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伝えた自分の気持ち

事件が解決し、三人は逮捕されて署に連れていかれた。篤史と翔也は哲哉にこってりと絞られてしまった。

ホテル前で留理と里奈、翔也と別れると、篤史は哲哉と二人きりになった。というのも、哲哉が篤史に話があるという事で、ホテルに近くにあるカフェに呼んだのだ。

哲哉はホットコーヒー、篤史はコーラを頼むと向かい同士に座る。

哲哉が篤史に話があると言ったのは、息子の気持ちを聞きたかったからだ。篤史が中学生になった頃から距離を置かれている感じを受け取っていた哲哉は、難しい多感な年頃の息子にどう接したらいいのか。これからどうして欲しいのか、を聞くためだ。

今、聞いておかないとこれから先、話を聞く機会がない、と思ってしまったのだ。哲哉は父親として、息子と向き合いたい気持ちがあった。

少しの沈黙の後、哲哉が口を開いた。

「事件が解決したな。ホテルでも言ってくれたが、自力でなんとかしようとしてたのか?」

比較的柔らかい口調で哲哉は息子に聞いた。

「そうや。オレ宛に依頼の手紙が届いて、初めての依頼っていうのもあってなんとかしないといけないって思ったんや。江口さんのストーカーをしてる男性を突き止めた時、翔也が自分達の力ではどうすることも出来ひんから、親父に協力してもらったほうがいいって言ってくれたんやけど、オレはそれをしなかった。そんなことをしてしまえば、自分から逃げてしまってるみたいで嫌やったんや。それで親父には言わずにストーカーの件を続行してしまった。それが今日、江口さんが亡くなったって聞いて、自分の無力さを知った。人一人殺害したってホンマに親父の言うとおりやわ」

篤史は奈菜からの依頼から始まった事を自分の言葉で答える。

哲哉の言葉は、篤史には相当答えたようだ。

「篤史の気持ちもわかる。杏奈や知和にも何をするにも最後まで遣り通せとずっと言ってたんやからな。だが、今回の場合は状況は違う。いくら、高校生探偵といえども篤史は警察やない。被害者を危険な目に遭わせてしまう事は用意に推測出来たやろう。まぁ、篤史が相談出来ひんような環境を作ってしまったオレにも責任があるが……」

息子に気持ちを理解しつつも、今回だけは相談して欲しかったという思いがあった哲哉。

それと同時に、父親として息子が相談する機会を作れなかった事に哲哉自身後悔していた。

「親父、オレのせいで恥かいたやんな。ホンマにごめんなさい」

篤史は素直に謝る。

「いいんや。そこまで気にしていない」

哲哉は構わないと言う。

「篤史、このこととは別に聞きたい事があるんや」

哲哉は篤史の本心を聞くために、さっきより改まった口調になる。

篤史はなんだろうと哲哉を見る。

「率直に聞くが、オレの事がうっとうしいか?」

はっきりと聞いた哲哉。

それを聞かれた篤史は、自分の気持ちを言い当てられてしまいうろたえてしまう。

「うっとうしいというか、小川家の長男としてと言う親父の思いが嫌でたまらへん。親父の言う事もわかる。でも、オレは親父のために生きてるわけやない」

自分の思いを伝える篤史。

それを哲哉はじっと聞いている。

「親父は自分と同じ警官になって欲しいと思ってるかもしれへんけど、オレは別の生き方をしたい。探偵も最初は親父に言われてからやったけど、いつしか自分の中で探偵はなくてはならへんものとなってた。それでもオレは小学生から夢はあった」

篤史はずっと心に秘めていた夢があると言う。

「夢……?」

今までそんなことを聞いた事がなかった哲哉は目を丸くする。

「そうや。教育関係の仕事がしたいんや。小学校教諭が一番なんやけど、最近は臨床心理士にも興味が出てきたんや。三年になるまでどっちか決めるつもりや」

篤史は小学生の頃から小学校教諭になりたい事と最近興味を持った臨床心理士の事を話す。

「そうか。その夢があるなら篤史は篤史の生き方をしろ。オレは篤史の夢を応援してる」

哲哉は篤史の夢を聞いて、すっと自分の気持ちが晴れたようになり、微笑ましい気持ちで頷いていた。

その気持ちを聞いた篤史は、ありがとう、と一言言うと、自分の夢を言えたという気持ちが表情に出ていて、本格的にその夢に向かって歩いていこうと決心していた。

「さぁ、そろそろ行こうか。今日は家族で食事に行くと約束しているからな」

哲哉はホットコーヒーを飲み干すと立ち上がった。

二人がカフェを出るとカラッとした青空が続いていて、夏のように暑いくらいだ。その中を二人は家路に向かう。

その家路に向かう中、篤史は哲哉に対するうっとうしい気持ちが、若干薄らいだような気がしていた。

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