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S.S.  作者: 立風
高校編
4/5

第4話 六人の魔術師

投稿間隔も話も長くなりました

 6月21日(土)

 神奈優斗の家の前に3人の人影があった

「あれ、とういち?」

「勝?」

「お前も優斗に呼ばれたの?」

「そう。勝も呼ばれてたんだな」

「あ…2人ともどうしたの?」

「霞澄?霞澄も呼ばれたのか?」

「うん、一昨日メールが来て」

 3人で話をしていたところ家から人が出てきた。

「あ、3人とも来たのか。取り敢えずうち入って」

「お、優斗。呼んだのって3人だけ?」

「いや、後2人呼んだ」

 家に上がり、3人はリビングへと通された。食事用の机と、ソファとテレビの間にある机に分かれており、3人はテレビの前の机の周りに座った。

「そっか…お前一人暮らしだったな」

「中2からね」

 3人が食事用の机の周りにある3つの椅子や、自身の横にあるソファを見て色々な質問が浮かんだが、質問は飲み込んだ。

ピーンポーン

「お、みんなすごい同時に来たな」

 チャイムが聞こえ、優斗は玄関に向かい、戸を開けた。

「おはよ」

「おはよ、今日何人来るの?」

「5人。さっき3人来たから桔梗と涼華で最後だよ」

「そうなの?みんな早いね」

「取り敢えず入って」

「おじゃましまーす」

「おじゃまします」

 2人とも彼が一人暮らしという事は知っているが、入った事は無かったため案外物が多い事に少し驚いていた。

「あ!霞澄!」

「え!涼華ちゃん!?桔梗ちゃんも!」

「霞澄も呼ばれたんだね」

「ねえ、俺には反応しねえの?」

「ん?うん」

「うん!?おい、とういち今のひどくね!?」

「?…普通じゃね?」

「おい!俺にみんな興味ないのか!」

 2日前に優斗がメールを送った5人が集まった。6人とも小学校からの付き合いで和気藹々とした雰囲気だった。

「ははっ じゃあみんな座ってちょっと待ってて」

 そう言って優斗はリビングを出て階段を上っていった。

「あ、そういやさ、何で呼ばれたか聞いた?俺昨日学校で聞いたら明日話すって言われたけど」

「いや」

「聞いてないよ」

「誰にも言うなって言われてたから」

「学校でそれ話すのはな〜って」

「だよなー」

 少しして優斗が1冊の分厚い本を持って降りてきた。本を机に置き、机の側に座った。

「これは?」

「俺の部屋に昔からある、魔術について書かれた本だよ。500年前の教科書に書いてある歴史が少し書かれてたり、神の持っていた魔術について書かれた本。まず、魔術っていうのは500年前に生まれた神、ウルルガット・デュークアムテイオスが持ってた力で、信頼した12人の家臣に力を12に分けて受け継がせたって言われてるでしょ?それがこれ」

 本には能力について箇条書きされた部分があった。


・炎

・水

・風

・雷

・◾️

・◾️体◾️幻◾️を◾️◾️

・空間

・人◾️◾️◾️◾️◾️◾️

・物を操◾️錬金術

・切る

・魔◾️◾️◾️◾️

・膨大な魔力


「この文字かすれてるとこは?」

「これは昔からかすれてたから俺にもわかんない」

「親…家族はこの事知ってたのか?」

「両親はわかんないけどお爺ちゃんとお婆ちゃんは知らなかった」

「…そっか」

(……!この本って…)

「とういち?どうした?」

 藤一郎の仕草が少し不自然だったのに勝が疑問をもった。

「…いや何でもない」

「なぁ、何でこの話のために俺たち呼んだんだ?」

「あー…そうだね、一番話したい事から話すよ」

 少し、緊張感が強まった。

「まず…5人も魔術を使える」

「え!?」

「は!?」

「え…!?」

「……!」

「え!?」

「でも、それをみんなは知らない。だから…魔術をちゃんと使えるようになるか、魔術と全く関係ない道を選ぶか、決めて欲しい」

 衝撃が走った。聞きたいことが多すぎて何から聞けばいいのか5人ともわからなかった。

「このタイミングで言ったのは、今襲われる可能性は低いけど、今後何らかの理由で自分の力を認識して使い始めた場合、みんなに知識がないと危ないと思ったから。だから一応基本的な事はこれから教えようと思う。ただ、能力については…みんなに何の能力があるのかわかんないし、多分能力によって使う感覚が変わるから俺に教えられる事は少ない…他に聞きたい事あったらなんでも聞いて」

 最初に勝が質問した。

「…そもそもさ、何で俺たちとか優斗に魔術が使えるんだ?」

「この本に書いてある。魔術が失われない理由は魂が循環してるからで、能力は魂に刻まれてて、その魂を持つ者が魔力を使える。あと魔力を扱うだけなら神の血を引く者にも出来る。つまり、俺らの魂は前世を辿ってったら神の家臣だったんだと思う」

