第三話 一年目
葛城忠雄と山村浩二は中学からのチームメイトである。中学時代には全国制覇も経験した。
〜二月 高知 土佐キャンプ〜
ついにプロ野球生活の第一歩を踏み出したのであった。
「あ〜 やっと練習終了か。やっぱプロの練習はキツイな」こう言うのは山村である。
俺はそこまでキツイとは思わなかったが。
しばらく宿舎のテレビをみていると、各球団のキャンプ情報が入ってきた。
『こちら読売巨人軍のキャンプですが、ルーキーの早川投手は今日は走り込みを行ったそうです。この早川選手の効果か、キャンプには昨年の約2倍のファンが見物にきたようです。』
「あいつ巨人に入ったんだよな。」
「ああ、凄い人気だな。」
彼らにあいつとよばれる早川投手とは、今季のドラフトで5球団に1巡目指名され、抽選の末巨人に入団した甲子園優勝投手である。
葛城たちは中学時代から対決し中学では勝利したものの高校では敗れている。
葛城は今でもその時を思い出す。
その試合は高校生活最後の甲子園のベスト4 準決勝のことである。
相手の打線をエースの山村が1失点で抑えるも、こちらの打線が早川から8回までパーフェクトに抑えられて迎えた9回裏2死から四球と執念の内野安打で迎えたチャンス、打者は4番の自分へまわってきた。
『ストライクバッターアウト スリーアウト ゲームセット』
俺は打てなかった。
チームメイトは「気にするな」、「しょうがない」と声をかけてくれたが、俺はそのことが忘れられない。
そのままキャンプが終わり、オープン戦が終わり、シーズンが始まったものの、俺は1軍には上がれなかった。
1軍に上がるどころか、2軍でも三振の山と、俺の1年目のシーズンは全く期待はずれの結果におわった。(もっとも始めからあまり期待されてはいなかったが…)
それは山村のやつも同じようで彼も1年目のシーズンはさっぱりでそれこそ期待はずれな結果となってしまった。
しかし巨人に入団した早川は違った。
いきなりローテーションに入ると11勝を挙げ新人王に輝いたのであった。
もはや俺などとはレベルが違った。
かたや1軍でローテーションを1年間守る活躍。もう一方は2軍でも三振の山。
さらにチームの方もまさかの最下位転落などという結果に終わり皆川監督と投手コーチはその責任をとり辞任したのであった。




