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#32~これからの事~

ローリスを取り逃がした事で、ギルド長である師匠はギルド本部がある王都レグラムへと報告に向かった。

 てっきり冒険者ギルドって他の国にもあると勝手に思っていたんだが、どうやらレグラム王国が運営している組合らしい。

 冒険者というよりも傭兵に近いものなのかもしれない。

 だが騎士や兵士の様に拘束される事もなく、平民でも腕に自信があれば比較的自由に稼げる事から人気の職業なのには変わらない――もちろん危険な仕事ではあるが。

 国内に帝国の手の者が入って街が襲撃を受けた事で、より警備が厳しくなる事だろう。

 特にこの街は帝国からの侵攻を防ぐ城塞都市だ。

 騎士団や兵士が増員されるとワミードさんが言っていた。


 〈高潔なる探求者(ノーブル・シーカー)〉は大国である帝国の膝元で研究を繰り返している。

 しかもディオスやローリスを見る限り戦闘能力も高い組織と考えていいだろう。

 ディオスは俺達を狙っているらしいし、奴の魔の手から逃れる為に俺はいっその事西へ向かおうかとも考えたが、今の状態では何処に居ても一緒かと考え直した。

 ならば師匠達がいて警備の厳しくなるこの街に居た方が遥かに安全だ。


 今は俺が強くなる事と、リーナが魔力制御を覚える事を優先したい。

 リーナについては一先ずティリア大先生にお願いしようと思う。

 そういえば、ティリアは艶やかな黒髪に魔力を保有しているだけあって俺と違って魔力量が莫大だとイケ神が言っていた。

 今更だがリーナもティリアも俺より強いんじゃないかという考えが頭に過ぎったが、その考えは無理矢理振り払う。


 ハイゴブリン討伐したおかげで大金が思わぬ収入として手に入ったので、俺達はまずティリアの装備を整える為にゴードン商店へと向かった。

 ゴードンさんは俺を見た途端大喜びの様子で感謝の言葉を投げかけてきた。

 話を聞くとどうやら俺が親玉を倒したおかげで、俺がこの商店で装備を整えたという噂によって売り上げが右肩上がりで繁盛しているらしい。

 こんな所にまで影響が出るものなのか。

 しかしそんな影響も長くは続かないだろう。

 いくら街の危機を救ったと褒め称えられていても、時が経てば徐々に名声は失われていくものだ。

 何せ所詮はゴブリンの上位種を倒しただけなのだから。


 ゴードンさんは快くティリアに合う装備を整えてくれた。

 ティリアの得物は弓だ。

 良くしなる木材を使って作られたその弓は飛距離も抜群の一級品で、ティリアもしっくりきたという様子で何度も試射を行っていた。

 そして防具は軽い革素材で作られた動きやすいものを選んだ。

 軽い割には丈夫で、刃などはそう簡単には通さないという優れものである。

 装備を一通り購入してゴードン商店から出るまでティリアはずっと恐縮していたが、生憎俺は命を守る為には金を惜しまないつもりだ。。

 どうやら今まで高価な物を買い与えられた事も無い様で、嬉しそうではあるがどこか落ち着かない様子で身に着けた装備を眺めている。

 俺はそれを見て改めて彼女が奴隷である前に、忌むべき存在として迫害されてきた事を思い出した。

 今は見た目がすっかりエルフというよりも人間の女の子となっていて、街中を歩いていても嫌悪の視線に晒される事もなくなった。

 その代わり二人の美少女を連れている俺に嫉妬と羨望の眼差しがことごとく突き刺さってくるのは気になるが。

 良かったと思う。

 ティリアは本当に慈愛に満ちた優しい女の子で、決して人に忌避されるような女の子ではないのだ。

 彼女が生きやすい環境を整えてあげる事が、主人である俺の務めだと思っている。

 つまり何が言いたいのかというと、守りたいこの笑顔、という事である。


「旦那様、このご恩はどうやってお返ししたら……」


 落ち着かなさ気なティリアを見て、俺は笑った。


「いいんだよ。ティリアが今までの分まで幸せに笑ってくれてたらそれでいい」