「あー…なんかすげえ壮大な話なんだな」

 次に霞澄が質問した。

「優斗君は何で私たちが魔術使えるってわかるの?」

「意識してなくてもみんな少し魔力が出てるんだよ」

 次に藤一郎が質問した。

「じゃあ優斗って何で5つ能力があんだ?」

「いや、これは元からだから俺もわかんない」

「…ん?優斗はあたしたちが神の血を引いてるんじゃなくて能力持ちだってわかるの?…まあ神の血引いててもやばいのには変わらないんだけど」

 涼華が優斗の発言に疑問を持った。

「?…あー…確かにそれはわかんないか…いや…でもなんか…なんて言うんだろ…わかるんだよ能力持ってるって」

 すごく漠然とした回答に疑問を持ちつつ桔梗が質問した。

「自分の力を認識してって事は認識するきっかけがないといけないんでしょ?優斗君はなんで自覚できたの?」

「………」

「優斗君?」

「ん〜…説明がむずいって言うか…まあ…気付いたら使ってたかな」

「…?」

「まあ今決めなくてもいいから。ちょっと試しに魔術使ってみない?」

 少々無理矢理に話を逸らしたことを疑問に思っていたが、みんな魔術を使うということに興味深々な表情をしていた。

「お!教えてくれんのか!」

「やってみたい!」

「魔力操作って難しい?」

「感覚掴むまでちょっと時間かかるかもしれないけど掴んだらそんな難しくないと思うよ。極めるってなったら別だけど、まずはみんな体の中心に力入れるのを想像してみて」

一先ず5人ともそれに従った。

 優斗には個人で量の違いはあれど魔力が出ているのを感じていた。

「うおっ」

「ストップ!勝!ストップ!!」

「んぁ!?なに?どうした!?」

 藤一郎も気付いた。勝の魔力量が他の3人や優斗よりも明らかに多かった。女子も少し遅れて気がつき、急に多量の魔力にあてられて鳥肌がたった。

「勝の能力は1番下のやつっぽいな」

「膨大な魔力…なんかショボくねぇ?俺も優斗みたいなかっこいいのがよかったんだけど!」

「いや神に失礼だろ」

「えー!!」

「あはは…」

「まあ俺みたいに能力何個かあるかもしんないから」

「そーじゃん!よし、上から試してくわ」

(私ってどの能力かな…文字かすれててわかんないやつだったら難しいけど えーっと…これだったら…こんな感じで…)

 桔梗も魔術を使うのをイメージしてみた。

「…ん!?え!?」

 さっきまで涼華の隣にいた桔梗がいなくなっていた。音もなく消えて涼華は桔梗がさっきまでいた場所を二度見してしまった。

「あれ?桔梗ちゃんは?」

「いやさっきまでいたのに急に消えて…わっ!」

 次は突然みんなで囲んでいた机の上に桔梗が現れた。展開が早すぎて全員「え!?」や「うわっ!?」としか言えなかった。

「え!やばっごめんごめん…」

 恥ずかしがりながらすぐに机から降りた。

「何だ?どう言う事!?」

「いや、今この本の文字かすれてないやつを上から試していこうと思って…この空間ってやつだったらどうやるんだろうって思ってイメージしてたら…急に屋根まで行っちゃって」

