もしも令嬢系の主要キャラの頭が良すぎたらー断罪編ー
令嬢系の物語で、そうしないと物語が進まないと分かっていても、理不尽な展開に「なんで反論しないの!」「なぜ大切な相手に秘密にしておくの?」と感じたことはありませんか?
そんなもどかしさを吹き飛ばす、爽快な断罪劇をお届けできればと思います。
男爵令嬢のライラは第1王レイモンドの元へ駆け寄り、泣きついた。
「リリアナはこんなにも可愛くてか弱いライラにこんな扱いをしてきました!貴族の冒涜は即刻流刑に処すべきなのです!!」
第1王子の誕生日を祝うダンスホールの一面を覆う鏡には、
バケツの水を被り床に座り込んでいるライラと、それを眺める私…、
頬を赤く腫れさせて泣いているライラと、それを眺める私…、
犬に噛みつかれるライラと、それを眺める私…。様々な構図のライラと私が映し出されていた。
――いつの間に撮っていましたの?
公爵の一人娘リリアナが貴族の面前で窮地に立たされているのを見て、ライラはほくそ笑んだ。
「…。」
コツコツコツ…
静まりかえるホールに、王子の足音だけが響き渡った。
レイモンドはすっと静かに腕を振りほどき、まっすぐにリリアナの元へ向かってきた。
王子は優しく低く響く声で、こう言った。
「さあ、待ち遠しかったね。断罪の刻と参ろうか。」
勝ち誇った顔のライラを横目に、王子が騎士へ目配せをする。
鏡に映し出されていた画像の少し前の映像が映し出された。
リリアナの前で唐突にバケツを自分でひっくり返すライラ…、
練武場へ勝手に立ち入り、飛んできた盾に頬をぶつけたライラを心配するリリアナ…、
リリアナの前で自分の腕に餌をまき自分で連れてきた犬に腕を噛ませるライラ…。
貴族達がざわめいた。
――自作自演じゃないか。
――あの品行方正なリリアナ様がそんなことするはず無いもの。
――リリアナ様に罪を着せようとしていたということなの?
「な、なぜ、、」
ライラは状況が読めず、わなわなと唇を震わせて呟いた。
「そなたが、初日から婚約者のいる私にべたべたとすり寄ってきた時にふと思ったのだ。
我が婚約者にいずれ嫉妬し、危害を加えるのではないか、と。
そこでリリアナ嬢に全てを記憶できるブローチをプレゼントしていた。
彼女に隠すことでも無いから、予め了承を得て全てを記憶させてもらったよ。」
「殿下、ありがとうございます。
殿下が言ってくださったおかげで肌身離さずブローチを付けておりましたし、
ライラ様と殿下が2人でいるという噂を聞いても何とも思いませんでしたわ。」
「あなたの力になれて何よりだよ。ライラが自作自演をするだけでは罪にならないが、そろそろリリアナ嬢にとっても目障りだと思うから貴族学園から追い出せる日を待っていたのだ。
…虚偽の告発は、罪だからね。」
端正な顔立ちの王子が微笑み、夕日に照らされた王子の顔はこの世のものと思えないほどに美しく残酷だった。
「で、でも、リリアナに命令されたのです!自作自演に見えるようにやれ!と!
殿下の婚約者の命令だったため逆らえなかったのです!」
「逆らえない、という割には『様』を付けませんのね。
それに、映像を撮っていたなんて…まるでそうされることを予測していたようですわ。」
ひゅっとライラが息をのむ。
「それとライラ様、王国法第56条第2項但書により、侯爵以上の貴族に対する流刑は議会の過半数の承認を要します。即刻の執行は認められておりません。
お言葉ながら、法律学をもっと学ばれてはいかがでしょうか。」
社交界で『翡翠の宝石』とひそかに呼ばれている瞳で、リリアナはへなへなと座り込むライラを一瞥した。
「では、処罰を下そうか。
貴族に罪を着せようとして虚偽の告発をしたため、ライラ・ヒューリックを舌禍の刑に処す。」
騎士が剣を抜き、振りかざした。
「お待ち下さい殿下。ライラ様は殿下の大切なお誕生日につまらない虚偽の告発をしたことに変わりありませんが、今日はめでたい日ですし、この通り私は害を被っておりません。どうかお許し頂けますか?」
「そうだね。我が婚約者に免じて許そう。
ただしライラ嬢はもっと倫理観と法律の勉強が必要なようだ。よって学園の一般科に降格させることを命ずる。」
「第1王子のお慈悲に感謝を申し上げます!!お気持ちが変わる前にここを出よう!」
両親は座り込み呆然とするライラを連れ出し、そそくさと家へと帰って行った。
わっとホールに歓声が響き渡り、次期国王陛下と王妃への期待が高まった。
――なんてお優しい方なのだ!
――お二人とも聡明で息ぴったりね。
――次期国王陛下と王妃様に相応しい方々ですわ!
――第1王子、公爵令嬢万歳!!
現国王と王妃は自分の息子とその婚約者を誇らしげに見つめ、和やかな誕生日パーティーが再開されたのだった。
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数年後、第1王子レイモンドが王位を継承し、公爵家のリリアナと結婚した。
聡明で慈悲深い国王と王妃の治める世は、争いのない、知と誠実さが尊ばれる時代となった。
そして人々は、あの日の誕生日の断罪劇を今も語り継ぎ、舌禍の教訓としている。
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