Episode,3 魔の森人の奇怪(行動)
此処は、森。壮大な森。山にも続いている。
早歩きで歩く少し大きな人影と、小さな人影。その小さな人影は、キュー。少し大きな人影は、ギュラではない。
『どこに行くんだ。おい、』
茶色のローブをきた女の人はキューの方へ突然振り返るとキューの頭を撫でて言った。
「迷子なんだ」
『そっ、じゃあ、無闇に歩くな。』
その頃、ギュラの方も1人の迷子らしき人が居た。キューと一緒に居た人と同じローブの青色をきた男の人と同じ行動していていた。
「何処、行くんだよ…っ!」
ギュラも、キューと同じ質問をする。だが、男は振り返らずに答え始めた。
「迷子の大人を探している、良いか?迷子の大人だッ!!!」
「そんなに、怖い顔しなくても分かるよ!!」
ギュラは、男を必死に追いかける。キュー程ではないが、かなり速い。
(キューは、今、どうなってんだろうな。)
ギュラは、朝から狩りをする為に寝ていたキューを置いてきた。置いてきた代わりに沢山狩ろうと思っていた時、この男と出会ったのだ。そして、「探せ」と一言だけ言われて付いて来た。
「んーっと、探す宛はありますか?」
ギュラの質問に男は「歩いてれば見つかる」とだけ答えた。
「……あ、宛…ないんすね……。」
「お前は、この森で何をしようとしていた。」
男は足を止めぬまま、語りかけた。相方が迷子なのに何故こんなに冷静なのか。
「狩りをしようとしていた。そんな時、貴方と出会いました。…あ、名前は何?俺は、ギュラ!!」
「…カイ、カイロス・ロンリー・ケイス。」
ここでやっと、振り返る。よく見ると、この人は魔族に近い服装をしていた。
「カイって、魔族?」
ギュラは、単刀直入に聞いた。カイは、目を逸らすと空を見上げた。
「半分な。」
そして、また前を向き進み始めた。
「待てよ!探してる相手は?!」
「……性別は女。」
「名前は?」
「名前なんて、教えなくても分かる。」
カイは、ギュラを置いていくつもりの様な早歩きで歩く。
「あーっもう、速いって!」
「歩こう。」
ローブをきた女性は立ち上がり、歩き始めた。
『無闇に歩いてて何になんの。』
キューは呆れた感じで、女性の隣を歩く。
「大体、…分かるから。」
『一緒に居た人?』
「うん、貴方は分かる?」
女性はキューと目を合わせながら話そうとするも、キューから目を離してしまう。
『分からない、でもあっちから分かってくれる。あの人、鼻が効くから。』
「かなりの信頼があるんだね。」
『まぁね』
女性の足取りはあまり速くない筈なのだが、キューが追いつけていないのだ。そして、等々キューが地面に膝をつき、息を整え始めた。
「どうしたの?」
膝をついたキューの足を見た女性は、沈黙をすると静かに言った。
「貴方、…もしかして……」
風が吹く、木々が揺れる。そんな音ともに女性の声は混じりあってしまった。
「本当に大丈夫か?!」
ギュラは、自分の顔にかかりそうになる木の枝を手で避けながらカイを追い掛ける。カイの足はギュラよりも速い。
「大丈夫だ、周りでも警戒してろ。」
と言うので一応周りを見渡しながらカイについて行くギュラ。そして、時々、匂いを嗅ぐ。
