303号室 吸血鬼 その2
※ぬるいですが性的な表現があるので、苦手な方は注意してください。
扉を全力で閉めようとしたが、姉は扉の隙間にヒールの爪先を突っ込んで、阻止した。
手慣れた動きについ舌打ちが漏れる。
訪問詐欺よりも質が悪い。
「久しぶりに会ったお姉ちゃんに対して最初の一言が帰れって酷いわね。一晩くらいいいじゃない。この体をあんたの好きなようにしていいのよ?それとも家に入れたくない理由でもあるの?」
姉はふざけたことをいいながら僕の核心をついてくる。
そういうところが昔から苦手だった。
「今までふらふらと男漁りをしていた姉さんの気まぐれに付き合いたくないだけだよ。泊まるところに困っているなら実家に帰りなよ」
「女の子とも楽しんだわよ。実家に帰るなんて死んでも嫌。だってパパとママに結婚させられるもの。あたしはまだまだ恋したいわ」
「いい加減真剣に好きな人を見つければいいでしょう」
「出逢う人皆がいい人なんだから選びようがないじゃない」
姉は自慢げに脂肪の塊を揺らした。
これにどれだけの人間が骨抜きにされたのだろうか。
「いいこといってるようだけど意味違うでしょう。体だけで判断するのは間違ってるって何度もいったよね」
「何いってるのよ。体の相性は大切よ。じゃないとどんなに顔と性格が良くてもイケないもの」
「姉さんはもう一生結婚できないと思うよ。というより相手が可哀想だから結婚しないほうがいいね」
「それもそうね。あたしって縛られるの大嫌いだから。あ、物理的に縛られるのは大好きよ」
また知らなくていい姉の性癖を知った。
こんなくだらないことを知るくらいなら、もっとアキのことを知りたいくらいだ。
結婚式はやっぱり六月がいいよね。
ウエディングドレスもいいけど、タキシードも見てみたいなあ。
どっちもアキに素晴らしく似合うのは目に見えている。
でもヴェール越しに照れるアキが見たいから、やっぱりウエディングドレスがいいな。
嫌がって着てくれなさそうだけど。
「あたしよりもあんたはどうなのよ?ご執心の『フォール』とは仲良くなったの?それともまだ友達のまま?」
姉は僕が『フォール』と仲良くなるために同じ大学に進学したことは知っている。
だけど、本名が『黒野原千秋』であることを知らないし、顔も知らない。
老若男女を食ってきた女だ。
その目は肥えていて、すぐにアキの魅力に気づき、食べようとするだろう。
だからこそ姉にだけはアキを見せたくなかった。
「姉さんには関係ねえだろ!いいからさっさと自分の家に帰れよ!」
居座り続ける姉についつい口調が荒くなった。
このままではアキが起きてしまう。
僕の焦りに気づいた姉はにやりと口を歪めた。
「ふうん。口調が乱れるほど隠したいことがあるのね。ますます気になるわ。ねえ、何を隠してるのよ?」
「何も隠してない。早く帰らないと警察呼ぶよ?」
こんな姉は不法侵入の現行犯と強制猥褻罪で捕まった方が世間のためになる。
「そんなにイヤラシイことを隠しているの!?さすがあたしの弟ね!お姉ちゃんはどんなあなたでも受け入れられるわ!だから早く見せなさい!」
なぜか姉は息を荒くし、頬を赤くする。
勝手に変な妄想でもして興奮しているのだろう。
ある意味間違ってはいないが、とんでもない誤解だ。
姉は血走った目で扉をこじ開けようとして来る。
まるでホラー映画の主人公になった気分だ。
「この変態が!」
まさかこの言葉を姉にいうことになろうとは思わなかった。
だが、今の姉を表すにはそれ以上の言葉が浮かばない。
通常の人なら怒り出す台詞も姉にとっては、褒め言葉か、喜ばせる言葉にしかならない。
厄介なことに今回は後者だった。
「ああ!その汚物を見るような冷めた目いいわ!才能あるわよ!だからもっと罵ってちょうだい!」
