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盗賊だって勇者の仲間で良いじゃないか  作者: 桐条 霧兎
第1章 憂鬱であり、不運を発揮する盗賊の少年
9/15

第7話

 速さ強化により、身体を空中で捻らせながら攻撃を流した隙に一体を一刀両断する。


「ようやく一体……」


 『速度強化』限界オーバーリミットは、短時間のみの本来のスキル能力を身体に負荷をかけながら効果を倍にする事で、一瞬だけでも相手の視界から消える程のスピードを得られる事が出来る。

 そして一体をまさか倒されるとは予期していなかったのか、指示をする声が止んだのをチャンスに、更にもう一体を横薙ぎに一閃。

 力無く倒れ込み事切れたのを確認すると、一体が敵討ちとばかりに正面から突撃してくる。

 やはり、俺の考えは正解だったと思いながら後ろにバックステップで躱して横にステップしながら回り込み、逆手から持ち替え短刀二本を連続して斬り伏せる。

 ばつ印のように斬られたラビットチャンピオンの胸から血が吹き出し、短刀に滴る二本を振り払いながら血を落とすと、残る二体に目をやる。

 今だに苦戦を強いられているイリスを見ながら、また短刀を逆手に持ち替えて駆け出す。


「はあーー!!!」


 息を吸い込み近寄ったラビットチャンピオンに斬り上げながら叫ぶ、左手を上げながらその勢いを殺さず空に飛びもう一体を1文字に両断する。


「ふぅー……」


 ー『速度強化』解除……。


 イリスもようやく一体を力強く斬り伏せ、なんとか倒した様子に安堵する。

 所々に小さな傷や、息が荒く肩が上下に疲れた表情をしながらも、俺にピースサインをして余裕だと訴える。


「やった、初めてモンスター倒せたよ」


「やったなイリス」


「ー!。うん!」


 素直に褒めると嬉しそうに笑うイリスに、思わず笑みを浮かべてしまうが。

 一応『感知』スキルには二体目を倒し終えた瞬間に、指示を出していたモンスターの気配が消えた。

 今も警戒をしながら『感知』を広げているも、近くにいないのを確認した俺は、イリスの疲れを癒すために一旦休息をとる事にした。

 手頃な所に座り込みながら村で用意した飲み水を飲む。


「ねえ、異常体デミリーターってなんなの?」


 唐突な質問を、イリスが当たり前に質問してきた。

冒険者学校で小煩く、それもしつこく重要な項目なので習っている筈なのだが、彼女は聞いた事無いような表情で聞いてきた。


「……マジで?」


「何がよ?」


「聞いたことくらいはあるよね?」


「無いよ!」


 即答で答えた彼女の表情に、本気で言っている事が伺える。

 思わず溜息が漏れるが、イリスに説明してあげる事にした。


「なるほどねー、でもでもあたしでも倒せたからそんなに警戒しなくても良くないかな!」


 何がなるほどなのか、先程の説明をそんな感想漏れるほどの景観な楽天的な言葉を言う時点でわかっていないのだが、そう思いながら強く注意する。


「あいつらは普通のラビットチャンピオンだよ、多分だけど戦ってる最中に指示を出してた奴がいた。多分きっとそいつだろう」


 そして群れのボスでもある。

 今回目の前に現れたのは6体程度、同じくらいの数がまだ居ても良い、それも踏まえてより理解してもらうように優しい口調で噛み砕いて説明をした。


「ーだから、気を付けてほしいんだけど……。それに、イリスはやっと一体倒せた位でその余裕はあぶないからな?」


「うぅー……」


「ま、まあ1人で倒せたのは偉いよ。油断せずにって事で、ね?」


 しょぼんと落ち込んでしまったイリスに、慌ててフォローを入れながら励ます。

 どうも彼女の泣きかけなどは苦手だ、今まで女性との付き合いは笑顔が天使のティファと冒険者学校時代の時の小煩く性格が男勝りの子しか知らなかった。

 泣き顔はどうしても、男としては情けなく慌ててしまう。

 ポリポリと頭を掻きながらどうしたもんかと思いながら木々の隙間から見える青空を少し眺め、「よっ」と声を上げながら立ち上がる。


「そろそろ行こうか?」


「うん!」


