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第4話「4月30日 AM0:54~」

今回は前半というか大部分、テンプレ展開が続きます。

テンプレ嫌いでストーリーかっ飛ばし気味なのに、この世界電波塔は地味にテンプレもやります。

ギャグとかやる気はありません。後々必要だからコツコツと人物描写を積み上げているのです。

今回の十話の次の十話で学園物やりたいわけですが、そこで「アレ?こんなキャラだっけ??」という違和感なくしたいんです。

主人公が東新田墾で、ヒロインが海神辰。そうなりますので。

あと、今回時間が無くて文章のチェックが甘いです。

世界電波塔

─ 四人の転校生 ─

第4話「4月30日 AM0:54~」


山口県、長門市駅、北

警察(ラ・インビジブル・ポリス)は、八重葉(やえば)救出にあたって、このロケーションに建つビルの1フロアをおさえた

高校生の3人

夏野嵐(なつのあらし)東新田墾(ひがしにったひらく)そして海神辰(わだつみたつ)は前日(29日)に長野県入りし、長門駅近くの宿で一泊

深夜

約束のAM1:00の5分前を狙って、1フロアだけ煌々と灯りがともっているそのビルに向かった

24時間体制で周囲を監視しているのであろう、

「うが、」

呼び出してもいないのに、マリコが3人を出迎えにビルから出てきた

「あ。マリコさん。お疲れ様です」@(ひらく)

「え?」@(あらし)

「はい?」@(ひらく)

「マリコって犬ではなかったのか」@(あらし)

「センパイ。失礼ですよ」@(ひらく)

「いや。誠に失敬」#恐縮@(あらし)

「うーが、」

「で、なんだって?」@(あらし)

(あらし)はマリコ語を解せず変顔になっている

「うーが!」

身振り手振りを加えて必死に意思を伝えようとする

「うん。わからん」#確信@(あらし)

「うーがっ!」

マリコは今にも怒り出しそうだ

「一列に並べって言いたいんじゃないかな?」@(ひらく)

「東新田くんさ。なに?わかって言っているんだろうねキミ」@(たつ)

「”ひ・ら・く”って呼んでほしいな」@(ひらく)

「この呑気者めが話をそらしよって。分るのか?適当を言っているのか?そこをはっきりさせろ」@(あらし)

「多少わかる程度だよ。マリコさんは兄さんといつも一緒で、ボクはみんなよりは多少、マリコさんの言葉を聞きなれているから」@(ひらく)

「え?いや。慣れればわかるの?これ」@(たつ)

「どうやらそのようだぞ」@(あらし)

三人は口論をしながらも一列に並んだわけだが

それであっていた

マリコの機嫌がなおった

「うがっ」

「え?今度はなんだって?」@(あらし)

「すンませんマリコさん。ジェスチャー入れてください」@(たつ)

「うがっ」

バンザイして見せた

「手を挙げろってこと?」@(たつ)

「分かった!身体検査だ!」@(あらし)

「あーっ!それだよ、嵐ちゃん」@(たつ)

マリコは(ひらく)の手を引いて自分の後ろに回した

どうやら弟君は身体検査なしの顔パスということらしい

(あらし)(たつ)はマリコの前に並んで立った

特に(あらし)は大の字に手足を広げて「日本の風紀を預かるこの身、どれだけ叩いてもホコリひとつ立たないわ!」と豪語する

そんな彼女の全身を、女子の形態をした猛獣マリコがクンクンと嗅ぎまわる

「匂いなの!」@(たつ)

「やっぱり犬か!!」@(あらし)

「うが!」

(あらし)のスカートのホルダー。隠す様子もなく凶器と思わしき警棒が見つかった

「うがが」

これはなんだ…と聞いているに違いない

「ああ。それは便利な棒、二本セットだ」@(あらし)

(あらし)は背を高くして答える

「わたしも風紀委員の激務に肩がこってな。便利に使っている」@(あらし)

便利棒…

更に匂いを嗅ぎまくるマリコ。猛獣曰くスマートフォンが怪しいらしい

(あらし)のスマートフォンを調べると、おびただしい量の八重葉(やえば)の写真、動画、音声ファイルが見つかった

しかもカメラアングル的に盗撮っぽい

それらは(ひらく)にも見えており、少年はドン引きしている

「うがが」

これはなんだ…と聞いているに違いない

そうか”うがが”って、そういう意味か

(あらし)(たつ)は理解した

どうやら状況と「うが」の言い方で意味が決まる様だ。だんだんコツが呑み込めてきた

これはきっとバウリンガルと同じ手口でウガリンガルが作れるに違いない

話を(あらし)に戻す

「見て分からんのか?」@(あらし)

