹はアイスクリームを4つ注文して、二つのビアジョッキに2つずつ乗せた
ホット麦茶をかけて、アイスクリームを溶かす
「牡丹ちゃん。今日は反省会じゃないよね?次の仕事についてって感じで、集合かけたつもりなんだけど」@中埜鐘
「景気付けのスタミナドリンクだ。さぁ、ぐっとやってくれ、ぐーっと」@牡丹
2つのジョッキを両手でそれぞれ持ち、二人のほほに押し付ける
「重いんだからはよ」@牡丹
オッサン二人はとりあえずジョッキを受け取った
牡丹は頬づえをついてそっぽを向く
「なんかわたしらって微妙だよねぇ」@牡丹
そっぽを向いたまま、指でトントンとテーブルをたたく
「匿名結社ほど悪ではないし、警察ほど善でもない」@牡丹
「ふふっ、」@中埜鐘
怪しいオッサン中埜鐘が、少女の発言を鼻で笑った
「警察は法を遵守して現状を維持しようとしているだけさ。善とは異なると思うよ」@中埜鐘
「わたしらだけが正義の味方だとでも?」@牡丹
「正義の味方wwww」@中埜鐘
怪しいオッサンはゲラゲラと笑いだした
喜多野もスマートフォンをいじりながら、小ばかにしたようににやけている
牡丹は子供扱いされている様で、それが気に入らない
険悪な顔を隠さないバイト戦士の少女を、中埜鐘は抑える様な手の動きでなだめた
「前も言ったと思うが、悪人の敵という意味では、我々は人類にとって正義の味方さ」@中埜鐘
「なら、なぜ笑う」@牡丹
「我々はロビー団体でね。政治を影で操るのが本職なのさ」@中埜鐘
「腹黒を自覚していると?」@牡丹
「我々も必要がなければ政治に巨費を投じない。政治家なんぞに、喜んで大金を渡すものかよ。止むに止まれぬ事情があるのさ」@中埜鐘
「結果。金持ちはより肥えて、可哀想な子供たちの生活は改善されない。そういうことでしょう?」@牡丹
「弱肉強食の掟が支配するのはジャングルだけじゃないってこと」@中埜鐘
「…何度でも言ってやる。紛争地帯で銃弾に怯え、病に苦しみながらも必死に生きている女の子に対しても、その台詞、言えるのか?オッサン」@牡丹
ナーラちゃんのことだ。その可哀想な少女のこととなると、牡丹は厄介だ。感情的に過ぎる
その若さに中埜鐘はため息をついた
理不尽なんか道端にいくらでも転がっている
「そういう不幸な女の子こそ、よくわかっていると思うよ。幸せは勝ち取るものだって。日本で平和ボケした女子高生よりはね」@中埜鐘
このオッサン、ナーラちゃんのことと知って、牡丹直撃で「日本で平和ボケした女子高生」ときたもんだ
これにカチンときた牡丹は、かっとなって席を立ち立ち去ろうとする
「じゃあ、音楽性の違いってことで、さようなら。永遠に」@牡丹
つまり牡丹は、この件から手を引く。重機HI―SEASの現場運用担当を辞める、と、言っている
後先考えないJK
慌てたのは中埜鐘
「ちょ!ちょー!牡丹ちゃん!冷静になろう!短気は良くない!あのね!おじさんが悪かった!謝るから!」@中埜鐘
「中埜鐘さん。女子高生相手に取り乱すとか、締まりませぬなぁ」@喜多野
喜多野がスマートフォンを弄りながら呟いた
「五月蝿い大富豪。カッコなんか気にしていたらオジサンなんてやってられないから。いつでも土下座できる。そこだから」@中埜鐘
「はぁ、」@喜多野
喜多野は無関心にスマートフォンをいじり続けている
そのやり取り、一部始終を見ていた、バイト戦士の女子高生
牡丹はおじさん二人の情けなさにため息をついて席に戻った
自分の倍以上、人生経験があるくせに、なんという腰の砕けた体たらく
ああ、情けなや
「で、これからどーするわけ?」@牡丹
「流石牡丹ちゃん。いい質問ですなぁ」@中埜鐘#揉み手#卑屈
「…オッさんの猫なで声、気持ち悪い」@牡丹
「ちょっと、コンゴ民主共和国行かない?」@中埜鐘
「コン…??どこそれ」@牡丹
中埜鐘はスマートフォンを取り出してMapsを起動
コンゴ民主共和国の位置を指さした
ど、どこ?
えーと…あ、ああ、、
把握!!
