表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小さな恋の物語(誠史郎番外編)

作者: 灰猫

いじめにあい、中2まで保健室登校と不登校を繰り返していた小鳥遊竜稀。

スクールカウンセラーやわずかな友人に恵まれ無事教室へ戻れるようになった。



そんな彼女にも悩みがあった。

それは個人的数学教師クラスメイトの関口の存在だ。


終業式を10日後に控えたある日、下校は赤木達と関口と半々に分かれていった。

「また明日ね」と言いつつ含み笑いをする赤木達がちょっと意地悪に見える。

『なんだよ。もう少し道一緒じゃん』



そして今日は関口と帰る日だった。

「お前さあ、教室でもっと胸張っていろよ。何も悪いことしていないのに」

「・・・う、うん」

「それじゃあカウンセリングも意味なしだな」

「桜井先生の悪口言わないで!」

カッと関口をにらむ竜稀。


少し表情を変える関口。

「おい、ゴミが付いてるから目を閉じろ」

「な、なんで?」

「いーから閉じろ」

言われるままに目を閉じると、おでこに温かいものが触れてきた。

その温かさ関口のものだとわかるとバッと離れて、


「何すんだよ」

と声を荒げる竜稀。

「お前さあ、教室にこれるようになったんだし、次は人の気持ちってヤツ考えろよ」


竜稀を置いて関口は無言で帰っていった。

『え?なに?アタシ関口怒らせた?』



久しぶりの保健室。少し心拍数が上がっていくのを感じながら入る。

「桜井先生?」

カララ・・・と扉をあける。



「ひ、久しぶり・・・」

「相談があるんだけど、相談室空いてる?」


「君はもう卒業生。もう入れないよ。話があるなら、耳には入れてあげるから

北斗先生と保健室で話しなさい」


誠史郎が抑揚のない口調で言う。

『桜井先生・・・』

心に淋しさを感じながら、仕方なく竜稀が口を開く・・・



話を聞いて、誠史郎はコーヒー片手に笑いをこらえ、

北斗は思わずポカンとしてしまった・・・

「何だよ!言えって言ったじゃないか!んで関口が口聞いてくれなくなった・・・」

「どのくらいなの?」

少し心が後ろ向きになっているので北斗が顔を覗く。


「2日・・・」

「くっくっく」

誠史郎の笑いはもう堪えられなかった。

少し北斗も笑いをこらえ、


「それは小鳥遊さんが悪いわ。関口君の気持ちを考えてないの」


「それは関口にも言われた。でも気持ちを考えるってどういう事?よくわからない」


いままで外界を拒絶してきた竜稀は人の気持ちを考えて

行動する事がまだ上手くできないのだった。


「そうね、まずは小鳥遊さんの気持ちを・・・」

北斗の言葉をたたみかけるように誠史郎が口を開く。

「『ごめん』って謝ってまた数学を教えてもらえばいいさ。関口の家で数学教えて欲しいなってね。

行くときはスカートはいて」



「桜井先生!!」


北斗がたしなめる。

桜井先生の言うことは正しい。そう信じきってる竜稀は


「わかった。そうする!!」

そう言って早足で保健室を後にした。



「桜井先生~!!」

北斗が『何してくれるのよ』と言う顔をする。

誠史郎はニヤニヤ笑ったままだ。


「せ、関口・・・」

昼休みみんながダラダラザワザワしている中、竜稀は関口を呼ぶ。


「悪りぃ。ちょっと待ってて」

ひょいと男子の中から関口が飛び出す。


「何だよ。こんなクラスの中で廊下出ろよ」

少し感情のない口調で言われた。二人で廊下に出る。


「せ、関口。この前はゴメン。ま、また数学教えて欲しい」

顔を赤らめながら頭を下げる竜稀。

関口はくすりと笑い、頭をポンポンと叩き

「ん。わかったよ」

少し微笑んで答えた。

「せ、関口のうちで!」

ザッと関口が後ずさる。

「はっ・・はあ?」

「って、桜井先生が言えって」

「あんのエロカウンセラー・・・」


「だ、だめなのか?」

関口の様子をうかがう竜稀。

関口は頭をガリガリとかき、

「あー、今度の土曜。いつもの曲がり角に13:00」

「ん。わかった!」


人の気持ちがわかったと思う竜稀と、

人の気持ちも知らねーでと思う関口。


13:00にいつもの曲がり角で竜稀は待っていた。

現れた関口は竜稀の姿に驚いた。

「お前、スカート短くないか?」

「あぁ、いつもはレギンス合わせるんだが、今日はまだ乾いてなくて・・・」

「お前、2度とそのカッコすんな」

「に、似合わないか?わ、わかった」


『あー、ちくしょう。あのバカヤロー』

「いくぞ」


関口の部屋でカリカリと勉強が進みだした。


「あ、ゴメン。消しゴムが・・・」

コロコロと転がる消しゴムが落ち関口がテーブルの下に目をやると竜稀の太ももがあらわになっていた。


関口がふい。と、竜稀の頬をなでる。


「せ、関口?」

「お前、あのエロカウンセラーの言う事きくのやめろ」

『え?桜井先生のコト?何で?・・でもまた関口を怒らせる・・・』


「わ、わかった」

「あと学校では俺の事、聡って名前で呼べよ。俺はお前の事、竜稀って呼ぶ」

「わ、わかった」

「竜稀、本当にわかれよ?」

「わかった聡。これで聡の気持ちがわかったんだな」


コイツ全然わかってねえと苦笑いしながら、おでこにキスをする。

竜稀はこの前より嫌じゃない自分がいると思った。



「全く、余計なことを言って」

北斗がたしなめる。


「い~じゃないですか。青春ですよう」


クックックッと、誠史郎はコーヒー片手に笑いをこらえていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