神の手違いで死んだ俺氏、異世界でチートする予定につきww
山田 繁 35歳
職業:無職
彼は、くだらない男だった。
一日ずっと家にいながら「天下布武も目前だし」などと言う。
税金も納めていないのに「今の日本はロクな政治家がいない」などと言う。
親からもらった金で風俗へ行き、そこでじっくりとサービスを受けたあげくに風俗嬢に『家族は知ってるのか』などとデリカシーの無い質問を浴びせまくる。
とにかく、くだらない男だった。
そんな彼が。
自宅で入浴中に。
神の手違いで――死んだ。
◇◆◇
【異世界の門】
繁「…ここはどこだ」
神「ここは世界と世界の狭間…」
繁「誰だ?」
神「私は神だ…」
繁「神か」
神「我が名を聞いて驚かぬとはな…」
神(そして呼び捨てか…この野郎)
繁「神が何の用だ」
神「うむ…」
神「実は…お前は私の手違いで死んだ」
繁「殺すぞ」
神(…え?)
神(こ、殺すだと…?)
繁「どういう手違いだ?」
神「ちょっと待て…お前、もっと口のきき方に気をつけろ」
神「私は神だぞ」
繁「俺も神だから」
神「お前はただのニートだ」
繁「アイコラスレではネ申だから」
神(気持ち悪いなコイツ…)
繁「いいから、先を続けろよ」
神「うむ…」
神「実は『死んだ方がいいほどくだらない奴リスト』のNo1を一人、地獄に叩き落してやろうと思っていたのだが……」
神「手違いでリストのNo2に載っていたお前を殺してしまったのだ」
繁「おいおいwww」
神「……(イラッ)」
繁「じゃあ、生き返らせろよ」
神(本当に偉そうだな…無職の分際で…)
神「残念だが、それはできん…」
繁「はぁ?」
繁「手違いで殺しといて何だそりゃ」
繁「ニートだって人は殺さねーぞww」
神「…マジですまん」
神「だが、かわりに異世界に転生させてやろう…」
繁「当然、チートでな」
神「……」
繁「あと、エルフがいい」
神「……」
繁「おい、何か言えよ」
神「わかった…」
繁「くっくっく…俺TUEEで異世界無双だぜ」
神「…なんかムカつくな、お前」
◇◆◇
こうして、神の怒りを買ったものの、山田繁は無事に異世界転生を果たし、エルフ族のシゲリオルとして新たな人生を始めることになったのである。
だが、人の性根というものは変わらない。
シゲリオルはこっちの世界でも定職には就かなかった。
それどころか、異世界転生者であることを鼻にかけた傲慢な態度をとり、『中世ヨーロッパ風』とか『未熟な文化にしては』などと散々に周囲を見下す発言を繰り返したあげく、完全に孤立することとなったのである。
だが、彼の心は強靭だった……
シゲリオル「ま、三国志知識で軍師を目指すゼ」
これが彼の現在の口癖である。
だが、三国志を知らない周囲の者たちは首を傾げるのみである。
そもそも彼の三国志知識はせいぜい赤壁までだ。
というか、大昔の軍記物語が異世界の実戦で使えるはずがない。
いや、それ以前にまずは仕官しろ!
いや、さらにそれ以前に仕官するためにまずは勉強しろ!
とにかく、何かしろ!シゲリオル!
働け!バカ!この野郎!
シゲリオル「ハーレムつくるゼ」
神(やっぱ駄目だコイツ…)
神(今度は手違いじゃなく殺そう……)
神とシゲリオルの最終戦争が幕を開ける……!