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102号室  小説家と天才少年 その4

 その3の続きです。


 リョーヘイが颯太くんにでれっでれっになってます。

 新が爽やかな変態に(笑)


 きっと次で終わるはずです(希望) 

 生まれた時からぼくは何でも人よりも覚えることが早かった。

 言葉の意味を覚えたのは一歳の時。

 足し算を覚えたのは二歳の時。

 文字をかけるようになったのは三歳の時。 

 漢字の意味を覚えたのは四歳の時。

 それらが異常であることを覚えたのは五歳の時。

 小学校に入学してもつまらなかった。

 ぼくは授業で習ったことは一度でわかるのに、他の子はわからない。

 先生の言葉は間違いだらけで、注意したらぼくが怒られた。

 誰もぼくをわかってくれなかった。

 大きくなっていくとお父さんもぼくを見てくれなくなった。

 仕事だから、といいわけのようにいって家を出ていた。

 お父さんは気づいてないのかな。

 ぼくは一歳になる前から一人ぼっちは寂しいってわかるんだよ。

 あの日、お父さんの様子がおかしかった。

 とても怖い顔をして、服やパソコンを大きなカバンに詰める姿はまるでここには帰ってこないみたいだった。

「颯太、逃げるぞ!」

「何からにげるの?」

 お父さんは何も答えずに、ぼくの手を引いて家を出た。

「お父さん、鍵を閉め忘れてるよ」

 お父さんは振り返らなかった。

 ぼくがこけそうになるくらいの速さで、どこかへ向かって走る。

 どこに向かってるの?

 何から逃げるの?

 何もわからなくてすごく怖かった。

「ぐあっ!」

 突然、お父さんが叫んで、ぼくを抱きしめてビルの物陰に隠れる。

 お父さんビルの壁にもたれかかって、ゆっくりとぼくを離した。

 その肩からは血が流れていた。

「お父さん、肩から血が流れてるよ!」

「颯太、よく聞け」

 お父さんはまっすぐな目でぼくを見て、ガラスの工芸品を触るように頬に手を当てる。

 温かいはずお父さんの手がとても冷たく感じた。

「俺は仕事に失敗して怖いやつらに追いかけられてる。俺と一緒にいたらお前も殺されるかもしれない。だからお前は一人で逃げろ」

 怖いやつらがどんな人たちなのかわからないけど、このままじゃ置いて行かれるってことはわかった。

「いやだ!一人ぼっちは寂しいよ。お父さんと一緒じゃなきゃいやだよ」

 お父さんは嬉しそうな顔をする。

 どうしてそんな顔をするの?

「お前はこんなダメな父親でも父親だといってくれるのか」

「お父さんはダメな父親じゃないよ!お父さんはぼくを抱きしめてくれた!頭を撫でてくれた!ぼくの名前を呼んでくれた!ぼくはお父さんが大好きだよ」

「ありがとな。でもごめんな。もう一緒にいられないんだ」

 お父さんはふにゃりと笑って、ぼくの頭を優しく撫でる。

「俺と別れたら“四方山久遠”っていう男を探せ。そいつにこれを渡して三神颯介そうすけの息子だといえばお前を助けてくれるはずだ」 

 お父さんは震える腕でぼくに三、四センチくらいのUSBを渡した。

 どこにでも売ってあるそれはお父さんの仕事道具の一つだ。

「お父さん」

 こんな大切な物をもらえない。

 そう思い、お父さんを見上げた。

「さっさと行け!」

 お父さんはとても怖い顔で僕を突きとばした。

 僕は泣きながら、お父さんと別れた。

 どうしてお父さんは怒ってるの?

