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Episode,1 飴と鞭、鞭と飴、踏んだり蹴ったり。

空は晴天。チラチラと真っ白な雲が見える。空から降り注ぐ太陽の光は、森の木々の葉に眩く日を当てる。緑が綺麗な光を跳ね返す。そんな森の中を素早く駆けて行く、二つの影が見える。

「おいっ!速い!」

長い手を大きく振りながら、大股で走り大男・ギュラ。息吐く口から顔を出す白く鋭い牙、人喰族(たみばみぞく)と言う人無族(ひとでなしぞく)が持っている牙でその中でも危険性が高い種族である。 金髪で、前髪の少し左が黒くなっているのが特徴だ。

その目の前を走っているのは、罰のような印がついた板式の口枷を着用した少女が走っていた。その素早い裸の足には、黒く長い鎖の足枷が繋がれていた。

『力は強いのに、何でもっと早く走れないの。』

少女は、ギュラの心に直接話をかける。その言葉に反発するかのようにギュラは「悪かったな!!遅くてッ!!!!」と、眉と眉を寄せ、シワを作っていた。

『悪いんだ』

そう心に話しかけると、突然立ち止まり、追いかけて来ている獣の形を象った魔物の方へ振り向いた。

少女に追いつこうとして、全速力で走っていたギュラは行き良い余って少女を少し通り越して静止した。

「何してんだっ!」

『時間稼ぎ』

背中と腕を罰のように鉄の輪2個巻かれ、手枷を手首にされた胴体を後ろへと気だるけに振り向かせた。

風が吹く、木々が微かに揺れ、カサカサと綺麗な音を立てる。

三匹から四匹程度の魔物が迫ってくる。

前方、魔物、少女の順にキョロキョロと辺りを見渡すギュラはあぁもうと言うように頭を両手で掻き、少女の腰を持ち担ぎ上げ、前方へ逃げる。

『何するの』

少女は、追ってくる魔物を見ながら、ギュラに話をかけた。

「何するのって、おっかしーだろ!時間稼ぎ所か、時間の無駄だ!!尻叩くぞ!」

『もっと他にないの 後、腕が若干痛い。』

「ほ、他ぁ?! てか、ワリィ!」

ギュラは、他の言葉を考えながら、少女の持ち方を変える。

「…あ、お仕置きするぞ!これで良いか?!」

数秒だけ横目で少女を見た。

『悪趣味』

そう言いながら、通りすがりに足で太い大きな木をぶっ蹴った。その衝撃で、ギュラはその木の反対へ飛ばされるも、地面に手をつき、体勢を保つ。

「何すんだよ?!」

咄嗟に少女が蹴った木を見ると、魔物達がその木にぶつかって行った。

「…なんだ、これ……」

『〝フォノン〟』

フォノンとは、視界が音・オーラにしか反応しない魔物の名前。そして、ギュラと少女を追っていた獣の事。

「……フォノンか。」

そんな中、ギュラは木のオーラを貪り食うように木に乱暴に食いつく獣を見ていた。

こいつ等は食えるか? 毒性はないか?

と考えていた。先ず、人喰族(たみばみぞく)は毒などを感じないのだが、何故ギュラは毒性の可能性を考えているかと言うと担いでいる〝人間〟の少女・キューの食を考えているのだ。

キューは、人間の中でももっとも稀少な存在の人間で〝キネシスマン〟という響きからしても分かるだろう能力人間だ。その能力者の数は100人で表すとその内の10人がその〝キネシスマン〟である可能性が高いのである。

そんな少女・キューの能力は、《気持ちを伝える力》だ。気持ちを伝えたい人に伝えてしまうので、その能力を持つ上で制御という二文字は存在しない。

「これって、喰えるのか?」

ギュラは、腕を組み、その組んだ手を口元に置き、キューに問った。

『寧ろ、食べるの。』

〝キネシスマン〟は、必ずしも何か一つを失ってしまう。それが、家族、友達、恋人、金で合ってもだ。その中でも、キューは〝欲〟を失ってしまっている。その中でも重症なのが〝食欲〟。でも、先にあんな口枷をしてどうやって食べるのかという点だ。

そこで口枷の、あの模様の罰点の模様が役に立つのだ。あの模様は、食べ物を感知すると消え、少しだけ口が見えるようになる。その間声は出ないのか、疑問に思うよね。キュー曰く『自分には呪いがかかってるから』と言って、声を出さない。

