第四話 危機
二年目になった。
葛城は怪我をした。オープン戦でのこと。
『投手第四球目を投げました。
あ〜っと葛城の手に当たりました、大丈夫でしょうか?』
左手の薬指の骨折であった。
さらに復帰するとすぐにこんどは右肩痛にみまわれた。
そしてその怪我によって1年間を棒にふってしまったのである。
しかし同僚の山村は違った。
彼は新監督の沢木に認められると、開幕からローテーション入りし、9勝を挙げたのである。
葛城は劣等感を感じていた。
確かに入団の時から期待されていたのは山村のほうである。しかし中学、高校とずっと同じグラウンドに立って一緒にプレーしてきたチームメイトに先を越された。それなのに俺は怪我をしてこんなところでくすぶっている。そんな自分が嫌になり自暴自棄になっていた。
そのまま3年目もおえた。
山村は完全にローテーションの軸となり12勝を挙げていた。
その年の契約更改。
「葛城君。今年もさっぱりだったね。」
「は はぁ〜」
「うちとしてもいつまでも二軍暮しの君にタダ飯を食わせてやるわけにはいかないんだよ。」
「?? ・・・・・
もしかして?」
「そのもしかしてだよ。」
「くっクビですか?」
「ああ、クビだ。」
「えっ え〜〜」
「しかし私も鬼じゃない。今年一年を期限としよう。今年もダメだったらクビだ。」
『クビ』
確かに葛城は三年間二軍暮しであったが、まだ21歳である。
「はあ〜 辞めたらどうしようか」
とか少し考えるもすぐに打ち消す。
「いや 今年活躍して何とか残ろう」
しかし彼には相談する相手がいなかったた。
家族には勘当された。
家族は高校卒業後に大学に進学することを希望していたが葛城は無理矢理プロ入りしたのだった。
今更家族には相談できない。
ただ一人葛城には相談相手がいた。
「山村か」




