その3
史実の律令制の中で規定された、八色の姓「真人、朝臣、宿禰、忌寸、道師、臣、連、稲置」が氏族の序列として格付けされている。(史実の資料は、基本的にWikiで参照してます)
好男子いやさ講談師は見てきたように嘘を吐くであります。
この国は、大陸より海の彼方にありますから、大陸で様々な興亡の結果として、国外逃亡および亡命先として、地政学的に運命づけられていました。このため、この国は、敗れ去った国々の文化や風習を含めて受け入れていったこととなります。
史実で、奉納するような書籍を書く場合は、原典を引用して展開する手法がとられていたようです。そういった意味で、丹波康頼が、漢代の渡来系で坂上一族の流れとされているようです。百済からの渡来系であったとも言われているようです。おそらくは、この国へ亡命した多国籍者の受け入れて血族としていった一族といったところでしょうか。
史実の枚方市には百済神社があり、百済王の亡命先であったようです。子供の頃に住んでいて、近くに禁野本町や御殿山という地名があって、当時は、お偉い方の御狩場のような所だったよと聞いていました。まぁ大阪や京都はどこも同じですが、近所の市民病院に保健センターを増築する際に掘ると、竪穴式住居跡や礎石、土器やらが出土するので、展示会か説明会が開催されたときに遊びに行ったことがあります。
その日は、どんちゃん騒ぎが宵を賑わしていました。盃を重ねれば、酔いも広がっていきます。
「ふぅ・・・」
ちょっと飲んだだけで酔うって、よっぽど強いんだねぇ。陸が傍に来て、
「どや、少し酔うたか、はやて」
「うん。陸さぁ、これってかなり強いね。村で呑んだのと全然違う」
「そらそや。米から出来た酒を、炊いて造っていくとな強ぉぃ酒ができるんや、使うんは”らんびき”という道具や、天竺より向こうから来た道具らしくてな、他には無いねん」
「凄いな。それを康頼って人が」
「あぁ、結構、面白い爺さんでな。唐から色んな書籍や荷を集めて色々と調べとるんや、”らんびき”も本に書いてあったのを工夫しながら造ったんやと」
「しかも、この酒は、医薬でも使えてな、ちょっとした傷やったら、吹き付けるだけで治るで」
「そうなのか?」
「呑んでも良し、傷も治せる酒や。京洛の天上への献上品でもあるんや」
色々と話しているうちに、夏から声がかかる。
「ほら、そろそろ寝ないと、ダメだよ。今日は、はやてがあたしの傍に居てもらえるんだろ」
「いいけど、陸はいいのか」
少し気になって、声をかける。
「今日は、昼間に抱かせてもろうたからな、いいんや。夏の傍にいてやって」
「わかった」
一階奥に夏の部屋があり、板間の奥に襖と褥が用意されていた。酒壺を担いで、桶と手拭い一つを一緒に置く。陸が、大盥に湯を満たして、届けてくる。
「置いとくで」
陸が置いて、二階へと行く。
「あぁ」
「こっちに来て、はやて」
「うん」
「まず、衣を脱いで」
「え。何」
驚いていると、
「ほらほら」
すっと、あたしの荒縄帯を解いて、肌を晒していく。一緒に夏も衣を脱ぎ捨てる。大盥に二人で入って、お互いに、手桶で湯をすくって、掛けていくいくと、弾けるように水玉が流れていく。
「綺麗だねぇ、陸がほっとかないのがわかるよ」
「夏も綺麗だよ。なんか輝いている」
ほんとうに、少し大きなお腹が命を宿しているんだなぁというのがわかる。夏が軽く笑いながら、お湯をかけて、あたしが持つ白銀の髪を櫛で梳きあげていく。
「髪の方は、明日の朝、墨で染めてみようね」
「ありがとう」
本当に嬉しかった。この髪はあたしの身体で、異質さが現れている部分だ。他のあやかしのような本性がなくて、身体だけだと区別がつかない。ただ髪の方は、最初からこの色だし、母様もそうだったから、これが本性ということなのだと思う。
夏は、櫛を渡してきて、
「あたしも頼めるかい」
「わかった」
手桶で湯をすくって、髪にかける。黒い髪に光沢が艶やかに流れるに煌く綺麗な黒髪だ。