「……まだ、嗅げるな。………薄くなったり濃くなったり、ここの風は強いからかぁ?」
「何をブツブツ言っているんだ?」
カイは、振り返るとギュラを見つめた。
「あ、あー!俺と一緒に行動してる奴でさ!!」
「…一緒に行動?旅ではないのか?」
「え、旅?嫌々、里帰り!里帰り!!」
ギュラは、手を振りながら否定する。
「里帰り、それも一つの旅だろう。何故、はぐらかす?」
カイの目は、真剣な目になり、ギュラを睨んだ。
「…そ、そんな事、言われても……」
「里帰りでも、その合間の話、ストーリーがある。それは、里帰り人にとっての旅の一環でもあるぞ。」
「本当に旅じゃないからさ〜…」
チッと舌打ちをするとまた前を向き歩き始めた。
「……何で、そんな…怒んだよ。」
どうやら、カイの耳に届いてしまったようで振り返りざまに肘を顎に当てられた。
「いっでッ……!! なッにすんだよッ!!?」
その拍子で尻餅をついたギュラは、顎を抑えながらカイを睨んだ。
すると、カイは菱形の青い宝石が垂れ下がった木の小さい杖をギュラの鼻先に向けた。
「…一応、言うが俺は魔族だ。」
「ま、魔族?!」
「気づかなかったのか?」
カイはトントンと人差し指で杖を叩く。その反動で杖全体が揺れ、杖先が光る。
「……今、この時点で俺が攻撃していたらどうなっていたと思う?」
「それが、どんな攻撃かにもよるだろ。」
「じゃあ、《人体破滅》。」
「どう足掻いても破滅っ!?」
その時、風が吹き、火の臭いと食べ物の臭いがした。鼻が利くギュラは、立ち上がり匂いのする方へと走った。
すると、そこには焚き火を囲むキューとローブをきた女性。
「キュー、何してんの?」
『芋を焼いて貰ってる』
「…芋?」
ギュラは、焚き火の近くに刺さっている細い木を見た。その木を下から上へと眺めると上から直線で刺さった芋が合った。
「…い、いい匂い〜」
「……すまない、この芋は二つしかないんだ。」
女性は頬を掻きながら、ギュラの目線とは違う所へと目を向けた。
「…こんな所に居たのか。」
カイは、女性の頭を撫でながら、ため息を1つ吐いた。
「……カイ、何処に居たの?」
女性は、カイの手に頭を猫が甘える時の様に擦り付けながは疑問をぶつけた。
「お前を探してたんだよ。─────────ルイ。」
『ルイって言うんだ。』
キューが話に割り込んだ。その姿は気だるけそうに背を曲げていて、前のめりでカイとルイを見ていた。
「……名前、教えてるか?」
カイは、ルイの頬を優しく触りながら膝で立ちをした。ルイと目線を合わせるために。
「まだ、…」
また1つため息をついたカイは、キューとギュラに目を合わせる事はなく。ケイの自己紹介を始めた。
「ルイト・ロンリー・ケイス。」
「えっ?!」
ギュラは驚いて、変な声を出す。それに驚いたルイがカイに抱きつく。
「…ギュラ、お前っ……!」
カイの目は今までに見たことない位見開いており、一目見ただけで殺意がある事が分かる。
「ご、ごめんなさっ……!!」
「問答無用!」
さっきの杖を出すとギュラに向けるカイ。
「音を奏でろ、標的を忽せ!!