それ故に気持ちを出す。後、手は使えない為、ギュラに食べさせてもらってたりする。

「た、喰べないと死ぬだろ…」

と、ギュラが獣の頭をサクッと鷲掴みにする。その際、犬に近いような声で「キャウンッ」と鳴いた。

「……即死、箇所は…」

首に持ち替え、強く握る。周りの獣がギュラを警戒し出したのか、少しずつ後ずさりをし出した。

ふと、1匹がギュラの後ろに突っ立っているキューへと目線を向ける。それに気づかないキューは、頭上に実っている赤と青の綺麗な色の木の実を見つめていた。

『綺麗な色』

その気持ちがギュラに伝わったのか、振り向いたと同時に獣がキューに走り出す。

反射的に獣を持ったまま、走り出すギュラ。こちらに駆けて来る獣に気付いたキューは、数歩下がると獣が飛びかかってくると同時にその獣に蹴りを入れた。その蹴りで飛んでいく獣は、ギュラにぶち当たった。

「ぐッ…キュー、……な、んで……。」

『正当防衛』

キューは、()の人間に比べて少し脚の力が強く、その蹴りはさっきやった様に大きな獣の1匹は仕留める程の力である。

「…とりあえず、……2匹…。」

両手に2匹の獣を掴んだギュラは、チラと他の獣を見てキューに視線を戻し、腰を屈めると言った。

「あの木の実、欲しいか?」

『それ、あんたが欲しいだけじゃない。』

「何で、本当の事言うんだよ。」

じゅるりと口から涎を垂らすギュラを哀れ見たキューは、片足だけ膝をつくとグッと力を足に溜め出した。そして、そのまま飛び上がると木の実を頭で打ち落とした。

「?!お前─────木の実が危ないだろ!」

降り立ったキューは、『採れた』それだけを伝えて、両手で木の実を拾い上げた。

「……飯にするか。…もう、1時間も立ってるぞ。」

鷲掴みにした獣を引きずり、淡い血の道を作り出す。それを見たキューは、その光景から目を閉じ、ギュラの背中を眺め伝えた。

『そう』

地面を軽く蹴って、ギュラが獣で作り出した赤い道を辿り出す。


突然だが、この世界は幾つかの種族に別れて成り立っている。その中でも数少なくだが分類されている。

例を出せば、人喰族(たみばみぞく)幻族(げんぞく)鳳族(ほうぞく)の3つが人無族(ひどてなしぞく)である。人族(たみぞく)魔法族(まほうぞく)神族(かんぞく)の3つが村族(そんぞく)

この中でも、人族、神族は少し見分けがつきにくい。人族の服は神に近い服装をしてしまっているからだ。


真夜中の10時。朧月。

草や折れた小さな木をかき集めてつけた火を囲んでいる二つの影が見える。

「なぁ、食わないのか?」

ギュラは、キューの口に肉を近づけていた。当本人のキューは、口を閉じたまま、ギュラを睨み続ける。

『要らない。』

「要らないって、お前、昨日もそう言って喰わなかっただろ!」

『良いじゃん。』

立ち上がったキューは、ギュラから少し離れ背を向けると寝そべった。

ギュラは、ため息を吐くとキューに近付いた。

「じゃあ、これ取っといてやるから。喰えよ?」

そう言いながら、ギュラは座った。

「……この、枷。本当に何なんだよ…」

コンコンと指で背中側の枷を叩く。月の光で黒い輝きを淡く放つ。

「呪いとか言ってんけど、本当かぁ?…つか、キューお前、神族?人族?どっちだよ。」

キューは、上下共々ボロボロの服を着ており、所々茶色の染みが出来ている。

「…ま、いっか。おやすみ。」

『おやすみ』

「……え、起きてた?」

『枷、触った所から。』

二人の会話は、薪火が消えるまで続いた。

消えた瞬間、キューは深い眠りにつく。

ギュラは、それを見届けた後、眠りにつく。


朝になると、ギュラはまだ眠っているキューを見て、空を見上げた。

「ヴァッ、眩じぃ!」

『五月蝿い』

足を巧みに使い瞬時に立ち上がったキューは、ギュラの背中をぶっ蹴ける。

「いだい!」

ギュラは、毎日踏んだり蹴ったりな朝を繰り返す。

『寝てる人の事も考えて』

「そんなに寝たかったんだ、ごめん!」

背中を摩りながら、起き上がるギュラに対してキューは言った。

『そんなに眠くなかった。』

飴と鞭、ギュラには鞭と飴、でしょうかね。

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