櫛を入れていくと、額のところで少しひっかかる。鬼族を示す角が微かに赤く固くなっている。
「ふぅ、これがあるからね。あんまり人には任せられないのさ」
「普段は、陸がやってる」
「あぁ、でも、最近は、嫌がってね」
「嫌がるの?」
「ははは。嫌がるのは、髪を梳いていると、好いている感じが強くなって、襲いたくなるんだってさ」
「それは、わかる。だって、夏の髪は綺麗だもの」
「ありがとよ」
次に夏は、酒壺から桶に焼酎を注ぎ、手拭を濡らして絞ると、はやての身体を拭き始める。
「えっ、酒で拭くの?」
「あぁ。清潔に保つことが重要ってさ、先生は言ってたけどね」
「怪我に効くって聞いたけど、病にも効くの?」
「病に効くんじゃない。なんか、病を祓う力があるって言ってた」
背中を拭き上げ、はやての身体を覆うように、夏の大きな胸乳が、はやての背中にあたる。
「身体を拭き、禊をするように保てば、病はどっかに行ってしまうって言ってた。可愛い胸乳だ」
脇から手を回して、首筋から胸乳を拭っていく。膨らみの先が尖っていく。
「あ、ぁっ。夏は大きいからいいね」
少し淫気が溢れながら、夏の大きな胸乳が背中にあたる。背中から夏は手を回して、脇から拭きながら、腕や手を拭いていく。
「ははは、ありがとよ」
ゆっくり臍を拭きおろして、淫気をあわく淫らに纏った女陰を拭っていく。
「あぅ」
そのまま、背中を大盥に横たえて、盥から飛び出す脚を拭って、膝裏や足指をほぐす様に拭っていくと仕上がりとなる。
「はやて、あたしの方も頼めるかい」
「わかった」
夏の大きな胸乳を拭っていくと、少し白い乳が溢れてくる。子のための乳なんだなぁ
「少し、吸ってくれるかい。胸乳の方は、もう母親になってるみたいなんだ」
「良いの」
「先生は、気の巡りが変わってきているからって言ってたけど、どうなんだろうな。まぁ、母親になってるんだって実感するよ」
少し、胸乳を吸うと、滲むような感じで出てくる。
「こんな風に可愛い子になるかな」
髪を手で梳くように、あたしの頭を撫でながら、気持ちがなんか良くなっていく
「夏の子なら、可愛いさ」
両方の胸乳を軽く吸って呑み、手拭いで拭いていく。脇から腕を拭いていって、湯で流す。
腕や手を拭いて、臍から脚を盥の淵にあげて、女陰から脚を拭いていく。夏にしてもらったように、足先を揉み込むように拭っていく。
「足揉みはまだ慣れないかな、これは、先生が上手かったね」
「だめだった。でもなんか、淫らなことされてない。大丈夫?」
「まぁね。お腹に子がいるからね。肌を晒しても淫らにされても気にならないが、子に障るのは困るって言ったらさ、”大丈夫、適度に淫らになるのは人の摂理だ”って言うのさ」
「なんか、凄い先生だね」
「あたしはあやかしだって言ったら」
「人とあやかしには、陰陽を併せ持つ心がある、生きるモノとしての違いは無い」
「人とあやかしは違わない?」
不思議だね。凄く違うと思うんだけど・・・
「ま、詳しいことは、あたしにはわからないからね。先生に聞いてみな明日には、診察と酒を受け取りに来るからさ」
「うん」
大盥から出て、身体を拭いて、紐を縛らずに肌襦袢を着けた夏を、あたしが、抱っこして褥に運ぼうとすると。顔を赤く染めて、
「自分で歩けるよ」
安心させるように、あたしは笑って、
「これでも、あやかし《ひとならざるもの》だから、力は強い。任せて」
几帳の向こうは、一丈半丈くらいの台になっていた。一寸厚の板を並べていって、縦に通した丸木に釘で留められていた。一間ほどの熊の毛皮を敷いた上に布がかけられていた。そこに夏を下すと、夏に言われて、二枚折りの衝立に掛けられた、熊の毛皮に内側に布をあててとめたものをかけた。夏が、熊の毛皮をめくって、
「おいで、人肌が一番あったかいさ」
「うん」
そのまま、二人で入り込んだ。なんか、とっても暖かった。
「あたしら、鬼はさ。人の禁忌と違うから、毛皮とかを使うんだ。すっごく暖かいだろ」