マリコはもとより、(ひらく)も答えに窮する

「いや…その…ストーカー的な空気はビシビシ伝わってくるのですが、これ、風紀的に正当化されるのですか?」@(ひらく)

「喝!!!!」@(あらし)

(あらし)の一喝に(ひらく)は首をすくめて震え上がった

「お前と言う奴は全く。この呑気者めが!わたしに八重葉から目を放せと申すか!この頓珍漢!もし八重葉が犬に袖を引っ張られて驚いたり、晴天の雷に怯えたり、木枯らしにスカートを舞い上げられたり、預かった赤子に泣かれたり、小枝に巣を張る蜘蛛に…」@(あらし)

言っている文言がどうのと言うより、(ひらく)はまくしたてる(あらし)の迫力に気おされた

「嵐ちゃん。その辺にしときなさいよ」@(たつ)

(あらし)の相手の頭を押しつぶすような視線が(ひらく)

(ひらく)、頭を低く

(あらし)のため息

「むぅ。わたしとしたことが。少々熱くなってしまったようだ」@(あらし)

「嵐ちゃん。なんか、注目するとこちんまくない?だから八重葉ちゃん、誘拐されちゃったんじゃない」@(たつ)

「いや、それはだな。そういうことがあったら八重葉が可愛くて見逃せぬというかだな。うん。そうだな。まいった」#唸る@(あらし)

「とりあえずそのスマフォは辛いから、早く仕舞いなさいよ」@(たつ)

「ちょいと一本取ったからと言って、辛いとはなんという言い草か」@(あらし)

文句を言いながらもスマートフォンを仕舞った

証拠隠滅的な

「うが」

マリコ的にはもう一度スマートフォンを出すよう求めたつもりだったのだが、意思が伝わっていないのか、無視されているのか、(あらし)は背を高くして立っているのみ

「うが」

マリコはしばし迷った後、(あらし)の額に”検査済”のハンコを押した

次は(たつ)の番である

もう、その立ち姿が愛らしくて、(ひらく)はムラムラしていた

その小動物の全身を嗅ぎまわり嗅覚で検査をするマリコ

その様子は可愛い小さなマメシバちゃんが雌豹にくんくんペロペロされているように見える

可愛い(たつ)きゅんが、猛獣マリコさんに食べられてしまうのではないかと気が気ではない。

ハラハラする。

「うが」

(たつ)が背中に背負っているホルダー

そこに一尺四寸余りのステンレス製鉄扇が2つ収納されている

「うが」

その一本を手に取る。(たつ)は黙ってマリコに取らせた

重い

扇部は無く、14枚のステンレス板を束ねたものでかなり重い

両端の板は特に分厚く頑丈

中の12枚は薄手で、(たつ)の名にふさわしく滝をさかのぼる力強い鯉の装飾がなされている

ブンっ

試しに振ってみると、その重量が腕に来る。野獣系で筋力のあるマリコでさえ持て余す質量

あまりの重さに目を丸くするマリコを、(たつ)はクスクスと笑って見ている

その鉄扇を扱えるのは自分だけだと言わんばかりに

(たつ)に鉄扇を返すと、彼は軽々と鉄板の束を振り回して背中のホルスターにしまった

それを見て悔しそうなマリコ

(たつ)の額にも”検査済”のハンコを押した

「うーが、」

手招きするマリコの後について、学生三人、階段を上がる

マリコの後に続くのは青少年、東新田墾(ひがしにったひらく)

彼はマリコのすぐ後ろに位置していたのだが、思うところがあって二段、三段とやや距離を開けた

「やはり!」@(ひらく)

少年は驚愕した

階段において後ろに下がると言うことは即ち、視線が下がることを意味する

視線が下がると世界は一変する

それまで、少年の眼前にあったのはせいぜいマリコの背中だった

今は違う!

臀部が!女人の臀部が目の前におわすのだ!!