「地球の裏側じゃないか!」@牡丹
牡丹の拳が中埜鐘の顔面にめり込んだ
「何が”ちょっと”だ。コレ…何時間飛行機に乗るんだよ。人をエコノミークラス症候群で殺す気か」@牡丹
牡丹は”コンゴ民主共和国 治安”でぐぐった
そして、彼女の拳は再び中埜鐘の顔面にめり込むことになるのだった
「いやー。女性って手より口でメンタル攻撃する印象があるけど、牡丹ちゃんは違うなー」@喜多野
喜多野はテンション低めで感心して、牡丹の正拳突きが決まった瞬間を写真に撮った
牡丹は喜多野からスマートフォンを取り上げて、設定からペッペッペと手早く端末を操作して、初期化してしまった
工場出荷状態のスマートフォンを喜多野に返す
喜多野は黙ってまっさらの端末を受け取り、Googleアカウントを入力する
「ふんだ、」@牡丹
それを見てそっぽを向く牡丹
彼女はさらにコンゴ民主共和国についてぐぐり、”入国には事前に黄熱病の予防接種を受ける必要がある”らしい記述を見つけた
「取り敢えず、行く気ゼロなので」@牡丹
「え?行かないの?」@中埜鐘
「え?なんで行くの?」@牡丹
「なんでって、ナーラちゃんに会えるよ」@中埜鐘
「え?」@牡丹
「え?なんで知らないの?友達でしょ」@中埜鐘
「なんでオッサンがナーラちゃんの個人情報知っているの?」@牡丹
「それはオジサンの、ひ・み・ちゅ」@中埜鐘
「可愛くねぇー」@牡丹
「ね、行くでしょ。ナーラちゃんに会いに」@中埜鐘
「メインの仕事は別だろ?本当に合わせてくれるのか?」@牡丹
「ああ。ボーナスの前払いって感じかな。仕事の前に半日時間を作るよ」@中埜鐘
牡丹は手で顔を抑えて「うーん」と悩む
「うーん」となやむ
「うーん」となやむ
「うーん」
いや、ナーラちゃんと会って話したいのだけれど、今が会うのに適したタイミングなのか、現在の状況下で何を話すべきなのか、お土産とかやっぱ悩ましいし、心の準備も必要だし、衣類とか気合入れるべきか大人し目で行くかいっそ和に振るか
更に顔を抑えて「うーん」と悩む
やっぱり。ナーラちゃんは可愛くて、会いたい
「…分かったわ。行くわよ。地球の裏側」@牡丹
神奈川県藤沢市
ほんのりと潮風が混じる、まったりとした空気
穏やかでありながら、駅前に一通りの店は揃っていて、住むに困らない
八重葉はここから、横浜の学校に通っているのだ
駅から少々離れた立地
3つの国道を繋ぐ県道
タクシーが一台やってくる
後部座席には嵐と八重葉
墾は女子陣営に遠慮して、前の助手席に座った
彼のそういった心配りも、八重葉には心地よかった
しかしながら強者、学校カーストの頂点に君臨しているといっても過言ではない嵐の、肩がすり合うほどの真(魔)隣は緊張する
本当は墾が嵐と自分の間にいてくれたら、一番気が楽でうれしいのだが
ピコ
嵐のスマフォにショートメッセージ
「兄さんですか?」@墾
「ならばお前に連絡をするだろう。辰だよ」@嵐
「返信するのですか?」@墾
「うむ」@嵐
「ぼくの電話番号を言うので、こっそりと送ってもらえますか?」@墾
嵐は警棒で墾の頭を突っつきながら、辰に”おkまる”と返事をした
辰から”卍”と返事が返ってくる
嵐はスマフォをしまった
「センパイ。なんで生徒会長やらないんですか?」@墾
「藪から棒だな」@嵐
「いや、中学のころ、みんなそう思っていたのですよ」@墾
「わたしはいつ死ぬかわからぬ身。故に無責任はせぬ。そういうことだ」@嵐
「実質、センパイが学校を支配していたでしょう。逆らう人いないし」@墾
「辰はよく逆らうぞ」@嵐
「中学違いましたよね?」@墾
「あの、ここから先どう行ったらいいですか?」@運転手
おっと失念していた。詳しい道順は八重葉に聞く必要がある
「八重葉」@嵐
応答がない
「八重葉?」@嵐
応答がない
「もしもーし。地球より八重葉へ」@嵐
彼女…嵐の隣に居るという緊張感で、意識がすっとびかけている
察した墾が、八重葉の頭を撫でた
それはお母さんの撫で方
八重葉の意識がにわかに戻ってくる
「はっ!わ、わたし…」@八重葉
嵐が顔を近づけてきた。怖い…
「は、はい?」@八重葉
「そろそろ君の家が近いと思うのだが、案内を頼むよ」@嵐