 どうやら機嫌も上がった様なので、このモチベーションのまま頑張ってほしいと願いながら森の奥地へと足を進める。

 『感知』を維持したまま歩き続けて少しすると、また視線を察知した。


「………」


 …一体か。


 視線の数が一体と言う事は様子見なのだろう、一定の距離を取りながら付いてくるのを感じた。


「イリス、警戒は怠らないで」


 隣に並び歩く彼女に伝えると、真剣な表情を読み取ったのかコクリと頷き、いつ抜いても良い様に片手剣に手を伸ばしながら歩く。

 次第に奥に行くにつれて視線が増していく、その数は約"10体"…予想上回る数字に嫌な予感はここで的中する。


「グシャアー!」


 気付いた時には"あのひと鳴き"によって四方八方からラビットチャンピオンが飛び交ってきた。

 イリスは片手剣を引き抜き、『身体強化』スキルを発動するのを見ながら、俺も短刀を構える。


「きゃっ!」


 上からのしかかる様に襲ってきたラビットチャンピオンを俺は軽く躱すも、イリスはいなせなかったのか倒れ込んでしまう。


「はっ!」


「グギッ!?」


「大丈夫か!?」


 急ぎ攻撃の嵐を躱しながらイリスに追い打ちをかけようとするラビットチャンピオンに、突進をかけ二本の短刀を背中に突き刺す。

 急ぎ助け起こして背中合わせになるが、ラビットチャンピオンはおよそ15体以上もの大群で俺達を囲む。


「ど、どうしよう……囲まれてるよヴァイス」


「わかってよ、イリスは一体にだけ集中して、他は俺が全部引き受けるから!」


 その言葉を合図にイリスは襲いかかる一体に集中して戦う。

 俺は付かず離れずの距離にして、イリスの背後に回り込もうとするラビットチャンピオンに後ろから斬りかかり、援護する形で戦いながら分析する。

 この異常な群れの数は不可思議すぎる。

 ラビットチャンピオンは基本10~15と多過ぎず少な過ぎずなのだが、今は始めの6体を抜いて現段階のラビットチャンピオンの数は20超えている。

 それもまだまだ増えて行く。


「はっ!」


「グギャッ!」


 近付く物を端から倒し、そしていつでもイリスの援護に迎える位置を取りながらラビットチャンピオンのボスの姿を探す。

 ラビットチャンピオンのボスは群れの中で一番の腕っ節であり、強く勇気がある事がボスとなるのに一向に姿が見えない。


「やぁーー!!!」


「グギャア!?」


 ようやくイリスも一体倒し終え、また一体へと立ち向かう。

 彼女も徐々にラビットチャンピオンとの戦闘に慣れながら、不慣れだった片手剣もしっかりと今じゃ片手で掴みながらも上手に立ち回っている。

 その調子だ、と思いながら目の前から二体のラビットチャンピオンが飛び交ってくるのを正面から受け、交差しながら同時に斬る。


「「グエッ!」」


「はあ、はあ、……統率が取れ過ぎてて…はっ!」


 休む暇もなく襲いくるラビットチャンピオンに、苛立ちを多少覚えながら身を捩って躱し、その勢いに乗りながら首を跳ねる。

 イリスもなんだかんだと既に二体倒していた。

 今だ増え続けるラビットチャンピオンに悪態をつきながらも、統率とコンビネーションが複雑なだけで一体一体はただのラビットチャンピオンなのに、苦戦は無くとも体力が消費されてしまう。


「しつ、こい…なっ!」


 同時に今度は三体一斉攻撃に二本の短刀で受け止める。


「くっ……」


 それと同時に二体のラビットチャンピオンが脇をすり抜けイリスの背後を取った。


「イリスーーー!!!」


 今だ彼女のか弱さに一体に集中していたイリスが後ろからの迫る二つの猛攻に気付いた。


「ーーーーっ!?」


 力で押し込みすぐ様三体を一閃にて薙ぎ払い、駆け出す。


 ー『速度強化』限界オーバーリミット発動。


「間に…合えっーーーー!!!!」


 だが、イリスとの距離は少しばかり離れ過ぎてとり、スキルを使用しても間に合わない。

 そう直感してもスピードを増そうと力を込めながら、間に合ってくれと願がった刹那、イリスを襲うラビットチャンピオンの足元から青く神々しい光が浮かび上がると、一瞬にして鋭利な氷が彼女を守る様にしてラビットチャンピオンを突き刺し守った。