鍛え上げられた尻はだらしなく垂れ下がっていたりなんかはしない

ムッチリと上に持ち上がっている

それでいて柔らかそうな曲線

大人のボリューム

それが階段を一段上がるたびに艶めかしく揺れるのだ

これ以上の眼福があろうか?

少年-東新田墾(ひがしにったひらく)は感動していた。感動の涙を滝のように流していた

マリコの後ろを歩く仮の体は涙を流すことはできない。しかし、死角空間(イグノアドエスパス)に居る少年の本体は間違い無く涙に濡れており、感動に打ち震えていた

(ひらく)の後ろに続くのは、鬼の風紀委員-夏野嵐(なつのあらし)

少年の人目をはばからない思春期の烈情に呆れ返っていた

スルスルと警棒を伸ばして、時と場所を選ばず色香に盛る少年の脳天に一撃気合を入れた

カッコーン

えらくいい金属音がした

頭蓋骨らしからぬ、金属を殴ったような手応え

(たつ)もその音に違和感を感じ「そんなに思い切り叩いたの」と風紀委員に訪ねた

「いやまさか、軽く叩いた程度だ」@(あらし)

風紀委員は少年の頭部に疑惑の視線を送りながら返答

その会話は(ひらく)の耳の高性能マイクに拾われていた

(ひらく)のため息

この二人には隠しておく必要はないんだよね。この体の秘密。もう、一緒に戦う仲間だから

ただの呑気な少年として接してほしい。その思いが己が正体の白状を思いとどまらせる

「そのうちわかるよ」@(ひらく)

わずかなかすれ声ではあるが、思わず口から出ていた

「え?なに?なんて言ったの??」@(たつ)

(たつ)が可愛らしい顔を近づけてくる

可愛い!

もういっそ、その小さな唇を奪ってやろうかとも思う

「東新田くん。あのね。何を考えているのか詳しくは知らない。ただね、君。一回殺しておく」@(たつ)

気がついたら、この小動物に鉄扇で殴打されていた

またしてもキコーンと甲高い金属音

(ひらく)の頭は階段の壁にバキリとめり込んだ

手足を突っ張って頭を引き抜こうとするのだが、かなりガッチリと頭が食い込んでいて容易には引き抜けない

彼の前を(たつ)(あらし)が通り過ぎて行く

永遠の風紀委員のゴキブリを見るような目

「過去の優良生徒が今は見る影もないな」@(あらし)

(あらし)は腰のホルスターから警棒を抜き、醜態を晒した少年に向かって剛に突き出した

「ひぃぃ」@(ひらく)

また小突かれるのか?

逃げることもできず、ひたすら怯える少年

ボコン!!

少年に向かって突き出された警棒はしかし、彼の頭部周辺の壁に亀裂を入れた

これで(ひらく)の頭を固定する力が弱まり、壁から頭を引き抜くことができた

「センパイ、有り難うございました」@(ひらく)

頼もしい背中に一礼する

「早く来い。もう、約束の時間だ」@(あらし)

確かに、集合時間である午前一時を2分まわっている

兄は時間にうるさい。(ひらく)は足早に階段を上った

ただし、位置は(あらし)の三段後ろ。女性の鍛え上げた臀部がよく拝める立ち位置だ


警察(ラ・インビジブル・ポリス)の拠点であるそのビルの一フロアに入り、学生の三人は面食らった

壮絶に物々しい

ドアをくぐって右手。フロアの三分の一はラックが設置され、アサルトライフルなどの兵装が多数収納されている

「嵐ちゃん」@(たつ)

小動物は多数の実銃に血の匂いを感じ、年上の妹弟子の名を呼んだ

「私たちの将来の仕事道具だ、見慣れておけ」@(あらし)

「…うん」@(たつ)

左手に六人がけ程度のテーブルがあり、そこが作戦室になっている

学生三人はそのテーブルに通された

すでにテーブルについていた警察官が、三人にそれぞれIDカードを配った

三人はそれを首から下げた

「カードに記載されている10桁のIDでログインして下さい。パスワードの初期値はIDと同じですので、先ずはパスワードの変更を行って下さい」@警察官

テーブルには6台のノートPCが設置されている

好きな席に座って良いらしいが、学生三人は末席を選んだ

恐らく85インチモニタが据えられている方が正面に違いないと予想し、モニタから遠い席から並んで座った

間も無く(ひらく)の兄、東新田創(ひがしにったはじめ)がやって来た

右足を引きずりながら

そして学生三人を見るなり「ほう、将軍の席に座ったな」と真顔で言った

慌てたのは学生で、上座が逆だったかとモニタに近い席に座りなおそうとする

(はじめ)はそれを手で制する

「からかっただけだ、何処でもいいよ」@(はじめ)