「うん」
「鬼達がさ、山で狩った熊や猪を、ここの河原では、毛皮にしてるのさ。人は、鞣して革にすると買いに来るからね」
「鬼達と仲良いのか」
「陸は、最初は河原で毛皮をなめしてたし、あたしは、川向こうの村で、男の相手をしてたさ」
「あたいと同じだ」
「そうなのかい」
「あたしの村は、あやかし《ひとならざるもの》の村で、人の禁忌は無いから、子は村の皆で育てるし、なんていうかな、みんなが妻で夫という村だった」
「じゃぁ、人気があったろ、はやてわさ」
「ん。あたいが一番、若かっただけかも、赤米炊いた後の春祭りからは、たいてい男に抱かれてたよ」
「子は出来なかったのかい」
「うん。母様があたしの次に若いくらいだから・・・村の男には厳しいのかもしれない」
「そうかい。じゃぁ陸の子ができるかもしれない。そしたら、あたしの子と一緒に育ててもらうよ」
「え。夏は?」
「ん・・・」
少し、寂しそうに腹を撫で始めた。
「先生が言うには、少し難しいかも知れないってさ」
「難しい?」
「逆子らしいんだ」
「逆子って」
「子ってのはさ、頭が下に来るらしいんだけど、あたしの子は足が下に来ているらしい」
「それだと、難しいの」
「らしいね。生まれる途中で死ぬかもしれないって言うのさ。だから、先生には、あたしの腹を裂いてでも、子を助けろって言ってある」
「そんな」
「だからさ、子を任せられる相手は、先に選んでおきたいのさ」
「夏・・・あたしは」
「鬼六のところから来たんだろ」
「うん」
「あんたが望むなら、鬼六のところで育てても良いさね。あいつは、ちっちゃい子が好きだからね」
「鬼六を知ってるの」
「まぁ、陸がしばらく、あたしや小さな鬼っ子達を鬼六に預けてたからね。しばらく、鬼六と一緒に世話をしてたのさ」
「鬼っ子?」
「鬼と人の間に生まれた子供のことさ。時折、生まれるって言ったろ。祭りとかで騒いでいると、宵闇に紛れて村に来て、女を抱いたりして出来た子がいるのさ」
「それが鬼っ子」
「あたしは、母が育ててくれたけど、母が亡くなってからは、男の相手をしながら、河原で暮らしてた。鬼っ子は村を追われることも多いからね、あたしは何人かの鬼っ子と一緒に暮らしてた。そこで、陸と逢ったのさ」
「最初は客だった?」
「まぁね。食い物とかたくさんくれるから、食い扶持が多いし嬉しかったけど、あたしはそんなに高く無いから無理しないでっていうと、俺以外の客を取らないでくれると嬉しいからって言われたのさ」
「惚れた」
「あぁ、惚れたね。だから、他の男の相手を辞めて、陸の女になったんだ」
「あたしみたいな鬼っ子でも、馴染み客はいたからね。小さい子を攫おうとするんで困ってたら、鬼六のところまで逃げ出したんだ」
「鬼六は、強い?」
「優しいからさ、あんまり良くわからないけど、強いんじゃないかな。あいつの鬼釜は、岩を溶かせるような鬼火が燃えてるからね」
「一度さ、追ってきた連中にさ、鬼火で溶かした鉄を川に投げ込んで、すっごい音と水柱と水煙をさせて追っ払ったんだ」
「音と水煙?」
「ドドッって感じの音と一緒に水柱が立って、湯気のような水煙が噴き出すのさ」
「鬼の術?」
「鬼六は違うって言ってたよ、溶けた鉄を水に投げ込めば誰にでも起こせるってさ。ただ、鉄を溶かすところは、鬼の術だけどって笑ってた」
「夏も溶かせるの?」
「あたしの鬼火じゃ、鉄は溶かせないよ。せいぜい、皮を乾燥させたりするくらいさね」
「皮を乾燥させると固くなるんじゃない」
「あぁ、鞣して乾燥させると柔らかいままさ。上手く鞣してからでないとダメだけどね」
「あたしにも手伝えるかな」
「まぁ、明日からやってみると良いさ、みんなには明日紹介するよ」
「ありがと」
毛皮の内で、夏の胸に頬を寄せる。
「夏の子は守るよ」
「頼むよ」
なんかとってもあったかい、宵闇が眠る夜のことでした。
一人称話も結構難しいものですねぇ・・・