 今日はわからないことだらけだ。

 すぐに戻ったらまた怒られそうだったから、二時間ほど待ってお父さんの元に帰った。

 赤い水溜りの中でお父さんが眠っていた。

 すごく幸せそうに笑っている。

 だけど全身傷だらけで、血がたくさん出てる。

「お父さん、こんなところで眠ったら風邪ひいちゃうよ?」

 側に座って体をゆすってみても、お父さんは目を覚ましてくれない。

 それどころかお父さんはすごく冷たかった。

「お父さん。ねえ、起きてよ。お父さん、いつまで寝てるの?」

 僕は知っている。

 テレビや新聞で知ったから。

 でもそんなわけがない。

「おとう、さん。ねえってば。め、あけてよ」

 声も体も震える。

 ああ、嘘だ。

 お父さんが死ぬなんて嘘だ。

 でも僕に一度もお父さんは嘘を吐かなかった。

「お、とう、さん……」

 わずかに残ったお父さんの暖かさを消すように雨が降り出した。

 僕の涙は水溜りに溶けて、見えなくなる。

 僕の記憶はそこで一度途切れて、その後の記憶は病院から始まる。

 病院で優しそうなのに怖いおまわりさんと佐藤良平さんに会った。

 お父さんがいなくなったから、しばらく僕は佐藤さんと暮らすことになった。

 でも、お父さんは僕に四方山久遠さんを探せっていってた。

 僕もお父さんのようになるかもしれない。 

 そんな僕と一緒にいたら佐藤さんも殺されるかもしれない。

 これ以上誰かを頼ったら、また死んじゃうかもしれない。

 それなら僕一人で探そう。 

 チャイムが鳴って、リョーヘイさんの友達という人がやってきた。

 僕から意識がそれている間に僕はベランダから外に飛びだした。

 外は寒かったけど、あの日のお父さんよりもずっと暖かい。




「哀れな子羊が群れからはぐれたな」

 ビルの屋上で楽しげに一人の青年が小型の望遠鏡のような光学照準器スコープを覗きこみながら呟いた。

 望遠鏡の先に映っているのは三神颯太。

 青年は背負っていたゴルフのクラブケースのような黒い革袋を地面に降ろした。

 チャックを開けると中には分解された黒く光る狙撃銃スナイパーライフルが入っていた。

 青年は慣れた手つきでそれを組立て、光学照準器を取りつけた。

 片膝を立てて、銃身を肩に乗せ、体制を安定させる。

 そして光学照準器を覗きこみ、引き金に指をかける。

「さて半年ぶりに殺戮パーティーの続きを始めるとしよう」

 口元を吊り上げた青年が突きつけた銃口の遥か先に颯太の小さな頭があった。

 



 外は芯まで冷えそうな寒さだった。

 思い当たる場所なんてないから、目についた場所を当てもなく進み、三神くんを探した。

 焦る僕の携帯電話の着信音が鳴るが、無視する。

 だが、何度もなり続けるそれに僕はしぶしぶ画面を開いて通話ボタンを押し、耳に当てた。

「やあ、リョーヘイくん。久しぶりだね」

 電話の相手は猫さんだった。

 のんびりとした声が僕の耳に届く。

「猫さん、お久りぶりです」

 今の僕は猫さんの相手をしている暇はない。

 電話を終わらせる口上を告げる前に、猫さんが口を開いた。

「君に一つ質問をしよう。君はこれから大学を卒業して社会に出て仕事する。その時に誰の為に生きていくんだい?一生付き合う自分の為?それとも愛する家族の為かい?それとも名も知らぬ他人のため?」

 のんびりとした声の裏に反対の感情が聞こえた気がした。

 何のためではなく、誰のため。

 それは五歳の時に決めている。

「僕は皆の為に生きていきます。僕を大切に思ってくれる人がいるのなら僕はその人を大切にします」

 つまりその人たちを傷つける人は容赦しない。

 僕の全力を持って排除するまでだ。

「それが君の答えなんだね。なら颯太くんは君の大切な人に入るの?」

 彼とは会って間もない。

 だけど、昔の千秋に似ていてほっておけない。

 理由なんてそんなものだ。

「はい。“颯太くん”は僕の大切な人です」 

 決意を猫さんに伝えるように僕は胸を張って答える。 

「そうか。なら助けてあげないとね」

 何もいっていないのに、猫さんに全て見透かされていた。

 きっと颯太くんのお父さんのことも知って、対策をとられている。

「リョーヘイ君。これから色々あるだろうけど頑張るだよ。だけど困ったらいつでも『黒猫』においで。ここは悩んだり困ったりつまずたり転んだり落ち込んだり悲しんだり疲れたりした時に珈琲と軽食で一休みする場所だから」