「屋根!?」

「わ〜…こわ…」

「で、戻ろうとしたら机の上に出ちゃった」

「桔梗は空間ってやつか。どういうのできるんだ?」

「うーん…指導書とかあってくれたらいいんだけど…その本って他に何書かれてるの?」

魔光暦(まこうれき)元年からの歴史が少し書いてあるけど…途中100年とかとんだりしてて量が少ない。最後は魔光暦445年でそこから白紙が続いてる」

「白紙ってことはこれから書き足される前提で作られたって事だろ、俺たちで書き足さね?」

「ははっ 今年の出来事でも書いとくか、531年 上坂勝 前期中間テスト数学最下…」

「おい!まだ決まってねえだろってかそんなん書くな!とういちは自信あんのかよ」

「流石にお前よりは上だろ」

「言ったな!俺より低かったら焼肉奢らせるぞ!」

「え!俺が勝ったら奢ってくれるってことか!」

「…やっぱいいや」

「いや諦めんの早いな」

 そんな男子の会話の後ろで女子は能力を試していた。

「2人とも錬金とかできたら得意そうだけど」

「いや難しい事はわかんないよ」

「物質の組み合わせとか言われたら流石に使いこなせないと思うけど…優斗君〜なんか形変えていいものない?」

「形変えていいもの?…待ってて消しゴムでも持ってくる」

「なあ、このかすれてるとこ何だと思う?」

「これは予想すんの無理だと思うけどな〜見えてる文字が少ないし、5個目のやつは氷なんだろうけど」

「6個目のやつは頑張ったらわかりそうで…わかんないね」

「っていうか今世界に魔術師が私たちだけって訳じゃないよね」

「私たちに能力が1つずつだったらあと1人か2人いるって事だもんね」

 そんなことを話しているうちに優斗は消しゴムを取って戻ってきた。

「はい、これなら形変えていいよ」

「お!俺試してみていい?」

 まず勝が錬成するのをイメージしたが消しゴムには何の変化もなく、ただメンタルに追い打ちをかけられただけだった。その後、藤一郎と霞澄も挑戦したが変化は無かった。

「じゃあ次あたしね!」

 涼華が錬成をイメージしていると消しゴムが端の方から段々と欠けていき、同時に隣に欠けた部分と同じくらいの大きさの消しゴムが出来ていった。

「おー!すげえ!」

「涼華これめっちゃ使いこなしそう!」

「すごい…錬成って出来るようになるのに時間かかるんだと思ってた…」

「…うん…あたしも思ってた」

 涼華本人もすぐに錬金術が使えたことに驚いていた。

「これで…文字が見えてる能力全部埋まっちゃったな」

 その後、みんなで考えて試したりしても藤一郎と霞澄の能力はわからなかった。

「私たちのはわからず終いかな」

「まあいつかわかるかもな」

「そういや、歴史と魔術以外にも最後の方に予言ってのがあんだよね」

「何それ!めっちゃ気になんだけど!」

 その後は本の内容を少し詳しく読んだり、魔術関係なくみんなで遊んだりして過ごしていた。昼を跨いでも6人ともまだ遊びたいと思っていたので、近くの店でご飯を買って、午後も遊んだり、魔術を試したりしていた。

 以下は魔術書の大まかな内容である。


魂と意識について

 魂と意識が生まれる仕組みについては不明。魂の循環に関して、死後約80年後に生まれ変わり、元の意識は消滅、または魂と離別した後に新たな意識が生まれ、魂に再び宿るという仮説がある。死後の世界については不明。


神は万物を統べ、三柱の眷属を従え、人々を導いた。世界を自身の目で見て開拓し、大陸に彼を信仰しない者はほとんどいなかった。

 

魔光暦

元年:神の生誕

23年:危険度SS、神の死去

331年:ハイリッヒ王国滅亡

445年:神血魔術大戦


予言(預言)

23:この世界の者は2人を除いて滅ぶだろう

103:裏の世界にて1つの意識が時代を越えるだろう

289 :裏の世界にて世界が揺らぐ技術が生まれるだろう

331:裏の世界にてヴァンパイアの王国が堕ちるだろう

445:裏の世界にてヴァンパイアと人の争いが起こるだろう

581: 裏の世界にて人の悪が再び姿を現すだろう


「この予言ってなんなんだろな」

 6人揃って予言の意味を考えていた。

「ハイリッヒ王国は歴史でやったよな。滅んだのもこんぐらいだし、予言のヴァンパイアの王国ってハイリッヒなのかな?」

 優斗は歴史と少し照らし合わせた。

「ん〜…でもヴァンパイアの国なんて聞いた事ないし、裏世界って何だろう?」

 霞澄が出てくる言葉についてあげた。

「この予言って本当に当たってんのかわかんないしな、当たってたとしたら50年後に裏世界(?)でなんかあるって事か」

 藤一郎が最後の予言について言及した。

「この危険度SSってのも意味わかんねえな」

「う〜ん…情報少ないね。他の内容が何指してるかわかんないし、予言の上に預言って書いてある理由もわかんないし、歴史で445年って別に戦争とかなく無かったっけ」

 涼華と勝は疑問に思うところをあげた。

「23年に人類滅びてないしね…あ!もう5時か〜…そろそろ帰ろっかな」

「ほんとだ!やばいあたしもそろそろ帰んないと」

「私もかな」

「みんな帰んのか。俺もそろそろかな」

「じゃあ俺も帰るか」

「わかった」

 6人で机のお菓子や飲み物を片付けた。その時に涼華は桔梗に空間操作で楽にゴミを袋に入れられるのではと提案して、試した結果ゴミ袋が消えて机の下に移動したり、ゴミ袋とゴミ自体が入れ替わってゴミが床に散らばったりと散々だったので、結局普通にゴミ袋に入れることにした。片付けた後それぞれの帰途についた。魔術書の内容に関しては情報が少なく不確かなため、わからず終いだった。


「優斗」

「ん?どうした?」

 みんなが家を出たところで藤一郎が優斗に話しかけてきた。

「………………」

「…! それが8行目の能力か…」

「………………」

「わかった。次の土曜日だね」

「そう。だから月曜日から……………」

「いや、それなら……………」

「…お前ほんと隠し事多いな」

「はは とういちも大概だろ、じゃあ………………」

「わかった」

魔光暦はみなさんの想像通り神が生まれてからの年数です。優斗と藤一郎は結構長く会話を続けていたようです、何を話していたのでしょうか。

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