情欲に染まった目で見てくる姉が本気で気持ち悪い。
実の弟に欲情するな。
僕にそんな趣味はないし、アキ一筋だから他の人を抱くつもりも抱かれるつもりもない。
「新、その人誰?」
聞き間違えるはずのないアキの声に思わず、ドアを閉める力が弱くなった。
その隙を逃すまいと姉が家の中に侵入してくる。
「か」
「か?」
意味不明な姉の言葉を復唱するアキは言葉を覚えたての子どもようで可愛い。
その視線が姉ではなくて僕に向いていたらもっとよかった。
「可愛い!可愛すぎるわ!何この子!新の彼女?それとも彼氏?あたしはどちらでも構わないけれどいつの間にこんな子を家に連れこんでいてのよ!お姉ちゃんに教えてくれなきゃだめじゃない!さあベットに行きましょう!?」
先ほどよりさらに息を荒くした姉がアキに手を伸ばした。
汚いその手を遮るように僕はアキを背後に隠す。
これ以上、姉と同じ空間にいたらアキが汚れてしまう。
「だから見せなかったんだ!それ以上アキに近づかないでくれる!?アキが汚れる!いやもう死んでよ!いますぐ僕らの知らない場所で一人寂しく死ね!」
「独占欲が強い男は嫌われるわよ。それよりアキっていうのね。うふふ。可愛い名前。二人が嫌なら三人でしましょ。時間はいくらでもあるのだから」
ヤることが決定事項であるかのような姉の態度に怒りを通り過ぎて、殺意がこみ上げてきた。
僕がアキとここまでの関係になるまでに膨大な時間がかかったというのに。
もちろん、費やした時間は嫌ではなくとても幸せな時間だった。
「指一本でもアキに触れてみろ。生まれたこと後悔させてやる」
殺意がただ漏れになっているが気にしている余裕はない。
アキがこの場にいなければ、すでに手を出していた。
「新もお姉さんもちょっと落ち着けよ」
アキの声に昂っていた感情が少しだけ落ち着いた。
「お姉さんだなんてよそよそしいわ。彩香さんって呼んで、可愛いあたしのアキくん❤」
だが、すぐに姉の言葉で怒りが最高潮を迎えた。
よろしい。ならば殲滅だ。
「リョーヘイ、助けてくれ!新と新の姉ちゃんが喧嘩してて俺じゃ止められないんだ!」
草木も眠る丑三つ時に鳴り響いた着信に出ると、開口一番に幼馴染みで親友の千秋がそういった。
起きたばかりの頭では早口でいわれたそれを理解するのに時間がかかる。
「……喧嘩?……新が?……姉さん?」
意識を覚醒させる意味もこめて、千秋の言葉の一部を繰り返した。
「だから新の姉さんが新の家に来て喧嘩になってんだよ!ちょっ!新、落ち着けって!冷蔵庫を投げようとすんな!ほんとに彩香さんが死ぬぞ!」
スピーカーの向こうで何かが割れる音と、壊れる音と怒声と笑い声が聞こえてきた。
いったい新の部屋で何が起きているんだろう。
気が乗らないが、千秋の焦りようとスピーカー越しに聞こえた音から、このまま放置しては部屋が崩壊しかねない。
何より、千秋至上主義の新が千秋の制止を振り切ってまで暴れている時点で十分異常だ。
「よくわからないけど、今からそっちに行くからアキは安全な場所に隠れて」
部屋着に薄いパーカーを羽織って部屋の鍵を閉めて、階段を昇り、新の部屋の前に辿りつく。
外にいても聞こえる物音に、溜め息を吐いた。
予想以上に新が暴れているようだ。
一応ノックしてみるが、聞こえていないのか誰の反応もない。
鍵がかかっていなかったので勝手に扉を開けて中に入る。
足の踏み場もないほど壊れたもので溢れた部屋で新とアキと見覚えのある女が対峙していた。
「新、お邪魔するよ」
冷蔵庫を片手に全力投球しようとしていた新の動きが止まった。
ロボットのようにゆっくりとした動きで僕を捕らえると、獣のような瞳に理性が戻った。
一人暮らし用の小さな冷蔵庫とはいえ、片手で持ち上げる新の姿に改めて吸血鬼と人間の差を思い知らされた。