警察のエリートは席に座りそして、マリコを膝の上に座らせた

「兄さん?」@(ひらく)

弟は兄に尋ねたいことがあったのだが、それは黙殺された

兄は話を続ける

「それにしても、二身一心流(にしんいっしんりゅう)本家のご子息両名とこの作戦を共にすることになろうとはね。御父上によろしく頼まれたよ。やはり将来は自衛隊に入隊するのかい?」@(はじめ)

(あらし)(たつ)は背筋を伸ばして、(はじめ)に…膝の上に女性を乗せ、それが当たり前のようにしているエリートに、まっすぐな視線を送った

それが、質問に対する答えだった

(あらし)は常にだが、斜めに構えている(たつ)も、お家の事情に触れられては、背筋を伸ばさざるを得ない

家紋を背負ったなら、些細な失態も許されない

二人は間違いなく、名家の子供であった

無言の意味を察することができない(はじめ)ではない

無言は千の言葉よりも物を言っている

二人の姿勢に現れる名家の覚悟に感じ入った(はじめ)は深く頷き、そして膝の上のマリコをキュっと抱きしめた

マリコは何かを察知したような表情で、PCのキーボードを打鍵する

唖然とする三人の学生

「兄さん。なんで自分で直接パソコンを操作しないの?」@(ひらく)

「ん?しておるでわないか」@(はじめ)

「え?マリコさんにやらせているでしょ?」@(はじめ)

「今、兄さんとマリコは一心同体モードなのだ。見てわからぬのか?マリコの手は兄の手だ」@(はじめ)

「え?えーと…一心同……スーパーロボットでお馴染みの、合体して秘めたる力解放…みたいなものかい?」@(ひらく)

「なんだその子供だましのSFは。飼い主とペットの通常の連係プレイに疑問符を打つ意図が知れない」@(はじめ)

ずしーん、

学生時代、兄は潔癖な秀才であり、東新田家の未来であり、小学生だった弟にとって憧れだった

それがどこで道を踏み外したのか、いや、実は元からそうだったのか、女性をペット呼ばわり

マリコさん

あなたが高潔な兄をこのようにしてしまったのですか?

「マリコさん。恨みますよ」@(ひらく)

「無駄口はここまでだ、時間がない。三人ともPCの画面を見ろ。作戦を説明する」@(はじめ)

LiveMeeting

画面にはPowerPointドキュメントが表示されている

韓国と北朝鮮周辺の地図だ

「本日02:00(まるふたまるまる)、車で油谷港へ移動。02:30、乗合釣り船で響灘に向かう。03:50、海自が内々に導入した某多用途防衛型空母に搭乗。04:00、輸送ヘリコプターMCH-101で韓国の仁川へ出立。空では4機のF-35Bが護衛につく。06:10、”特殊な船”で北朝鮮の海州へ潜入。07:30、潜入捜査官と合流。18:45、陽が沈むのを待って作戦決行だ。小江戸八重葉救出作戦の作戦時間は7分30秒。詳細は現地で説明する。現地に着いてから決行までの11時間15分は休憩時間ではない。みっちりリハーサルをする。覚悟をしておけ」@(はじめ)

「”特殊な船”とは何のことだ」@(あらし)

「文字通りだ。見ればわかる」@(はじめ)

一通りの説明があったあと、学生三人にいかにもゴツくてタフそうな腕時計が渡された

「GPS腕時計だ。時刻は常に正確で合わせる必要がない。そして自分の位置を正確に確認できる。」@(はじめ)

警察官から簡単な使い方の説明を受ける

(ひらく)は腕時計を左腕、手の甲側に文字盤を向けてまいた

(あらし)(たつ)は同じ左腕だが、文字盤を手のひら側に向けてまいた

(たつ)が「国境を超えた作戦…普通の警察ではないですね」と計画書を見ながら唸る

「フン、いい質問だ。我々は国際的な組織で所属は東アジア支部だ。私を含む人員の半数近くは日本警察と自衛隊からの出向だがな」@(はじめ)

挿絵(By みてみん)

「自衛隊からも、か」@(あらし)