 優しさが溢れた言葉に僕は背筋を伸ばした。

 こんなに僕のことを考えてくれる人が側にいてくれてよかった。

 でも、まだ僕は頑張れるから、それに甘えない。

「ありがとうございます」 

 通話を切って再び、颯太くんを探す。

 颯太くんはアパート近くの公園のドーム型の遊具の中に隠れるようにいた。

 小さな体をさらに小さくして震えながら寒さに耐えていた。

 そっと手を伸ばした。

「帰ろう。ここじゃ寒いよ。風邪も酷くなる」

 しかし、颯太くんは黙ったまま手を取ろうとしなかった。

 そういえば三神くんにちゃんと自己紹介をしていない。

「僕の名前は佐藤良平。職業は大学生と小説家をやってるんだ。仲のいい人は皆リョーヘイって呼んでるよ」

 颯太くんはきょとんとしたまま何も答えない。

 声のかけ方を間違えただろうか。

 長い沈黙の後、颯太くんは戸惑いながら口を開いた。

「……颯太。三神颯太、小学二年生です。お父さんと一緒に暮らして“ました”」

 やっと聞き取れるとても小さな声だった。

 その声は泣くのを堪えているように聞こえた。

「そっか。お父さんと一緒に暮らしてたんだね」

 いつからかわからないけど、三神くんはお父さんが亡くなったことを知っていた。

 不安で仕方ないはずなのに気丈に笑顔を見せて、泣くのをずっと我慢していたようだ。

 颯太くんは膝に顔を埋めた。

「お家に帰りたくないの?」

 三神くんは小さく縦に頷いた。

「そっか。なら君の家族が迎えに来てくれるまで僕の家で暮らさない?もちろん颯太くんが嫌なら別の方法を探すよ」

「ぼくの家族はお父さんだけです。でもお父さんは怖いやつらに殺されました。きっとぼくを探してる。だから一緒には暮らせません」

 涙混じりの声は少しだけ聞き取りにくい。

 颯太くんは父親が誰かに殺されたことも最初から分かっていたのかもしれない。

 そしてその人に自分も狙われる可能性があることも。

 僕らが思っていたよりも彼はずっと賢かった。

 とても小学二年生の考え方ではない。

 きっとこういう子を天才っていうんだろう。

 なら僕らがとる対応は最初から間違っていた。

「僕は迷惑だと思ってないよ。むしろもっと一緒にいたいと思ったよ」

 颯太くんは勢いよく顔を上げた。

 涙に濡れて赤く腫れた目は信じられないものを見たかのように、二倍の大きさに見開いていた。

「今日、会った僕の友達を覚えてる?」

「はい」

「小さい方は千秋といって、空手が強くて、瓦を一度に二十枚割ることが出来るんだ。大きい方は新というんだけど彼は体が丈夫でこの間は道路に飛び出した猫を助けるために大型トラックに()かれたんだ」

 颯太くんが息を飲み、さらに目を見開いた。

 最初は信じられないだろう。

 僕も目の前で見るまで信じられなかった。

「それだけじゃないよ。隣の人は武器の扱いが上手い人と不死身な人。他には体が機械で出来てる人、未来から来た人、異世界から来た人、喧嘩が強い人、天使みたいな不思議な力を持っている人もいるよ」