「ああ、リョーヘイ。こんな時間にどうしたの?」
いつもの笑顔で尋ねる新にそれはこっちが聞きたい、とツッコミたいのを我慢する。
「新が暴れてるってアキから電話が来たんだよ。それで何してるの?」
改めて部屋を見渡せば、壊れていないものはないんじゃないかというほど酷い有様で、窓ガラスが割れていないことが奇跡的だった。
こんな状況で誰も怒鳴りこんでこないアパートの住民達は相変わらず図太い神経をしている。
いや、厄介ごとに慣れているといった方が正しいか。
「この女を殺ろうと思って」
笑顔にも関わらず目は全く笑っていなかった。
新は本気で目の前の女を殺すつもりらしい。
千秋のこと以外では決して怒らない新をここまで怒らせた女は一体何をいったのだろうか。
「あら、リョーヘイくんじゃない。元気してる?」
女は呑気な声で僕に挨拶をしてきた。
この人が一番図太い神経をしているのかもしれない。
「彩香さんは相変わらずですね。というより彩香さんは新のお姉さんだったんですね。弟さんにはいつもお世話になってます」
友人の姉に小さく頭を下げた。
「丁寧にありがとう。こちらこそ。新がお世話になってるわ」
彩香さんは新と似ている顔で上品な笑みを見せる。
プロポーションもグラビアアイドルのよりも整っていて、体の線を強調する露出過多な服がやけに似合っている。
「リョーヘイ、姉さんと知り合いなの!?」
新は綺麗な目を零れんばかりに見開いた。
確かに地味な僕と華やかな彩香さんの接点はないように見えるだろう。
「前に官能小説を書く時に取材させてもらったんだよ。もちろん話を聞いただけ」
「実際にヤった方がリアルでいい小説が書けるわよって誘ったんだけど断られちゃったのよ。リョーヘイくんって意外と頑固よね」
彩香さんは熟した果実のように潤んだ厚い唇を真っ白で細い指で触れる。
「そんな気持ちでやるのは失礼だと思ったんです。何も感じなかったわけではありませんよ。実際に彩香さんの経験を参考に書かせてもらった小説の評判は高かったです。ありがとうございました」
「あれくらいいいのよ。でも今度は話だけじゃなくて実際にシテみない?」
「今ちょうど女の子同士の話を書いているのでまた取材させてくれませんか?女の子の話なので男の僕じゃわからないところが多くて女の人の意見が聞きたかったんですよ」
肉食獣のように彩香さんが僕を見上げるのをそっとかわした。
この手の人は受け流すのが一番いい。
「そういう話なら喜んで。今日こそはリョーヘイくんを食べさせてくれるんでしょう?」
「どうでしょうね?アポ無しの取材になりますけど今からでもいいですか?」
「報酬はちゃんともらえるのよね?」
「はい。もちろんです」
彩香さんは僕の腕をとって、その豊満な胸を押しつけた。
全く反応しないわけではないけれど、新と千秋の手前で反応できなかった。
「ならリョ」
「ささやかですがいくらか包ませてもらいます」
彩香さんの体を離して、いい切る前に言葉を重ねた。
相手のペースに飲まれたら面倒なことになる。
ついでに笑顔を見せれば彩香さんはもう何もいわなかった。
「あの姉さんを丸めこむなんてやっぱりリョーヘイはすごいね」
本心から驚いている様子の新に僕は苦笑した。
新もわりとマイペースな奴だが、彩香さんはそれ以上だ。
だから、今回の騒動の原因は新が彩香さんの言動に振り回された結果だとわかった。
大方、彩香さんが千秋を気に入り迫ったことで新がブチ切れたんだろう。
彩香さんを千秋から距離を離して適当な人を紹介すればよかったのに、と思わなくはなかった。
「新、そろそろ冷蔵庫を降ろしたら?」
さすがにいつでも冷蔵庫を投げられるように構える新が怖い。