(はじめ)は偉そうな指先一本だけの動きで部下の警察官に指示を出し、89式小銃を二丁持ってこさせた

自動小銃は(あらし)(たつ)に渡された

「飛び級の実践…と、言うことになる。流石はニ身一心流の直系というべきかな?」@(はじめ)

二人は手にした瞬間こそ戸惑ったが、なれた手付きで銃の点検をしている

これを見て、銃を渡した警察官が感心している。彼は実のところ二人に銃を渡すのは不安で、最低限の使い方は教えなければならないとセレクターレバーを指さしかけていた

(はじめ)が「ブートキャンプの必要はなさそうだ」と皮肉を言う

(あらし)は皮肉にしても過ぎた評価を嫌って「座学の範疇を出ぬがな」と首をすくめた

(たつ)は空薬莢受けを装着し、人のいない壁際の棚に向かって銃を構えた

「ところで、東新田くん…(ひらく)くんは丸腰なんですか?」@(たつ)

(ひらく)の兄、(はじめ)は一瞬唇をかみしめて視線を外した後、また、元の高飛車な彼に戻り「ああ、墾に銃は必要ない」と答えた

「彼や八重葉のような市民を守るのが我が家計のお役目だ」@(あらし)

(あらし)は銃をどこに置いたものかと困りながら、(たつ)をいさめる

(たつ)は妹弟子に教育されたのが悔しくて「東新田くんだって銃を持って自衛できるなら、その方が万全だ」と反発した

しかしやはり年上の風紀委員の方が格が上なもので、すぐさま「我々が市民に”君たちは銃を持たなくていい”と保証しないでどうする?それこそマスシューティングの引き金になるぞ、USAの様にな」と言い負かされてしまった

(あらし)が置き場に困っているのを見て、警官が銃を受け取りに来た

(たつ)(あらし)を睨みつけながら銃を渡した

彼女は恐れ入った表情で警官に礼をしたが、その警官は自衛隊からの出向

数年後、彼女が自分の上官になることは分かっている

(あらし)に敬礼を返した

「辰きゅんが僕を守ってくれるんだね」と、腰をくねらせながら(ひらく)が、その小動物のような少年にすり寄ってきた

愛くるしいその少年は「ああ、うん、」と(ひらく)の頬に手を突っ張って、ウザイ友情表現をあしらった

(あらし)が警棒でゴチゴチと(ひらく)の頭をたたく

「作戦を前に緊張感のない。お前、本当に来なくていいぞ。鉄のように固い頭蓋骨しおって」@(ひらく)

「ぅが、」

マリコが振り下ろされた警棒をかすめ取り、折りたたんで風紀委員に投げ返した

気が付けば(はじめ)は既に席を立ち背広の襟を正している

「いや、(ひらく)は今回の作戦に必須だ。必ず連れて行く」@(はじめ)

武器も持たない、頭蓋骨が固いだけの少年が何故荒事に必須の要員なのか?

未来の自衛隊員二人の視線が弟に集まる

弟は緊張感のかけらもなく、腰をくねらせて照れくさそうにしている

「時間だ。移動するぞ」@(はじめ)

GPS腕時計で時間を確認するとAM01:53

7分後に作戦が始まる

学生三人は覚悟を決めて、その高圧的なエリートの後に続いた


ビルの外に出て、6人、歩道を歩く。右足を引きずる(はじめ)に速度を合わせて

6人、

(はじめ)

マリコ

(あらし)

(ひらく)

(たつ)

そして、荷物持ちの警官一人だ

(たつ)がGPS腕時計の右下のボタンを押すと、表示が切り替わる

「嵐ちゃん。コレ、すごいよ」@(たつ)

画面には小さな数字が6コ表示されている

どうやら今回の作戦のメンバーの現在位置が確認できるらしい

真ん中が自分を示す数字

「俺は…”10”か。で、嵐ちゃんが”9”…えーっ!俺の方が兄弟子なのにぃー」@(たつ)

「ただの識別記号で、上も下もない」@(あらし)

「えーっ。でも創さんが”1”だよ?あーっ!東新田くんが”3”!?」@(たつ)

「辰.見苦しいぞ」@(あらし)

同門の幼馴染だけあって、(あらし)(たつ)は本当に仲がいい

4、5、6、7の数字が固まって後方から近づいてくる。この速さ、車だ

車道

6人を20m追い越して、一台のハイエースワゴンGLが停止した

「10人乗りか…お前の”10”が最後のようだな」@(あらし)

(あらし)が無表情のまま(たつ)をからかう

小動物は単純にむくれてくれた。可愛らしいものだ

「まぁ、トリだと思えば”10”も格がある」@(あらし)

小動物は単純に笑顔を見せた。可愛らしいものだ

そんな小動物に見とれる東新田(ひがしにった)

ドゴーーーーンン!!!!!!!!!!