 本当にそう思うんだ……前の世界ならクサ過ぎて絶対に吐けないセリフだが。

 俺の恥ずかしい言葉にも笑う事もせずに感動してくれているティリアを見ていると、遅れて恥ずかしさが込み上げてきた。

 何言ってんだ俺。


「と、とにかく命に関わる事なんだから必要な物は遠慮なく言ってくれ」


「……ありがとうございます、旦那様」


 そこに横からリーナが割り込んできた。


「あ、あのっ! 財産管理は私が任されているんですから、ちゃんと私を通して下さいね! ……良い妻になる為なんですから」


 そうだった。リーナにお金の管理を任せるんだったな。

 なんか最後はボソボソと小声だったので聞き取れなかったが。


「ああ、そうだな。その時はちゃんと言うさ」


 しかしリーナを良く見ると、最初に見た時よりも肉付きが良くなったな。

 元々大きく膨らんでいた胸も更に大きくなったような気がする。

 決して太ったという訳ではない。

 前よりも肉感的というか何というか、いやはっきり言おう。


 エロくなった。


「……なんですか?」


 そんな俺のいやらしい視線に気付いたのか、怪訝な表情で訊いてきた。


「いやあ、なんかリーナが初めて会った時より肉付きが良くなった気が――ぶほあッ!」


 言い切る前に鉄拳に頬を打ち抜かれて、俺は錐揉み回転しながら吹き飛んだ。

 地面を転がり続けて止まり、意識が飛びそうになりながら起き上がると、顔を真っ赤にしたリーナが涙を目尻に浮かべながらこちらを睨みつけていた。


「ききき、き、気にしていたのに……コーヤ様には言われたくなかったのにぃ!」


「痛ってえ……いや、健康そうで良かったと――」


「いやああ、太ってないの! 最近お腹周りが気になるな、なんて思ってないんだからああああ!」


 慌てて言い訳を述べようとすると、俺の声は聞こえていないようで再び遮って叫びながら走って行ってしまった。

 太ってるなんて言ってないのに勘違いされたが、気にしていたのか。

 言い回しが悪かったのかもしれない。

 素直にエロイ身体していると言った方が良かったか。いやいや変態かよ。

 それこそただじゃ済まない様な気がして、俺は恐ろしさから身体を震わせた。

 頬を擦っていると、ティリアがジト目で首を振って言った。


「旦那様、女性にそのような事を言うのはご法度です。あれは私でも怒ります」


「え、なんかごめん……」


「私に謝られても困ります。とりあえずリーナを慰めてくるのでコーヤ様は暇を潰していてください。暫くしたら宿に戻りますから」


 なんだかティリアの反応まで冷たい。

 しかし、ここは俺が行ってもリーナの自尊心を傷つけてしまうだけだろうから、釈然としないが素直に頷いた。

 溜め息を吐いたティリアがあ、と思い出したかのように声を上げた。


「ちなみに私はエルフなので体型は変わらないので安心してくださいね?」


「そっか……つーことはむ――」


「――安心してくださいね?」


 念を押すようにニッコリ微笑みながら言うティリアに寒気を感じた。

 だって笑顔は可愛いんだけど目が笑ってないんだよ。

 コクコクと頷くと、ティリアは満足げに去っていった。

 俺はティリアの新たな一面を垣間見たのかもしれない。


「はあ……女って本当によく分からんな」


 だけどこんな平和な日常もありかもしれないと思いながら、同時にこれからどう時間を潰そうかと考えながら街を歩き出したのだった。

#33~エピローグ~



コーヤはあの世界にも馴染んだな。

見事に奴隷でハーレムを作ってるし前世があれだったから不安だったが、問題はないな。

「ふむ、いい感じに世界の異変が解決したがやはり疲れるな」

「神様ールシュタートの異変は例のコーヤとかいう人が解決したんですか?」

「うむ。ミカエル、この世界とは別の世界を見たいから早く見せてくれ」

「分かりましたよー。今から持ってきますねー」

次はどんな世界を見れるのやら…。




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