「あ、はい。運転手さん。右手にミニストップがあるので、そこで止まって下さい」@八重葉
ミニストップならもうそこに見えている
「コンビニの駐車場で良いですか?」@運転手
「はい」@八重葉
タクシーの運転手はバックミラーをちらりと見て、ミニストップの駐車場で車を止めた
嵐はポケットからFUJITAKA製パスケース ワープロラックス Orangeを取り出した
女子高生というよりは渋いナイスミドルが携帯していそうなアイテムだ
「いくらだ」@嵐
「四千~」@運転手
値段を聞き切る前に「判ったPASMOで払う」とパスケースを差し出した
嵐のPASMOは大抵1.5万円以上チャージされている
1万円未満ならばPASMOと決めていた
タクシーを降りた3人
墾がきょろきょろとあたりを見渡して「で、小江戸さんの家にはここからどう行くの?」と問うた
「え、えっと、」@八重葉
八重葉が指さしたのはミニストップそのもの
その建物を見ると5階建てのRC造で、2階より上が賃貸住宅、1階が駐輪所、ごみ集積所、管理人室、そしてミニストップになっている
「あら、八重葉ちゃんお帰り。早く帰してもらえたのね。あらあら珍しい。お友達?」@老婦人
ごみ集積所で作業をしていた作業服の老婦人が八重葉たちを見つけた
「ああ、ここが小江戸さんの家なんだね。で、何階?」@墾
墾は建物の2階から上を眺めた
「うふふ」@老婦人
老婦人がほほ笑む
「八重葉ちゃんのおうちは一階よ」@老婦人
「え?」@墾
墾は一階に視線を戻すが、住宅はどこにも見当たらない
「…」@八重葉
八重葉は無言でミニストップに入っていく
カウンターには年の頃四十過ぎの女性と、八重葉にそっくりの若い女性がいる
二人とも、八重葉の姿を見て驚きを隠せない
「え?八重葉…警察は?面会謝絶の筈じゃ…」若い女性が目を丸くしてつぶやく
「八重葉っ!」つづけて年配の女性が彼女の名を呼び、カウンターの向こうから出てきて八重葉に抱き着いた
「お母さん?」@墾
娘は、世界で一番大事で愛おしく、安心できる背中を抱き返した
嵐は八重葉と母親は感情が表に出過ぎて話にならないと判断し、カウンターの向こうの若い女性に話しかけた
「お仕事中に失礼。わたしは小江戸八重葉さんの一年上にして予備自衛官補の夏野嵐と申します」@嵐
若い女性は、年下ながら凛とした嵐の丁寧なあいさつに恐縮している
「八重葉さんの身内の方とお見受けしました。内々の話がございます。ここは場所が悪い」@嵐
「…あ、はい。そうですね。か、かあさん。店番は私がやるから奥に」@姉
若い女性に肩を抱かれ、八重葉の母親はカウンターの奥に消えていった。
「お二人もどうぞ」@姉
若い女性に促されて、嵐と墾も八重葉の母について行く
てっきり従業員の詰め所でもあるのかと思ったら、そこはキッチリと玄関になっていて、奥には2DKの居住空間
「狭い住処ですが、どうぞおあがりください」@母
カウンターの方では若い女性と八重葉が抱き合っている
「八重葉。そこでの話は危険が多いぞ」@八重葉
嵐にたしなめられ、八重葉は「お姉ちゃん、後でね」と手を振って小走りでやってくる
「八重葉ちゃんの家、コンビニを経営しているんだね」@墾
ダイニングキッチンのテレビ台にテレビと並んで小さな仏壇が置いてある
仏壇には男性の写真が立ててあるのだが、彼女の祖父というには若い。きっと父親だ
おそらくは複雑な事情があるのだろうと察し、墾は気まずさを回避するため、そのような言葉を選んだのだった
嵐、墾、八重葉が、つつましい四人掛けのテーブルに座る
八重葉の母はコーヒーをお盆にのせてやってきた
先ずは嵐に差し出す
彼女は小さく礼をした
次に墾にコーヒーを出す。寂し気な笑顔で
「実は夫が早くに他界しましてね。保険金を足掛かりに店の経営を始めたのです」@母
「小江戸さんに立ち入った質問をしたようです。ご容赦ください」@墾
「いいのです。きっと。知っておいていただいた方が。そう感じるのです」@母
「はぁ」墾は恐縮してしまった
「私は娘二人を立派に育てると心に決めたのです。夫を失ったときに、夫に頼りっきりであった自分を正したのです。しかし幸せに育ち過ぎた私には何もできることがなかった」@母