彩香さんが近くにいるために、投げられたら僕まで巻き添えを食らってしまう。
人間の僕は大けがを免れないだろう。
「……そうだね。よいっしょっと」
新はしぶしぶといった顔で、ちょっと重い段ボールを降ろすように冷蔵庫を降ろした。
部屋の隅でほっと安堵の溜め息を吐いた千秋を新は引き寄せて、腕の中に閉じこめた。
「い、いきなり何すんだ!さっさと離せ、バカ!」
顔を赤くした千秋が新の腕の中で暴れるが、びくともしない。
「二人とも迷惑かけてごめんね。アキ、どこも怪我してない?」
そのまま新は千秋の服をまさぐり出した。
怪我をしていないかの確認だろうが、千秋からしたら彩香と僕に一部とはいえ裸を見られるわけで。
「何してんだ!変なとこ触ってんじゃねえよ!」
首まで赤くした千秋が新の手から逃げようとするが、新の力は圧倒的に強く、結果的に余計に服が肌蹴て際どい場所まで見えていた。
羞恥で涙目までになっている千秋に隣に立つ彩香さんの息が荒くなっていた。
先ほど実の弟に殺されそうになっていたにも関わらず、興奮できる彩香さんは本物の変態だ。
「問題が解決したみたいだから、僕は帰るよ。二人ともおやすみ」
僕は彩香さんが余計なことをいう前に部屋を出た。
千秋が救いを求めるように手を伸ばしたが、見なかったことにした。
新は僕らを一瞥だけして、すぐに千秋に視線を戻した。
その後、千秋がどうなったのかは数時間後に知ることになった。
僕の部屋に戻り、とりあえず座ってもらった。
「飲み物はコーヒーでいいですか?」
きょろきょろと興味深そうに部屋を眺めていた彩香さんの視線が僕に映った。
「リョーヘイくんの絞りたてミルクたっぷりでお願いね」
色気たっぷりの笑みが向けられる。
「牛乳たっぷりですね。わかりました。ちょっと待っててください」
セクハラを無視してキッチンでコーヒーを二つ淹れ、そのうちの一つに牛乳を多めに入れた。
インスタントしかないが、我慢してもらおう。
コーヒーの香りが狭い部屋に充満する。
「どうぞ」
彩香さんにカフェオレの入ったコップを一つ手渡した。
「ありがとう。うん。リョーヘイくんが淹れてくれたからすごく美味しいわ」
受け取ってすぐに口を付けた。
「ありがとうございます」
「リョーヘイくんって変なところで素直よね」
素直にお礼をいうとなぜか笑われてしまった。
彩香さんは僕にどんなイメージを抱いているんだろうか。
「何が目的ですか?」
「目的って何のことかしら」
彩香さんはわざとらしくとぼける。
首を傾げたことで新と違う黒々した髪が揺れた。
「本当は偶然じゃなくて新に会いに来たんでしょう?」
「あら?なんでわかっちゃったの?新は気づかなかったのにお姉さん不思議だわ」
くすくすと小さく笑う姿がやけに様になっている。
「こんな何もない場所にわざわざ来る人なんていませんよ」
「それもそうね。ねえ、アキって子はもしかして歌ってみるの『フォール』?」
「そうですが?」
突飛な彩香の言葉の意味が分からずに警戒する。
なぜ千秋が顔出しをしていないのに彩香がそれを知っているんだろう。
「驚かせてごめんなさいね。新が昔から『フォール』が好きだったからもしかしたらって思ったのよ」
「それは俺も知ってますよ」
初めてネットで話してから今までずっと千秋がいかに素晴らしいかを聞かされている。
最近は惚気話ばかり聞いていて、大学の講義よりも疲れるくらいだ。
「好きって言葉じゃぬるいわね。もう中学生の頃からそれこそ他の誰にも見向きもしないで愛してたわ。実家の新の部屋なんて『フォール』のCDや雑誌で埋まっているくらいよ」
心底おかしそうに彩香さんは笑ったが、僕は気持ち悪いと思った。
同時にもしかしたら今は盗撮写真を持っている疑惑が浮上した。
いや、あの様子だと絶対に隠し持っている。
