第一話 指名
新球団4チームの戦いは対称的であった。
パ・リーグの二球団とセ・リーグの大阪南海ファルコンズは苦しい船出となった。
やはり戦力不足は否めなかった。
ただ松山マリンファイターズは違った。
名監督と名高い皆川氏を招聘し、コーチ陣も充実。いきなり一年目から3位に入り、クライマックスシリーズへ出場するなど、快進撃を続けた。そして球団創設から5年目、ついに念願の初優勝を果たしたのだ。
それと同時にファン人数も増加していった。いつしかプロ野球でも1・2を争う人気球団へと成長したのである。
その年この物語の主人公である葛城忠雄は入団した。
〜これより物語は始まる〜
20##年(マリンファイターズが優勝した年)のドラフト会議。
松山 4巡目 葛城 18歳 内野手 松山学院高校
「おおっ」と驚きの声が上がる。
ここは松山学院高校の視聴覚室。唯一テレビのあるこの部屋に野球部の面々が集まってテレビの向こうで行われているドラフト会議に一喜一憂していた。
このドラフト会議でこの学校からは2人が指名された
葛城忠雄と山村浩二夏の甲子園でベスト4に入った高校のエースと4番である。
エースの山村の指名は始めから予想され事実1巡目で地元の松山に指名されたが、葛城の指名は意外であった。
「まさかお前も指名されるとはなぁ」
山村が葛城へ話し掛ける。
「また同じチームじゃねえか。お前とはプロに入って対決したいと思ってたのによ。」
「まあそう言うなって、お前はまた俺の打撃に助けてもらえるんだからな」
「それは楽しみにしておくよ」
そんなことを言い合いながらも二人は心底喜んでいた。
そのうちに冬を迎えついにプロ野球選手としての生活を始めた2人であった。