突然、ハイエースワゴンGLが爆発炎上した

対戦車ミサイルだ

このハイエースワゴンGLは改造をされており、対物ライフルでもその装甲は貫通出来ない

それを知っての頭上からの対戦車ミサイルだ

(はじめ)とマリコ、そして荷物持ちの警官はワゴンの近くまで来ていたが、ミサイルの風切り音に気付いた野獣マリコが素早く二人を地面に引き倒していた

呆然とする学生三人

「伏せろ!!」(はじめ)の怒声

(あらし)(たつ)は日ごろの訓練に由来する条件反射で地面に伏せた

その姿勢だと、顔の前に腕時計をはめた腕がくる

腕時計が目に入る

GPS腕時計の表示から、4、5、6、7の数字が消えている

なんの知識がなくてもわかる、警察官が四人死んだのだ

「くっそ!」@(たつ)

(たつ)が毒づく

しかし、実のところ、悔しがっている暇なんてなかった

鳴り響く銃声

学生三人の後方30メートルにセダンが止まっていて、ドアを開け放ち、ドアを盾にしてバトルライフルをぶっ放してきている

完全に頭を押さえられた。弾幕が途切れるのを待つしかない。それまで、弾が当たらないことを祈るしかない

銃弾の内の一発が、(たつ)の眉間めがけて飛んできた

ガキン!!

銃弾は、(ひらく)が素手で受け止めてしまった

素手で空飛ぶ銃弾を握りつぶせる人間なんていない

助けてもらっておいてその様なことを思うのは失敬だが、(たつ)(ひらく)に対して、常識を逸脱した違和感しか感じない

「東新田くん…君はいったい…」@(たつ)

「”ひ・ら・く”って、呼んで欲しいな」@(ひらく)

少年は、寂し気な微笑みを浮かべると、しゃがんだ姿勢のまま手の中の7.62mm銃弾を投げ返した

猛然と少年の腕が風を切り裂く音がした

低く飛ぶ銃弾は、車のドアの下をくぐって、敵兵の足首を粉砕した

「ぎゃあああああっっ!!」

激痛に転げまわる

弾幕が途切れた

「よく判らぬが、君に武器は必要ないということは理解した」@(あらし)

(あらし)が姿勢を低くしたまま膝を立てる

「辰、やるぞ」@(あらし)

(たつ)は背負った鉄扇を引き抜き、バサっと開いた

力強く滝を上る鯉が二つ

「この双竜は末期(まつご)の景色!!」@(たつ)

敵車両に向かって(たつ)の小さな体が疾走する

銃弾が彼に集中する

小柄な少年の身体は極限まで鍛え上げられている

細い体躯は、無駄な筋肉すらそぎ落とした結果

戦闘に必要なモノだけで構成された、戦闘に特化した肉体

右に左に、高速で振り回される鉄扇が銃弾を薙ぎ払う

迷わず敵車両に突進する

「クソっ!!」

敵兵は後退しながら手榴弾を投げた

なんと無駄な

(たつ)は鉄扇を畳んで棒状にし、神速の一歩で、それが爆発する前に突き返した

手榴弾はむしろ敵兵の近くで爆発した

敵兵の一人が吹き飛ばされ、一人は吹き飛ばされた味方を盾にすることで被害を免れた

だが、すぐにあの恐るべき少年が隣接してくる

敵兵はバトルライフルを横に捨てて拳銃を構え…

「我が二刀を見たが運の尽き。お覚悟なされよ」@(あらし)

既に鬼の風紀委員が目の前に立っている

彼女が警棒を振る腕の動きなんか、全く目に見えなかった

敵兵は意識を失い、すとんと地面に落ちた

残り一人

(ひらく)が銃弾を素手で受け止めながら、へらへらと近付いて来る

残り一人の敵兵は、半ばパニック状態になり、汚らしい単語をわめき散らかしながら引き金を引き続けている

「キサマ…、うちの模範学生に悪い言葉を教えないでくれ給えよ」@(あらし)