「あの…さぞかしご苦労されたこととお察し申し上げます」@墾
「私の親は実家に戻したがったのですが、親からは自立したかった。そこで一年間アルバイトとして経験を積んだ後、自分の店を持ったのです」@母
年頃の八重葉としては、自分の家の普通の家とは異なる事情は伏せておきたかったようで、不愉快そうに眉をひそめて三人から視線をそらしている
墾は彼女に笑顔を向けて「自慢のお母さんだね」と声をかけた
八重葉の心中を察した、快心の一撃
この一言が、またもや少女のハート射抜いてしまった
「あら、あら」@母
内気な少女の心のうちは、能天気な少年以外にはバレバレである
嵐は警棒を取り出して、墾のおでこをゴチゴチと小突いた
「ホントお前、そういうとこ何とかならぬのか?」@嵐
「え?え?ぼく、何か小江戸さんに悪いこと言いましたっけ」@墾
「逆だ戯けが!気づかぬのか!」@嵐
「気づくって…ちょ、やめていただけますか?おでこが痛むので。この体は血税で賄っておりますので」@墾
「だまらっしゃい!この朴念仁めが。昭和の家電だって斜め45度で手刀をたたき込めば直るという。お前の能天気無自覚ジゴロもこの打撃で治れ」@嵐
「ジゴロとは冤罪甚だしい。そもそも”なおる”の漢字が違うので別な手段を講じてください」@墾
「コホン、」と、嵐は咳払いをして真剣な表情を八重葉の母に向けた
「さてご母堂。小江戸家の事情はよくよく頭に刻みました。そのうえでお話を進めさせていただきたい」@嵐
「はい。よろしくお願いいたします」@母
「ご息女の八重葉さんは危険にさらされております。その状態は全く改善されておりません。また”危険”が具体的に何を示すのかは、国家の安全のためお伝えすることができません」@嵐
「なんということでしょう」@母
「警察のBrigadier-Chef、東新田創の名はご存知でしょう」@嵐
「はい」@母
「本件は彼がコントロールをしております。彼の判断により、八重葉さんには通常通りに生活をしていただきます」@嵐
「危険と隣り合わせのままですか?」@母
「はい。そこをお忘れなきよう。八重葉さんには三人の護衛がつきます」@嵐
「そのうち二人はあなたたちですか?」@母
「はい」@嵐
「学生ですよね」@母
「そうです」@嵐
「…」@母#不安
「三人のうち二人はわたくし夏野嵐と、ここにはおりませんが海神辰。これは自衛隊の人間です」@嵐
「わだつみ…聞いたことがあるような」@母
「お母さん。入学式の時”可愛い女の子が男子制服着てる”ってお母さんたちが噂にしていた。ほら」@八重葉
「え?じゃあ、三人とも学生なのですか」@母
「わたしと辰は完全に訓練された兵士です。必要なら命も投げ出す。そうでなければあの東新田創がこのシナリオを書かない」@嵐
「は、はい」@母
八重葉の母は、嵐の迫力に押し切られる形となった
「今一人はそこに座っている東新田墾。苗字から感づかれたでしょうか、Brigadier-Chefの実弟で警察の人間です」@嵐
八重葉の母は墾の顔をじっと見た
「でへへ。どうぞお気軽に”ひ・ら・く”と御呼びください」@墾
ひょろっとのんびりしていてしまりがなく、有事に頼れそうには見えない
そんな母親の不安に、嵐は感づいた
「彼には特別な装備が与えられております」@嵐
「特別な装備?」@母
「はい。実の処わたしも詳しくは存じ上げておりません。聞いた限りでは、その装備は彼にしか使えず、迫りくる脅威に対抗する切り札。垣間見た限りでは一個旅団に相当する戦力」@嵐
「まぁ、」@母
八重葉の母は墾をまじまじと眺める
とても戦場に立つような少年には見えない。その少年には、図書室や文系の部室が似合っている。いや、なぜか…そう、乳児をあやす姿が似合いそうな…
「ご母堂。いよいよ本題に入りたい」@嵐
「は、はい」@母
「日中の守りはわれら三人で鉄壁として、帰宅以降の守りに穴ができる。まず、ここをご理解いただけますでしょうか」@嵐
「はい」@母
「結構。そこで盾となって彼女を、いや、小江戸家、いやいや、国を、世界を守る者が、小江戸家に住み込む必要があるのです。」@嵐
