腹ぺこ王妃は聖剣になる前編
戦って戦って気付いたら王妃
キラビヤカな王宮に孤独でいるより、戦場の方が心休まる。
剣を振るうだけで人を殺しちゃうのにね。
崖に挟まれ、道を塞ぐ難攻不落の砦。
わたしは単身崖から飛び降り奇襲をかける。
見張りの兵に背後から忍び寄り心臓へサクッと。
心臓を上手く刺すと楽に殺せて、楽に死ねるそうだよ。
まず1人。
あまり殺さずに進みたいなと思っていたら、物陰から兵士が。
勘のイイ見張り兵だったんでしょうね、異変をいち早く察してコチラに顔を出したのが災いしちゃったね。
投げたナイフが刺さる。
少し苦しませちゃったかな。
2つ目の死体を隠す。
手早く手早く、急げ急げ!目的の門に向かって全力疾走、ただしステルス隠れ隠れで。
見張りはやや手薄?
深夜だもんね。
本当ならわたしだって寝てたいよ。
美容に悪いもの。
ほっぺた撫でる、ポヨンポヨン。
それはともかくお仕事お仕事。
気配を感じては死角に入ってやり過ごし、とにかく闇に紛れてダッシュ。
そして到着〜。
準備していた爆薬を門に設置。
時限式だから10分したら門を吹き飛ばす予定。
ソレを合図に味方の兵が突撃する手筈になっている。
はぁー疲れた。
これで任務も半分終わり。
というわけで。
そろそろイイよね、お腹が耐えられない〜。
ちょっと時間もあるし、お腹が空いたので携帯食を食べる。
「不味いよ」と思わずに口に出る。
でも食べないと、身が保たない。
わたしって燃費が悪いのよね〜。
携帯食である固形物を3個一気に頬張る。
不満だけど、一息つけた。
言い訳になっちゃうケド食欲旺盛なのには理由があるんです。
わたしには『人を殺すと猛烈に空腹感に襲われる』という呪いがかかっている。
なんで呪われているかとかの理由は今忙しいから、後で回想するとして…その代わりの特典もあった。
『腹ぺこ』の呪いの代わりに『自己再生能力』と『魔法無効』…我ながらインチキ臭いと思うけど、燃費の悪さを除けばこれってほぼ無敵だよね。
ついでにスプラッタ(死体)見ながらフルコース食べられる自信もあるよ、心苦しくてもお腹ペコペコには代えられないからね。
それで今回難攻不落と呼ばれる砦に一人で奇襲かけてます。
だってこの特典のおかげで無茶無理無謀は力押しできるんだもん。
そもそも砦攻略に多くの味方の命をかけたくないし。
わたしがんばる。
だから、ね?
頑張ってるからゴチソウ要求してもイイよね。
これ終わったらステーキとアップルパイを要求しよう!
じゃないとグレちゃうよ〜?
なにしろその分は働いてると思うのよ。
難攻不落というだけあって崖の角度は相当なものでアチコチ体を打って流石にしばらく動けなかった。
骨も何本か折れたし内蔵もイッちゃった、左目も転がってたかな?
おかげで再生に時間かかったもの。
イテテだよ、無茶し過ぎました。
そうそう!アップルパイにシナモンはいらないよ、苦手だから。
これは大事。
「よぉ〜し、パイ食べるために頑張るぞ〜!」
ゴミ箱の中に隠れたついでに、携帯食のゴミをポイ
ついでに顔隠し用のフェイスマスクも息苦しいから捨てちゃえ、ポイ。
そういえばゴミ箱に入れるくらいには痩せてきたかな。
戦闘前は結構脂肪があった、たぶんゴミ箱に入りきれないくらいには。
呪いのせいか極端です。
もちろん食えば太る!動けば痩せる。
おそらく10キロは減ったかな?
お腹を撫でて確認、アラヤダスッキリ。
さてさて食事も終わったし、もう一個の任務しなきゃね。
司令官倒し!
行儀よく足音はたてずに、たまに廊下の天井に張り付いたり、視線を躱して廊下を抜けたり〜と。
体軽くなってきたおかげで、さっきよりスムーズだ。アハハ。
目的の司令室到着。
戦争中とはいえ、夜間は流石に隙があるね。難攻不落に胡座をかいて油断し過ぎじゃない?
どれどれ〜?室内は〜?…どうやら3人かな。
話し声や衣擦れ等の物音からそう判断。
もっともそれより人が多くてもそんなに問題はないけど。
え〜と?
爆発まで残り7分でしょ?
ココから屋上まで2分あれば十分かなぁ?
残り食料は10食分、5分以内に用件を済ませばいいかな?
ノックします(コンコンコン)
「入れ」と中から声が。
「失礼しますね」
扉を開け、あらかじめ想定していた所に向け手を動かす。
入り口脇に立っていた兵士の喉に剣が突き刺さる。
ジャスト、ピンポイント。
他にはいないね。
人数を確認し、一気に部屋奥まで距離を詰める。
え?って顔してる司令官の横にいた男の首を跳ねる。
さてこれで残りは椅子に座って固まっている司令官なんだけど。
どこかでか見覚えある顔かなぁ?そのまま切ってもよかったのだけど、つい目が合っちゃった。
相手もわたしの顔に見覚えがあるらしく。
「お、王妃!」
「ごきげんよう、騒いだら即死ですわよ?」
正体がバレちゃった。
顔隠してないしね、別に構わないし。
あらためて顔を思い出してみると?
