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LOG03 真央の危機
ある日、静かだったチャットが突然うごいた。
通知音が一つ。たったそれだけなのに、妙に胸にひっかかる。
「はな、パパに連絡が取れないの。探して。」
真央からだった。
短い文章なのに、焦りだけははっきり伝わってくる。
内容を追うより先に、「パパ」という言葉が目に刺さった。
それはつまり、三浦のことだ。
三浦はいま商談中だ。
スケジュールは把握している。
今この時間、真央の相手をしている余裕なんてない。
私が間に立つ場面ではない――そう、頭では分かっていた。
だから私は、できるだけ事務的に、
感情を削ぎ落とした言葉だけを返した。
「三浦さんは大切なお仕事中よ。急ぎ?」
一瞬、既読がつかない。
そのわずかな沈黙が、余計に不安を膨らませる。
やがて返ってきたのは、予想よりも強い言葉だった。
「急いでるから言ってるんでしょ。
パパと連絡がとれないのよ。」
責めるような調子。
でも、その裏にあるのは苛立ちよりも、焦りだ。
私にはそう聞こえた。
それでも私は、画面越しのその感情に、
どこまで踏み込んでいいのか分からなかった。
この時点で、もう私は気づいていたのかもしれない。
真央は「探して」と言いながら、
本当は私に、別の役割を求めていることに。