風紀委員に背後を取られた

敵はバトルライフルの銃口を後ろに向けてめくら撃ち

キンキン、カンコンと金属音が聞こえてくる

どうやらあの可愛い少年の鉄扇に全て跳ね返されている様だ

敵兵は、恐怖に唇を震わせる

引き金に手ごたえがない。銃は火を噴かない。銃弾が尽きたのだ

敵兵はバトルライフルを後方に投げながら、車の運転席に飛び込んだ

「轢き殺してやる!」

アクセルペダルを踏み込む

しかし車はピクリとも動かない

見れば電源がOFFになって居る

ばかな!電源は入れっぱなしだった筈だ

バッテリーも満充電できた

誰が…誰??

ルームミラーに人が映っている

後部座席に誰かいる

自分の真後ろだ

敵兵は振り向きざま拳銃を運転席シートの背もたれにあてがい、引き金を引いた

銃弾は背もたれを貫通し、斜めに回転をしながら飛ぶ

やったか?

敵兵がシートの向こうを確認する

「ばかな!」

誰もいない

そんなはずはない

ルームミラーで見た、確かに誰かが居た

「面白い遊びをしているな」@(あらし)

背筋が凍った

助手席から聞こえてきた少女の声が、これほどまでに恐ろしいなんて

銃を持つ手が震えている

恐怖に固まった身体。これを動かせるものはなんだ?

恐怖に勝る、死をも恐れぬ信心だ

「核無き世界のために!!」

敵兵は、そう叫んで銃口を助手席側に向けた

銃口の前には風紀委員が座っている

向けられた銃口を、さして恐れもせずに

「その銃には、弾が一発だけ残っている。数えた」@(あらし)

敵兵の手が止まった

「キサマの敵は何人だ?たった一発残った弾丸。狙いはわたしでよいのか?」@(あらし)

半ば狂人と化していた敵兵が、ヌラヌラとどぶ臭い絶望に侵されてゆく

彼は、拳銃の銃口を口にくわえた

そう、敗北は確定している。残されたたった一発の銃弾でできること、それは自分の口封じだ

「正解だが…あまりテロリストの教科書通りに行動されると、逆に調子が狂う」@(あらし)

風紀委員は敵兵が引き金を引く前に、警棒で眉間を痛打し、敵兵の意識を奪った

学生三人で敵兵を打ち倒してしまった

無論、そんじょそこらの学生ではないが…

燃えるハイエースワゴンGLの前、(はじめ)、マリコ、そして”8番”を与えられた警官

このNo.8の表情の変化を、(はじめ)は見逃さなかった

右のポケットをちらりと見た、その表情

事態に呆然とするNo.8の隙をついて、(はじめ)はNo.8の右ポケットから何かを抜き取った

「警察が匿名結社に潜入可能ならば、逆もまた然り」@(はじめ)

(はじめ)の手にあるものは、グリップ状のスイッチ

No.8はうろたえて、担いでいたバッグを地面に落とし、「返せ」と叫んで(はじめ)に組みかかった

「フン、下種が」@(はじめ)

(はじめ)はNo.8を左足で蹴り飛ばし、彼から奪い取ったスイッチを押した

ドゴオオオオッッ!!!!

No.8は爆発四散した

No.8は、敵の切り札だったのだ

襲撃が失敗に終わったときは、ハイエースワゴンGLの中で全員を道連れに自爆をする

そういう役割であった

(はじめ)は無言で手にしていたスイッチを火にくべた

「で、どうするのだ?東新田兄」@(あらし)

「どうするとはどういう意味だ?」@(はじめ)

「作戦のメンバーを半分失った」@(あらし)

「だから、なんだ」@(はじめ)

「八重葉救出作戦は仕切り直しか?と、聞いている」@(あらし)

(はじめ)が敵車両に右足を引きずりながら歩み寄ってくる

車の助手席には(あらし)が座っている

「学生諸君。君たちにはまだ早いが、ここからは応用編だ。必要ならば、メモに取っておきたまえ」@(はじめ)