「はぁ」@母
「家族水入らずの慎ましくも幸多き三人暮らし。余分に一名入ることは誠に心苦しい。しかしながらそこは世界の平和のためなにとぞご容赦いただきたい」@嵐
「…はい。それはもう」@母
「快諾有り難う御座います。さて、それでは早速常駐の警備員を三人の中から選択したしましょう」@嵐
「あの…はい」完全に嵐のペースで話が進んでいる
流石学校を丸ごと支配する女…
「女所帯に男は不要。仮に男を選んだとしたらBrigadier-Chefは責任を問われましょう。ならばわたし夏野嵐しかおりますまい」@嵐
嵐は八重葉と一緒に居たいあまり、完全に突貫形式の話の持って行き方をしている
「わたし、東新田くんでもいいけど…」@八重葉
おどおどと口にした八重葉の言葉が、母と嵐から瞬間的に言葉を奪う
「いや八重葉、女所帯に男はまずいぞ」@嵐
嵐にそう追及されて、八重葉は再び黙してしまった
「犬の写真だね」@墾
墾が壁を見ながらそう言った
壁には犬の写真
雑種で、家族三人は犬を中心に笑っている
「モン太っていうの。この間、死んじゃったけど」@八重葉
八重葉は寂しそう
「モン太くんはたくさんの笑顔をくれたんだね。三人を笑顔にするのが仕事だったんだね」@墾
「うん。すごい寂しがり屋なの。だから犬小屋はまだ残してあるの。49日まではいつでも家に帰ってこれるように」@八重葉
「へぇ。それならモン太くんも寂しくないね」@墾
「うん。」@八重葉
「犬小屋を見せてもらってもいいかな?」@墾
嵐が「話を逸らすな」と怒っているが気にしない
勝手口から建物の裏手、駐車場に出ると扉のすぐ右に犬小屋
「あれ?大きいね」@墾
「もらいものだから。サイズ選べなくって」@八重葉
「よいしょ。よいしょ」@墾
墾は犬小屋に潜り込んだ
「おおお、入れた」@墾
犬小屋は墾にぴったりのサイズだった
「夏野センパイ!」@墾
「なんだ!遊んでないで早く戻ってこい!」@嵐
「ぼく、この犬小屋に住みます!」@墾
「何を言っている!」@嵐
「監視任務ならぼくの”特別な装備”が最適です。それに室内にいるより、この犬小屋の方が見通しがいい」@墾
「あの…犬小屋に住むって…そこまでしていただかなくても」@母
「いえいえ、ぼくの”特別な装備”にはいろいろな効力がありまして、犬小屋を住みかとするなんて造作もないことなのです」@墾
ここで監視役を墾に決めるべく、八重葉が母の袖を引いた
「東新田くんの”特別な装備”はすごいのよ。詳しくは言えないけれど、魔法みたいだったわ」@八重葉
「そうなの?」@母
「うん。」@八重葉
「では、東新田くんにお願いしようかしら」@母
「なにぃぃぃいいいいっっ!!!!」@嵐
「え?東新田くんを選んではいけなかったかしら??」@母
「いや!その!悪くはないですが、男ですぞ」@嵐
「ええ、男手があると頼もしいわ」@母
「自分で言うのもなんですが、私とて男には引けを取りませんぞ」@嵐
「でも、女の子にはお願いしづらいこともあるし」@母
「何でも言ってください!何でもできます!」@嵐
ここで母は娘の表情を覗いた。完全に墾が居てくれる方向で、脳内がお花畑になっている
娘の春は、母として応援したいところ
「あの、やっぱり東新田くんで、」@母
「ちくしょーーーーーーおおおおおっっ!!!!」@嵐
鬼の風紀委員の風紀委員らしからぬ口汚い雄たけびが藤沢の星々瞬く夜空を貫いた
墾は先ず「子供出来て長い髪バッサリと切って、夫の年収も700万円あって、あんまり人生に心配なくて、無意味に四六時中ワクワクしているおばちゃん」を思い浮かべた。
で、髪の質感を固めにして、首から下に高校生男子の身体をくっつけた。
そんなニコイチキャラです。
因みに、ハッカー幸子の制服はこの男子制服を女子向けに仕立て直したもの。
幸子のかばんも二回り小型に作り直している。
幸子が身につけているもの、持ち物は学校の指定品のフルカスタマイズで、全身で15万円くらいになるって設定。
来週で学園モノの舞台を作り終わって、ひとまず終わり。
次の十話の一話目の伏線。入ったら入れとこう。