「な、なんだ!?」


「え?」


 俺とイリスが状況をイマイチ理解出来ない中、もう一度…今度は俺の背後を追いかけていたラビットチャンピオンを氷が襲いかかり一掃する。


「ーーーほんっと、相変わらず鈍臭い」


 氷が獲物を突き刺し役目を終えた様に砕け散ると、その氷片に煌めかせられる様に現れたのは昨日宿屋にてすれ違った黒ローブの者だった。

 人差し指を此方に向けながら鋭い声で俺に向けられて発せられた言葉に、どこかで聞いた事のある様な、懐かしい声を耳にしながら深く被ったフードの者を見る。

 声からして女性の声だった事に驚きながらも、その女の子の正体がわからずイリスに視線を送る。


「イリス、あの子知り合い?」


「え、どう見てもヴァイスに指向けてるし…ヴァイスの知り合いじゃないの?」


「え、やっぱりそうかな?」


 小声でヒソヒソとどちらの知り合いですか?とやり取りしているのを、彼女が怒りに満ちた態度で地団駄を踏みながら声を荒げる。


「あ・ん・た・ねぇーーーーーーー!!!!」


「ほら、ヴァイスの知り合いみたいじゃん!」


 イリスが肘で小突きながら小声でそんな事を言ってくる。

 一応知り合いらしいが、助けて貰った事には変わりない為に頬を掻きながら覚えてる風に話してみる事にする。


「は、はは。た、助かったよ…ありがとう。えーっと久しぶり?元気にしてたかー…………おい、この後なんて言えばいいと思う?」


 言葉が詰まってしまい、思わずイリスに助け舟を求める為に手で口元を隠しながら聞く。


「覚えてないなら覚えてないって言え!」


 俺の演技を見事なまでに見破った彼女がぶっきらぼうにフードを取る。

 それは魅入ってしまうくらい可愛い髪色、桃色の髪に可愛い赤のサイドポニーを作りながら腰元まで長い髪をローブから掬い上げて靡かせる。

 顔も凄く大人っぽいがどこか幼い顔立ちを残している、そして前を閉じていたローブを開きまた視線を奪われたのは、彼女のスタイルはとても良くティファさんの次に魅力的なスタイルだった。


「…………………………イリス知ってる?」


「ええ!?思い出せないの!」


 じぃーーーと身体を隅々、顔をマジマジと見たのだが記憶が合わない。

 いや、見覚えがあると言えばある様な?そんな曖昧なモヤモヤにより、イリスに念の為確認を取る事にした。

 だが、そんな俺の言葉にイリスの驚きっぷりから察して俺の知り合いだと確定された事にほとほと困る。


「信っっっっ……じられない!!!」


 耳まで真っ赤にして拳を握りながら吐き捨てる様に言った彼女。


「ご、ごめん……そ、そんな綺麗な人にこ、ここ心当たりが」


 慌ててフォローを入れると更に顔を真っ赤にさせ、煙が今にも吹き出さんばかりか、更には目尻に涙を溜め出した。

 やばい…と思わず目を瞑ると、彼女は呆れた様な諦めた様に溜息を吐いた。


「べ、別に……どうせアンタって私の事視界に入って無かっただろうし…あれから!…い、一年も経てばか、変わるわよね」


 モジモジとそんな事を言った彼女の態度はどこか、また懐かしく感じた時にふと、記憶が蘇り1人の女の子と合わさった。


「お前…もしかして、アスティア・メリン!?」


「え?思い出せ…た、の?いや、覚えててくれ、てたの?名前……」


 ーそうだ、思い出した。

 彼女は冒険者学校でずっと同じクラスであり、ずっと小煩く何かと俺に説教をしてくるアスティア・メリンじゃないか。

 何かと説教したり小煩く言ってきた後に決まって潮らしくモジモジし出したと思いきや……。


「最後には俺の顔面ぶん殴る武闘家のアスティア・メリンじゃないか!……え?お前、武闘家じゃなくて魔法使いなぐっほぉおおおおっ!!!?」


 急にラビットチャンピオンのパンチ力の目じゃないスピードと腰の使い方により、鼻血を吹き出しながら盛大なパンチを貰って吹き飛ばされる。


「武闘家じゃないわよ!魔法使いよ!それも、母は戦士よ!武闘家じゃなくて、戦士と魔法使いの娘!!ぶっ飛ばすわよ!」


 既に殴って追い打ちかける気かと思いながらも、血の気の荒い性格の今現在の彼女に口が裂けても言えない事なので黙りながら鼻元を抑えながら土下座した。

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