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冒険卿と博客人

インタールード。

主砲の発射の後、やんばるくいなのカメラで目の前で起こっている事柄を全宇宙に流しながら、何をするでもなく事の顛末を眺めていたけーこの元に一本の通信が入った。



「そこの可愛らしいお嬢さん、わしとお茶でも一杯いかがね。一つ教えて欲しいことがあるんだが」



画面の向こうにいたのは見事な髯をたくわえた70過ぎぐらいの老人だった。その顔全体に走った(ひび)のような皺は、彼が見た目より遥かに上の年齢であることを示唆していた。


「さて、わたしがかのサー・セルバンデスにお教え出来ることなんて、皆目検討がつきませんけど」

「謙遜を。けーこちゃんは何でも知っていると、ネットにも書いてある」

「何でも知らないわ、知ってることだけ、ってね。それよりいいんですか?かなり遅れをとってるみたいだけど」


けーこは断トツで最下位をひた走っている「冒険卿」サー・セルバンデスにそう尋ねた。


第二万七代冒険卿サー・セルバンデス。

宇宙の開拓期に設けられ、数万年前からもはやただの権力者の飾りになり下がっていたこの称号を、十を超える移住可能惑星の発見という偉業によって、久方ぶりに実力で手に入れた大冒険者にしては、これはいかにも不甲斐ない順位に思えたからだ。


「どうにもうちのニーナの調子が悪くてね。そろそろ棄権しようかと思っていたところさ」


牽制か。けーこはそう結論した。やむをえない措置だったとはいえ、やんばるくいなの「本当」の主砲を発射してしまったのだから、これは仕方がないことではあった。出来れば秘密裏に行いたかったのだが、狂星がゲップをするほど「何か」を喰ったというのだから、分かる人間には分かってしまうのは避けられない。


「わたしもそうしようかな。虎の子の一発も使い果たしちゃったことだしね」

「信じろと?」

「さて、嘘を嘘だと見抜けない奴のことまで、わたしが責任を持つ義理もないと思うけど」


それで二人の通信はぷつりと終わった。


「ルビコンの賽か」


けーこはふと今となっては誰も知るよしの無い銀河暦以前の故事を口ずさんだ。この偽りの天の川の向こうに何が待っているのだろうかと思いながら。

前のとつなげると、少し分かりにくかったので分割。

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