 本当に不思議なことに様々な強さを持った人が集まっている。

「僕の住んでるアパートの人は皆、どこか強いんだよ。だから危ない目に遭っても誰かが助けてくれるんだ。だから颯太くんと一緒に暮らしても大丈夫なんだよ」

「僕はもう一人ぼっちじゃないの?」

 敬語を忘れた言葉はきっと今まで隠していた本音だ。

 僕は颯太くんの小さな体を腕の中に包んだ。

 びくりと震えるが、無視する。

「そうだよ。颯太くんはもう一人ぼっちじゃないよ」

 ついに颯太くんはせきを切ったようにぼろぼろと大粒の涙を流した。

 声を出さないのは元からか、気を使っているのかわからない。

 でも、泣けるなら泣いた方がいい。

 溜めこむのは体にも心にも毒だ。

 僕でよければいつでも胸を貸すから、我慢だけはしてほしくない。

 優しく頭を撫でながら、母親が赤子をあやすように背中を叩く。

 いつまでそうしていただろうか。

 少し照れたような顔をして、颯太くんが僕を見上げた。

 目元が兎のように赤かったが、明日には治ると思う。

「ありがとうございました、リョーヘイさん」

「リョーヘイでいいよ。敬語も止めてもっと楽に喋ってほしいな」

「りょ、リョーヘイ?」

 颯太くんはすごく恥ずかしそうに僕の名前を呼ぶ。

 僕は嬉しくなって優しくそうたくんの頭を撫でた。

 颯太くんはくすぐったそうに笑う。

「帰ろうか」

 僕は撫でるのを止め、立ち上がり手を差し出した。

「うん!」

 と、元気よく返事をして、颯太くんは僕の手を握った。

 その笑顔が心からの笑顔に見えたのは、僕の気のせいだろうか。




 家に帰ると千秋が泣きそうな顔で出迎えた。

 僕たちの帰りが遅くて心配したそうだ。

 新からはこんこんと小さな子の接し方や危機感のなさやらを説教をされた。

 全面的に僕が悪かったので甘んじて受ける。

 笑顔で背後からどす黒いオーラが出ていたのも理由の一つだ。

 颯太くんが僕を庇ってくれたおかげで説教は三十分程度で終わった。

 さすがに颯太くんには説教できないようだ。

 いつもの五分の一程度で済んで助かったとこっそり息を吐いた。

 二人にはテーブルで待ってもらい、僕は約束通り夕食を作ることにした。

 遅い夕食だがこればっかりはしょうがない。

「颯太くん、おかゆとうどんどっちがいい?」

「うどん!」

 颯太くんではなく、千秋の大きな返事が聞こえた。

「アキじゃないよ」

「颯太くんも食べたいだろ?」

 千秋は笑顔で颯太くんに確認をとる。

 少し間が()いてから、「どちらでもいいという」返事が返ってきた。

 やはりまだそうたくんは食欲がないのだろう。

「俺も手伝うよ。千秋は颯太くんと遊んでてね」

 新が立ち上がり、僕の後をついてくる。

 時間がないから助かった。

 僕はうどんとおかゆの両方を作ることにした。

 新にうどんを任せて、僕はお粥を作る。

 出汁、ご飯を入れて、煮立って水分がなくなってきてから溶いた卵を入れた。

 器に盛り付けて完成だ。

 10分ほどでどちらも作り終えることが出来た。

 箸とうどんとおかゆをトレイに乗せ、名ばかりのリビングに運んだ。

 散らかっていたリビングの机の上は千秋によって、綺麗に片付けられていた。

 千秋は掃除がプロ級に上手だ。

 昔、大切な物を捨てられないように自分で掃除していたら上手くなったそうた。

 何とも残念な理由だ。

 デーブルでは千秋とそうたくんが待っていた。

「おいしそうだな」

 うどんを見て千秋はそういった。

 新の顔が頬を赤らめつつ嬉しそうに笑う、という極上の笑顔に変わる。

 これを何も知らない女や一部の男が見たらきっと卒倒する。

 見慣れている僕は、乙女か!と心の中でツッコミを入れた。

 颯太くはなんだか嬉しそうに笑っていた。

「颯太くんはどっち食べたい?」