今度、新の家に行ったときに探そう。
千秋のためにも焼却処分をしなくては。
「アキくんは新の恋人なのよね?」
「そうですよ。新の熱烈なアプローチの結果ですね」
二人が出会ってから付き合うまでに二年ほどかかっている。
それは新のアプローチはあからさまだったにも関わらず、千秋が恋愛に対して鈍感すぎて告白されるまで気付かなかったという悲しい事実がある。
少し客観的に見れば、新がどれだけ千秋のことが好きなのかわかるものなのに。
これは僕も悪かったのかもしれない。
千秋が少女漫画よりも少年漫画を好んだから、そればかり見せて恋愛について全く教えなかった。
年頃になれば同年代の友人とそういう話になるものだが、僕も千秋もお互い友人がいなかったために、そういう話には一切ならなかった。
そう思うと少しだけ不憫な新だった。
「その時の新の顔が見たかったわ」
「今と大して変わりませんよ」
飼いならされた犬のように千秋に引っつき、新から千秋を奪おうとする者に対しては猛犬のように振る舞う。
新に会ったばかりの頃は、千秋の目を盗んではすごく睨まれた。
最近では誤解が解け、むしろ率先して僕に千秋のことを相談してくるからうっとおしい。
「なるほどね。それでアキくんは本当に新が好きなの?あたしには流されているようにも見えるんだけど」
彩香さんは千秋が本当に愛しているのかを危惧していた。
確かに千秋はあまりに恋愛を知らない。
だから今は新に迫られるがままになっているが、本心はどうなんだろうかと思ってしまうのだろう。
普段の言動で誤解されがちだが、実は優しい家族思いの人だ。
「彩香さんは弟思いなんですね」
「逆よ。このまま無理に付き合い続けたら本当に好きな人が出来た時、アキくんが辛いわ。新の愛は重すぎるのよ。今ならまだ新も時間がかかるけどアキくんを諦められるかもしれない」
「もう無理ですよ。彩香さんも実際に見たでしょう?」
冗談であっても、新は自分から千秋を実の姉を手にかけることを躊躇わなかった。
新の愛はすでに取り返しのつかない場所に来ている。
「僕とアキは幼いころからの付き合いですが、アキはちゃんと新のことが好きですよ」
五歳の頃から千秋を見てきた僕にはわかる。
千秋は気づいていないだろうけど、ちゃんと新を愛している。
「残念だけどあたしにはそう思えないわ。今まで新があれほど誰かに執着することはなかったの。だからあたしは新が怖いわ。アキくんが新を嫌いになったら殺されるわよ?」
「予想の範囲内です。絶対にさせませんよ」
「それはアキくんの愛のため?新の愛のため?」
「どちらもです。僕は二人の親友ですから誰よりも二人の幸せを願いますよ」
キザな台詞に自分でいっておきながら、照れてしまった。
もちろん顔には出さない。
「リョーヘイくんみたいな親友を持って新は幸せ者ね。でもごめんなさい。新には諦めてもらうわ。あたしはそれが二人のためだと思うの」
彩香さんは悲しげに目を伏せた。
きっと本心では弟の恋路を邪魔したくはないんだろう。
「それなら試してみたらどうですか?」
「試す?」
その目には期待と不安が混じっていた。
「どれだけ愛し合っているか、二人の愛を試してみましょう。それなら彩香さんも納得できるでしょう?」
「試すって何をするつもり?」
「簡単ですよ」
僕は彩香さんに一つ提案をした。
彩香さんの顔が驚きに変わる。
「本当にそんなことでいいの?」
「ええ。さっそく明日試してみましょう。協力者はたくさんいますから気にしないでください。もちろん、二人には内緒ですよ」
彩香さんは大きく首を縦に振った。
何やらリョーヘイが暗躍しようとしてます。
意外と黒幕キャラが似合っていて、作者も驚いてます(笑)
次回で一体リョーヘイは何をやるつもりなんでしょうね。




