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番外編 アパートのハロウィン

 一日遅れのハロウィンです。


 ※時系列的に登場しないキャラクターがいますが、番外編としてご了承ください。

「当然ですが質問です。今日はなんの日でしょうか?」

 リョーヘイが目の前の六人に問いかけた。

「ハロウィン!」

 四つ子が元気よく答える。

「そう。今日はハロウィンだね。ハロウィンがどんな行事かわかる人?」

「お化けの仮装をして家をまわってお菓子をもらう行事だよねっ!」

 未来が元気よく手をあげて答えた。

「まあそうだね。でももともとは秋の収穫を祝って、悪魔とかを追い出すための行事なんだよ」 

「そうなんだ。リョーヘイはものしりだね」

 颯太は尊敬の眼差しでリョーヘイを見上げた。

「今回は現代風にアパートの住人と猫さんのところを順に回ってお菓子をもらってね」

「リョーヘイもお菓子くれるのか?」

 お菓子という言葉に雨の目が輝く。

「うん。僕も自分の部屋で待ってるよ」

「楽しみです!」

 晴はほんのりと頬を赤くする。

「それじゃあそれぞれの衣装に着替えて行こうか」

「はーい」

 六人はそれぞれに渡された紙袋の中身に着替えた。

 


 雨は狼少女。

 狼の尻尾と耳はふわふわしていて見た目に反しない触り心地の良さがある。

 いつも元気に外を走る彼女にぴったりな衣装だ。

 晴は天使。

 新雪のように真っ白なワンピースとブーツ、天使の輪に羽根までついている。

 まるで彼女の心を表しているようだ。

 雲は悪魔。

 晴と対照的な真っ黒なワンピースとブーツ、先の尖った悪魔の角と尻尾が動く度に揺れる。

 普段の彼女の言動を元にイメージにしたのだろう。

 雪はゾンビ。

 ぼろぼろの服に縫い傷や腐った肉のような特殊な傷テープは完成度が高く、本当にそうであるようだ。

 口数の少なさもまたゾンビっぽい。

 未来は魔女。

 とんがり帽子にマントやブーツ、どれもが真っ黒だ。

 だが明るい笑顔のせいか禍々しさは全く感じない。

 颯太はジャック・オ・ランタン。

 頭二回りも大きなカボチャの被り物に濃い紫色のマント、手には小さな蝋燭入りのカボチャのランタン。

 怖い顔の被り物でも颯太が被ると可愛く見える。



 着替え終わったらいよいよ出発。


 まず向かったのはヴェルの部屋。

 お決まりの台詞を六人で声を揃えていった。

「トリックオアトリート!お菓子をくれないといたずらするぞ!」

「最初は俺か。では『トリート』だ。受け取ってくれ」

 出迎えたヴェルが差し出したのは中身が見えない黒い小袋だった。

 口を赤いリボンで閉じてあり、見た目は大変可愛らしい。

「ぎゃあああああ!ヴェル兄はなんてもん入れてんだよ!?」

 さっそく開けた雨は盛大な悲鳴を上げた。

 そう、中に入っていたのは……。

「ただの蜘蛛形グミだぞ?ハロウィンらしくていいだろ。赤色が苺、青色がサイダー、黄色がレモン、緑色が青りんご、黒色がコーラとそれぞれの味がするらしい」

 色とりどりのそれはデフォルメされてはいたが、どう見ても蜘蛛だった。

 これを食べるには相当の覚悟がいる。

「なんてセンスをしているのよ!?トマ以上だわ!」

 雲はヴェルのお菓子のセンスに顔を青ざめる。

 だが本人は善意でくれた以上いらないとはいえず、六人は微妙な気持ちで次の部屋へと向かった。


 

 

 次はフェイトの部屋。

 ヴェルのことがあったが、センスのいいフェイトだからと期待する。

「トリックオアトリート!お菓子をくれないといたずらするぞ!」

「おや?では颯太は私がお菓子を渡せなかったらどのような悪戯をするんですか?」

「え?えっと……」

 颯太は視線をあっちへこっちへ彷徨わせる。

 フェイトはその姿を面白そうに見つめた。

 しばらくして颯太はフェイトの顔をまっすぐに見つめてこういった。

「フェイトさんを嫌いになります!」

 それ、いたずらじゃない!