 そうたくんは激しく首を横に振った。

「まだお腹空いてない?」

 颯太くんは首を縦に振った。

「そっか。ならご飯はもう少し後から」

 と僕がいいかけた時、ぐぅうううううと大きなお腹の音がした。

 僕はちらりと千秋を見た。

「俺じゃねえよ!」

 千秋は顔を熟れた林檎のように赤くする。

 それを見た新の目に色欲が浮かぶ。

 何を想像したのか知らないが、人の家でその目はやめろ。

 颯太くんの健全な教育に悪い。

「僕でもないし、新でもないみたいだ。もしかして今の颯太くん?」

 颯太くんは罰が悪そうに俯いた。

「颯太くん、お腹が空いているならちゃんと食べないと早く風邪治らないよ。それともうどんもおかゆも食べたくない?」

 颯太くんは首を激しく横に振った。

「じゃあどうして食べないの?」

 新が優しく声をかけるも、そうたくんは顔を上げようとしない。

 遠慮をしているのだろうか。

 それとも嘘を()いたことを反省しているのだろうか?

 多分、両方だ。

「そっか。颯太くんは僕と新の作った料理を食べたくないんだね。じゃあもったいないけど颯太くんのために作ったこれは捨てるよ」

 そうたくんの肩がピクリと動いた。

「ちょっと」

「せっかく颯太くんのために作ったのにもったいないな。でも颯太くんが食べないっていうなら仕方ないね。これは捨てるよ」

 止める千秋を無視して、僕はわざと音を立て立ち上がった。

 新はわかっているようで何もいわない。

 勢いよくそうたくんは顔を上げた。

 前髪の隙間から何かが光っていた。

「食べ、る。ぼくちゃんと食べる。だから捨てないで、捨てないでよ」

 颯太くんは目に涙を溜めながらそういった。

 冗談だったのだけれど、颯太くんは本気にしてしまったらしい。

 さすがにちょっとやりすぎた。

 僕はその場に座りなおした。

「ごめん、颯太くん。冗談だよ」

「もう!良平の冗談は分かりにくい!本当に捨てるかと思ったぞ!」

 その言葉に僕と新は苦笑した。

「うん。よくいわれるよ。でも、颯太くん。そんなに気を使わないでいいよ」

「そんな難しい言葉は颯太くんに意味がわからねえよ」

 と千秋は僕を笑った。

「いや、アキより颯太くんの方が頭がいいよ」

 と僕もつられて笑った。

「どういう意味だ、それ!」

「そのままの意味だよ。颯太くん、両方を僕と半分ずつ食べよう」

 おかゆとうどんをそれぞれ別の器によそってあげる。

 その横で憤る千秋を新がなだめる。

 ふと、颯太くんを見ると、声をあげて笑っていた。

 その姿は年相応で、僕も小さく笑う。

 その後、夕飯を食べ、散々騒いでお開きになった。

 千秋は泊まりたがったが、寝るスペースがない、というとしぶしぶ帰って行った。

 帰る間際、新の目が狼のそれだったから、多分二人の夜はこれからだ。

 颯太くんの健やかな成長のため、俺も眠ろう。

 テーブルを片付けて、布団を二組敷いて、並んで横になる。

「千秋さんと新さんにまた会えるかな?」

 颯太くんは少しだけ布団から顔を覗かせる。

 二人を気にいってくれたらしい。

 だが颯太くんの健全な成長のためにあの二人に会わせるのは気が引ける。

 特に新が。

「向こうから会いに来るよ」

 我の強い二人があれだけ気にいったんだ。

 こっちから行かなくても颯太くんを構い倒しに来る。

 颯太くんは嬉しそうに笑った。

 うん、その笑顔を一生守りたい。

 いや、どんな手を使っても守る。

「おやすみ、リョーヘイ」

「おやすみ、颯太くん」

 目を閉じた颯太くんはすぐに寝息をたてた。

 今日はいろいろあった僕も疲れた。

 明日のために今日はもう寝よう。


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