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#4~ハイゴブリン~

視線の先には、人が倒れていた。見える範囲で三人ぐらいいるが、誰もピクリとも動かない。

 そして、ゴブリンの群れと戦っている二人の人間がいた。

 目の前のゴブリンを倒しながらそちらに目を向ける。

 一人は男性で、見るからに冒険者っぽい出で立ちである。

 もう一人は少女のようだが、こちらはゴブリンが邪魔でよく見えない。

 俺は目の前のゴブリンの攻撃をかわし、即座に斬りつける。

 時には短剣をゴブリンの眉間に投擲して、違うゴブリンをすれ違いざまに斬り倒す。

そうこうしている内にゴブリンが減り始め、二人がいる方向の視界が広がってきた。

 合流しようか、と考えてそちらに目を向けた時、俺の目に信じられない光景が映し出された。

 男が、女を盾にしやがった。

 少女はゴブリンの棍棒による攻撃を腕に受けたために、腕が曲がってはいけない方向に曲がり吹き飛ばされて動かなくなった。

――腐ってやがる。

 俺は怒りのあまり、周りにいたゴブリンの首を一気に刎ね飛ばし、男を思いっきり殴り飛ばしていた。

「お前……自分のした事が分かってんのかっ!」

 そんな俺の怒鳴り声に対して、男は起き上がってバカにしたように笑いながら答えた。

「いってぇな……しょうがないだろ? 盾にしなきゃ俺が吹っ飛ばされてた。それにそこにいる奴隷もご主人様に盾にしてもらえて本望だろうよ」

「奴隷だからってやっていいことと悪いことがあるだろうが……」

「ふん。奴隷の事なんざ知るかよ。奴隷が死んだって誰も気にしねえよ」

 何て奴だ。男の言葉に吐き気がした。

 俺にとって奴隷という存在は愛でる者であって、使い捨ての雑巾みたいな扱いをする者じゃない。

 そんな扱いをする奴に主人の資格なんかあるはずがない。

 この男に対して殺意が芽生えて剣を握り締めながら男を見た時、男の後ろには今までのゴブリンよりも一回り大きくて、青い皮膚を持ったハイゴブリンが曲刀を構えていた。

――そして、振りかぶった。

「ところでお前、よくも殴ってくれたなあ。ゴブリンぶっ殺したらお前も――」

 男は最後まで言えないまま、首を刎ねられていた。

 その光景がスローモーションのように網膜を焼き付けた。

 俺は込み上げてくる吐き気を必死に抑えながら、ハイゴブリンの一挙一動を見逃さないように視線だけは外さないようにする。

 ハイゴブリンは、次の標的として俺を見つけ、睨みつけながら声を上げる。

「ニンゲン。よくも我が同胞を殺してくれたな。この恨み、万死に値する!」

 どうやら喋れるらしい、上位種の事だけはあるな。おそらくこいつが群れのボスだろう。

「――そりゃどうも。お手柔らかに頼むよ」

 苦し紛れの軽口を叩きながら、ちらりと吹き飛ばされた少女の方を見た。

――生きている!

 内心安堵しながらハイゴブリンに目線を戻すと、もう目の前まで迫っていた。

 斬りつけてくる曲刀を剣で受け流し、そしてそのまま斬りつける。

 だが、ハイゴブリンは体を捻って斬撃をかわし、剣を持っていない方の手で俺を殴り飛ばした。

 殴り飛ばされた俺は、ギリギリで受身をとって、すぐさま起き上がる。

 こいつ、ゴブリンよりも数段に強い。力も速さも段違いだ。

 周りにはゴブリンがまた集まってきている。

 状況を見るに明らかにこちらの分が悪い。

 俺の身体能力も剣術も、所詮与えられた力だ。圧倒的に経験値が足りてない。

 このままハイゴブリンとやり合っても良くて互角だろう。下手をすれば、負ける。

 運良く勝てたとしても、このゴブリンの数を相手にするのは無理だ。

――それよりも、彼女を助けないと。

 撤退する事に決めた俺は、気を失っている少女の方に向かって走りながら、ハイゴブリンに向けて短剣を投擲して動きを止める。

 そして少女を抱き上げて、ゴブリンの群れのいない方向に向けて離脱した。

「待てニンゲン! 必ず貴様を殺してやる――」

 何か後ろで聞こえたが、聞こえない振りをする。

 あのハイゴブリンめちゃくちゃ強かったな。

 今更ながらに震えてきた体を鞭打ち、全速力で森を駆け抜けていった。

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