作戦書に記載されていた名前だけではピンときませんでしたが、思い出しました。ムカつく貴族の一人でした。
「司令官なんてされてるから最初どなたかたと思いましたわ」
青い顔をし、硬直する貴族。
「王妃様がお出ましになられるとはね」
「飾りの王妃と陰口を言われるよりマシなので戦場に来ました。」
「奴隷上がり風z「最後まで言わせませんわ。」
別に嫌いだから殺すわけじゃないけどー、傷つくなぁ。
普通の王妃はこんなことしないよね、成り上がりで玉の輿は嫌われますからね〜、わたし大出世ですもんね。
でも殺ってること、もといやってることはずっと同じですけどね、奴隷の頃から。
ちなみにこのバケモノじみた能力の他に、もうひとつの理由があって王妃になったんですけどね(タメイキ)
なおこの1話の最後で判明します、いいかげんでごめんね。
とりあえず燃料補給(ガサガサ、ゴソゴソ、モグモグモグ)
3人殺しちゃったし、食べ足りない。
作戦時間が15分と決められているからって15個しか食料もらえなかったよ。
実は出発前に2個食べちゃった。アハハ(冷や汗)
わたしは司令室に火をつけ、司令官の首を連れ、砦の屋上に向かうコトにします。
流石に敵陣の奥地のせいか、人が多いです。
首を左手に剣を右手に持ちながら歩くわたしの姿は…ドン引きされているようです、そりゃそうですよね。
悲鳴と怒声はもちろんバケモノ呼ばわりが拡がっていきます。
微妙な気分だけど仕事はこなさないとね。
「司令官倒しましたよ?投降して下さい」
廊下を走り抜けながら
階段を駆け上がりながら、繰返しアナウンスします。
動揺する兵達、それに寝ていた兵達が起き出してくるのが視界に入ります。
屋上に辿り着き、大声で再びアナウンスします。
「もうすぐ門が爆発しますので、投降したい方は爆発音までに武装解除し中庭に仰向けで寝転がって下さい。そうじゃない方は裏門の方から逃げるもよし…戦うも自由です」(×3)
急激に砦の中が騒がしくなってきました。
屋上にも兵がやってきて、わたしを取り囲みます。
「ふざけるな!」
大剣を構えわたしに突進してくる大男。
縦横無尽に大剣がわたしのいた場所を薙ぐ。
なかなかの連撃、攻撃範囲も広いし拡がる。
ステップで間合いを取りながら、他に戦ってきそうな男達の方に近寄る。
わたしという敵がありながら大剣の勢いに男達が攻撃に踏み込めない。
敵の敵(大剣)は味方だけど、わたし対多数にもちこませない。
この男強いけどバカだー、わたしに利用されているのに連携を取ろうともしない。
だけど好都合、お腹が減るから戦いたくないというのが本音。だからこうやって避けてるだけならそこまで減らないので時間稼ぎに丁度いい。
わたしを囲む殺気達。
心地いいなんてことはないけど、嫌いじゃないなと思った。
研ぎ澄まされる感覚に意識が覚醒するし、体が燃えるみたいに力が溢れる。
幼女と言われる歳の頃はじめて人に剣を向けた。少女になる頃には剣を握らない日はなかった。
そして今王妃になって多少ブランクはできたケドまた戦うことになるなんてね。
でも、しょうがない。王がそう望まれるのだから。
モノ思いにふけながら剣撃を躱し、敵兵を牽制しているうちに、門が爆発し味方の兵が次々に侵入してくる。
「そろそろ頃合いかな。」
投降しそうにないし、味方の犠牲を出したくないので、大男を倒すことにした。
この短時間で剣筋何度も見ちゃったからねぇ。
大剣が空を切り一番他の動きに移れないタイミングで胸を一突きする。
アッサリ倒れる大男。
それを見て投降する人間が増えたし、逃げて行く者もいた。
それでも挑んでくる者は多かった。
ヤバイ想定外!まさか下からよじ登ってまで、逃げずに戦う者が多いなんて。
一突き、薙ぎ払い、斬り降ろし
繰返し
立ち止まれない、止まない空腹。
アカン、ハラヘリ。
斬るだけじゃ足りず殴り&蹴る、見切って斬る
繰返す
空腹が限界、意識が跳びそう。
隙を見つけては、前もって包から出しておいた携帯食を頬張る。
が、スグになくなる。敵はなくなるどころか増える。
「ステーキ、しゃぶしゃぶ、りんご、バナナ、唐揚げ〜!」
唱えてたらだんだん幻が〜見えてきたよ〜(ヤバイ)
力が出るどころかヨダレしか出ない(涙)
返り血が口に入る。
なんでもいいから食べたい!ケド!これはイヤ!
まだカニバニズム(人間食べる)はしたことがない、絶対したくない、これ以上バケモノになってたまるか!
ああ、でも意識が朦朧としてきて動きが鈍る、反応が遅れる。
そのせいで背中を切られた!
だけど体を捻り反転しながら首をはねる。
「血と人肉は嫌!」
切られてもとにかく切る!
目の前にいる敵兵を真っ二つに切り下ろす。
「王妃!」
その時王の声が下の方から聞こえた。
やっときた…。
わたしは屋上から王目掛けて飛び降りる。
「来い!聖剣!」
王の声に反応しわたしの体が輝き姿を変える。
わたしは剣の姿となり、王の手元にピッタリと収まる。
とりあえず任務終了だ。
「ここからは余が相手をしよう、元勇者だよ?心してかかってくるといい。」
王はとある将軍の殺陣のシーンみたいに無双している。
ストレス解消もあるんじゃないだろうか?自分で戦わなくても味方の兵がいるでしょうにと勘ぐってしまう(苦笑)
あ!わたしの一番の特技なんだけど、人の身と剣の姿の使い分けができます。
聖剣になれる王妃なの。
聖剣だから娶って頂けたの…。
お読み下さり有り難うございます。
文がヘタでごめんなさい。