 晴達はツッコミを入れる。

 だが、好奇心ゆえに声には出さない。

 颯太の言葉にフェイトの顔が凍りつく。

「……意地悪をいってすみませんでした。お菓子をどうぞ」

 罰の悪そうな顔をしたフェイトはそっとハロウィンらしいお化けのイラスト入り小袋に包まれたお菓子を差し出した。

「フェイトさん、ありがとうございます!」

 颯太は満面の笑みでそれを受け取る。  

 小袋の中身はデフォルメされた猫の形をした色とりどりな飴。

 どれも可愛らしくて、食べるのがもったいないほどだ。

「さすがフェイトさん!」

 六人の中でフェイトの評価が上がったことはいうまでもない。




 次は日向と自由の部屋だ。

「トリックオアトリート!お菓子をくれないといたずらするぞ!」

「……忘れとった」

 日向は申し訳なさそうな顔をする。

「ソウイエバ今日ハハロウィンデシタネ」

 自由は相変わらずマイペースだ。

「お菓子をくれない人にはいたずらだよっ!」

 未来の言葉を合図に六人はいたずらを始めた。

 二人にしたいたずらは『くすぐり』だ。

 機械だからと侮ることなかれ。

 二人の体はあらゆる刺激に対して人並み以上に反応できる。

「俺が、わるっ、かった、とよ!だっから!もう、やめ、て、く、れん?」

 日向は敏感なところを羽で撫でられ続けるような感覚に涙目になっている。

「コ、レガ、クス、グッタ、イ、トイウ、感覚デス、カ。マル、デ、自、分ノ、体デ、ハナイ、ヨウニ、ドウ、ニモデ、キマ、セン」

 自由はいつも以上に発音しにくいらしく聞き取りにくい。

 十分にいたずらをしたところで二人を開放した。



 

 次はトマの部屋だ。

 六人はごくりと唾を飲みこむ。

 さてトマはどんなお菓子を用意しているのだろうか。

「トリックオアトリート!お菓子をくれないといたずらするぞ!」

「ええっと『トリート』だったか?ほらお菓子」

 トマは血のように真っ赤な包み紙のお菓子を三つずつ六人に手渡す。

 もうすでに嫌な予感がする。

「ありがとうございます。……きゃあああ!?」

 晴は恐る恐る包み紙を開け、予想が当たり叫び声を上げた。

 包み紙の中身は本物の眼球そっくりな飴。

 しかもものずこく血走っていた。

「こんな気持ち悪いのどこで見つけたのよ!どんなにお腹が空いても食べる気しないわ!」

「……ヴェルの……方が……マシ」

 トマのお菓子に大ダメージを受けながら次に向かった。




 次はアキの部屋だ。

 ある意味予想通り、当然のように新も一緒にいた。

「トリックオアトリート!お菓子をくれないといたずらするぞ!」

「『トリート』ってな!ほら!受け取ってくれよ」

「アキと一緒に作ったんだよ。美味しくできたから大事に食べてほしいな」

 二人から渡されたのはオレンジ色の小袋にラッピングされたクッキー。

 コウモリの形が可愛らしく、バターのいい匂いが食欲をそそる。

「どのくらい新が作ったの?」

「アキが調味料を測りとラッピングをして、僕は残りを作業をしたんだよ」

 遠回しにいっているが作ったのはほぼ新だ。

 アキが作っていないことにホッと安心した。




 次はリョーヘイの部屋だ。

「トリックオアトリート!お菓子をくれないといたずらするぞ!」

「『トリート』でお願いするよ」

 リョーヘイが差し出したのはペン立てのように、コップに包装されたゴーストのロリポップチョコだった。

 ホワイトチョコにブラックチョコで顔が描いてある。

「すごくかわいいねっ!ありがとう、リョーヘイっ!」

 未来は満面の笑みを浮かべた。

「どういたしまして」

 リョーヘイもつられて笑顔になる。

 