そう言って(はじめ)は、まだ息がある4人の敵兵のうち3人を撃ち殺してしまった

生かされているのは、意識がある敵兵。

最初に(ひらく)が足首をつぶした男だ

その男の口に、(ひらく)はスマートフォンをあてがった

「おい。お前たちが乗ってきた電気自動車も、原子力で作った電気で動いている。お前たちが謳う非核化は絵空事だな。人類の社会は核なしでは成り立たない。お前たちが核の代替品を用意できるのか?え?能無しども」@(はじめ)

警察のエリートはそういったいくつもの言葉を並べて、彼らの理想を罵った

最初は悔しそうに押し黙っていた敵兵も、思いついたカ所から反論をし始めた

ひとしきり話させた後──「十分だ」@(はじめ)

最後の敵兵も、あっさり撃ち殺してしまった

エリートは敵車両の運転席に滑り込み、車の電源を入れた。

そして、助手席側のコンソールから音声通話のアプリを起動した

”通話記録”に一番多くログが残っている”00aaa”という連絡先

「おっと、」@(はじめ)

いったん通話アプリを閉じて、設定画面でアカウントを確認する

”rk3066”

再び通話アプリを起動し、”00aaa”をコールした

回線がつながるが、何の応答もない

(はじめ)はスマートフォンをタップして文字列を入力、コンソールのマイクのあたりに向けた

『赤緑青 rk3066』

スマートフォンがさっき殺した敵兵と同じ声で話し出した

(はじめ)は敵兵を煽ってしゃべらせることで、彼の声をサンプリングしていたのだ

『群青色 00aaa(ダブルオートリプルエー)

やや間があり、音声通話アプリから返事が返ってくる

『キー…デイ』

(はじめ)はスマートフォンをタップし、文字を入力する。そしてスマートフォンは敵兵の声で言葉を発する

『今、人は刺激された』

通話アプリから『0-10-3』という返事があり、回線はそれっきり遮断されてしまった

「暗号がこの四日変わっていなければ、これでいいはずだ」@(はじめ)

助手席でぼんやりと眺めていた(あらし)が「何をしたのだ?」と、高圧的なエリートにクエスチョンマークを投げた

(はじめ)は彼女を無視して「全員車に乗れ!」と高圧的に手招きをした

敵車両の後部座席には、(ひらく)(たつ)そしてマリコが運んできたバッグが座っている

助手席には風紀委員

マリコはボンネットの上に胡坐をかいた

彼女はFuryganのジャケットを肩に引っ掛けている

風になびき、視界を遮るFuryganのジャケット

「運転しにくくないのですか?」@(あらし)

(あらし)は質問や確認というよりは、呆れてそう指摘した

「お前は車をぬいぐるみなどで飾らない派か?」@(はじめ)

敵の襲撃があり、予定は15分遅れ。(はじめ)はアクセルペダルを床にあたるまで踏みつけた

「そんなに急いで何処に行く気だ?東新田兄、」@(あらし)

「北朝鮮だ」@(はじめ)

「主力の警察官を欠き、真っ当な戦闘員はマリコさんだけ。後は頭でっかちと学生三人。これで本当に勝負出来るとでも?」@(あらし)

高速コーナーをドリフトで抜けて行く

遠心力で(たつ)の体が斜めになり、(ひらく)と肩が接触する

(ひらく)は喜びに打ち震え「兄さん!もっと横Gを!!」と要求した

(はじめ)(あらし)に問う…「八重葉を諦めるのか」

「愚問だな」@(あらし)

「…」@(はじめ)

「わたし一人でも助けに行く」@(あらし)

「フン。お前こそ、私に愚問を申したではないか」@(はじめ)

「大人は割に合うか勘定をする。間尺に会わなければ尻尾を巻く。真意を問いただしたかった」@(あらし)

「私に必要な手駒は初めからマリコと墾だけだ。あの程度の強襲で命を落とす役立たずなど足手纏いに過ぎない。上に言われてメンバーに入れたが、死んでくれてスッキリした」@(はじめ)

(あらし)の正義はそのような物言いを強烈に嫌った

しかし、その場はあえて押し黙った

私のイラストはぶっちゃけいたずら書きで、作画ミスはつきもの。

気にしていない…と、言いたいが、男キャラの時は気になります。

眼鏡のつるの線足りないとか、ネクタイ廻りとか。

と、言っても。一度引いた線はなおしませんが。

次回はマリコ。6話がスーダン…スーダンは描いたってだけで、6話にするかは未定。

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