〝ロックオンミュージック«目標追尾曲»〟ッ!!」
「ああああああああああああーッ?!!!」
ギュラは、カイの音魔法から逃げたものの転けて食らってしまった。その際、頭から地面へと突っ込んでいったので、ギュラ式二次災害なのだ。
「いててっ、そんなに…怒ったのかよぉ……」
気づけば夕方。火がより強く光る。
怪我をさせた張本人のカイが、右の腕の怪我に魔力を降り注ぎ、軽い治癒を施していた。
「当たり前だろ。俺は、ルイが嫌がる事が一番嫌だからな。」
その間、カイの後ろでキューとルイは芋を食していた。だが、そこでカイが気がかりな事を言い出した。
そんなカイは、ルイの方へ振り向くと一声かけた。
「ルイ、──────何を1人で喋ってんだよ。」
「……?……私、キューと喋ってるよ?」
カイの目は、キューへと向けられた。カイは、数秒見て、ため息を吐くとギュラの怪我に再度治癒を施しながら、無愛想に言った。
「…〝キネシスマン〟か。それも、《気持ちを伝える力》の……」
「す、すっげー!1発で見抜いた!!」
「? 普通じゃないのか?」
大体治し終えたと怪我を擦る様に触れると、「痛みはないか?」とギュラに投げかける。
「ああ、ない!大丈夫だ!カイ、すげーっ!!」
「……魔法、知らないのか?これは、道書店にさえ寄れば視界の隅にでも入るだろう…。」
ギュラは、道書店については何も知らないらしく、行き良いよくキューの方へ顔を向けるとそれと同時にキューが違う方向へと素早く顔を向けた。
「キュー!!道書店って、何?!」
『考えてみれば分かるだろう、魔道書を売却してる所。』
「ばっ、ばいきゃくーっ?!」
ギュラの叫びを聞き取ったカイは、耳を塞ぎながら訂正をした。
「販売だ。間違った事を教えるな…」
ギュラは、目をカイへと動かした。それに気付いたカイは、杖を腰のベルトへと差しながら素っ気なく言った。
「何だ、質問があるなら受け付けるぞ。」
「あっ、やっぱり!!カイさ、先生っぽい!!!」
「……はぁ?」
立ち上がろうとしていたカイは、前髪を左手で掻き上げると言った。
「実際、そうだ。先生だな。」
「…マジ?」
「本当だ。」
立ち上がったカイは、ルイを声をかけながら、足をルイの方へと進めた。
「ここからは数時間しか、かからない。芋を食べたながらでも良い。歩くぞ……」
「カイ、もう行くの?」
ルイは、芋の皮を向くと1口頬張った。
「ああ、……そうだ。お前、」
カイは、キューを指差した。
『人を指で差すな』
「どうでもいい。ルイを見守ってくれてたお礼だが、学校へ来ないか?
まぁ、学校と言っても、孤児院みたいなもんだが。…お前だって、れっきとした子供だ。そんな年でこんなヤワで世間知らずな奴と旅をしている理由も教えてくれると助かる。俺としてもな。」
カイは、気づいたようにこう付け加えた「あ、学校へ来るのは1日でも良いから強制な。」と。
「……俺も?」
「魔道書の1つ位、目を通しておけ。後、子供触れ合え、こっちの子供はもっと騒がしくてふざってぇから。」
カイは、ルイと手を繋ぎながら、水色の魔陣が描かれた四角形の紙を焚き火で燃やした。
すると、ジュワッと音を立てて、火は消えた。
「何それ?!」
「水の魔陣だ。 おい、お前。ルイをジロジロ見るな。」
キューにそう指図する。
『さっきから、思ってたけど……もしかして双子なの。』
「双子?」
ギュラにも聞こえた様でギュラはルイとカイを交互に見ると、真顔になった。
「何だ、その顔は。」
「嫌…あの、顔は似てんのに……何で、……そんなに違うの?」
『二卵生か、』
キューの言葉にだけ反応を示したカイは、こう受け答えた。
「ああ、二卵生だ。」
『だから、ここの場所とか分かったとか。』
「それも当たりだ、何だ。」
とカイはキューの頭に手を置き、頭が回る位強く撫で出す。
「これは、回せる頭だったのか。」
『問うが、それは物理かそれとも知能的にか?』
「は?どっちもだ。」
カイはそう言うと、ルイを引きながら森を歩き始めた。
「…行くのか?」
『強制っつってた。』
キューは、後を追いかけて走り出した。
「あー、…待って?!キューとカイ!お前ら、早いんだよ!!歩くの!!!あれ?ルイさんも、早くないですかぁぁっ?!」
学校に着くまで走る(?)事になったギュラに気遣いもせずに3人はずんずん進む。
その頃、学校の15から19までの人が入る高寮では少年が1人。肘をつきながら、窓から星空を見ていた。
「…星は、……輝いてんなぁ。」
「おい!お前、何してんだよッ。消灯の時間だ!!」
「あ、……ごめん。」
少年は、茶色い髪をした同い年位の男の子に呼ばれ、その机が縦横5個ずつ並べられた部屋を小走りで出る。
それにしても、今日はより一層、月が綺麗ですね。