 次は灯火と清水の部屋だ。

「トリックオアトリート!お菓子をくれないといたずらするぞ!」

「うわぁあああ!?ゾンビィイイイ!?」

 灯火は雪を見るなり、頭を抱えてしゃがみこんだ。

 六人は灯火の大げさな反応に戸惑う。

「『トリート』ですよ!皆で仲良く食べてくださいね!」

 しかし清美は灯火を無視して六人に小袋に包んだパンプキンパイを配った。

「ありがとう。清美さん、灯火さんは大丈夫?」

 颯太は心配そうに灯火を見やる。

「お化けが苦手なだけなので大丈夫ですよ」

 清美は明るく笑う。

 灯火はなんてハロウィンに向いていない人だろう、と思う六人であった。




 最後は猫の喫茶店。

 ここぞとばかりに声を張り上げて、扉を開く。

「トリックオアトリート!お菓子をくれないといたずらするぞ!」

「『Happy Halloween』。無事にここまでこれてなにより。今年はかぼちゃプリンを作ってみたよ」

 猫は可愛らしいお化けのお客様を笑顔で出迎えた。

「今、かぼちゃプリンっていったわね!?私に早く食べさせなさい!」

「猫のお菓子は魔法みたいにうまいから楽しみだ!」

「これ、カラメルでお化けの顔が描いてあるよっ!?」

「……なめらかな舌触り……かぼちゃの甘み……バニラの香りが絶妙」

「今まで食べたどのかぼちゃプリンよりもおいしいです!」

「ほかのみんなにもわけてあげたいな」

 六人は思い思いにかぼちゃプリンを味わう。

 その様子を猫は微笑ましそうに眺めていた。




 余談。

 インターフォンが鳴り、ヴェルは灯火でも来たのかと玄関の扉を開けた。

「ひっ!な、なんの用ですか?」

 外にいたのはフェイトだった。

 植えつけられたトラウマが蘇り、ヴェルの顔から血の気が引く。

「そんなに怖がらないでください。まだなにもしていませんよ?」

 フェイトはネズミをいたぶる猫のような笑みを浮かべ、ヴェルを観察する。

「きょ、きょ、今日はバイトで疲れたので失礼します!」

 ヴェルは扉を閉めようとするも、強い力で遮られる。

「せっかくいい玩具を見つけたのに私が逃すとでも?」 

 とてもいい笑顔だが、いっていることは恐ろしい。

「な、なにをするつもりですか?」

「ふふ。なにをするつもりだと思いますか?」

 フェイトはさらに口の端を釣り上げる。

「さあ口を開けなさい。素直な子には悪いようにしませんよ?」

 ヴェルは恐怖と闘いながら、いわれるがままにゆっくりと口を開く。

 下手に反抗などして、さらに恐ろしいことになりたくないからだ。

 ひょいと口の中に放りこまれたそれに思わず目を強く閉じる。

「……っ!?あれ、美味し、い?」

 最初は怯えていたものの、それがなにかわかると、恐怖は霧散した。

「バイトお疲れ様でした。明日はよろしくお願いしますよ」

 ヴェルの口に六人に渡した飴と同じ物を渡したフェイトは満足げにその場を後にした。

 残されたヴェルはポツリとこぼす。

「あの人、何しに来たんだ?まさかこれを渡すためだけに?いやそんなわけがない。いやしかし……」

 咲楽は六人の後をついて行って、カメラ係とボディーガードをしていました。


 同時刻、久遠は逃げ出そうとしたところをリアンとクロエに捕まり、仕事をさせられていました(笑)

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