異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【19】
王国の裁きを聞いて…
私の中で一応の決着はついたのだ。
召喚されてからずっとくすぶり続けていた私を利用するだけるようして、
帝国に捨てた王国が事実上壊滅して無くなった事に私は嬉しさと言うよりも、
解放感に包まれていた。
もうあの王国に係る必要がないと言うだけでも、
私にとっては心が軽くなる事だったという事なのだろう。
王国の国王と王妃に王太子と王太子妃の末路は私には見せて貰えなかった。
私が確認できたのは連れていかれる所まで。
お姫様に加工される所も私の顔には、被り物が取り付けられて何も見えないし、
聞こえてくるのは、くぐもった悲鳴と王太子の泣き声位な物だった。
その苦しむ姿を見て笑えれば気持ちも軽くなるなんて考えていたのだけれど、
王族の末路を私が見る事は最後の最後までなかったのだった。
結局、長引いた式典もその結果も王族の「最後」は私の視界には映らなかった。
それは変な感覚だけれど私は残念と言う感情を覚えていたと思う。
けれど周囲は裁きを聞くだけで良いという。
そして裁きを聞き入れて絶望しそうになる王族の姿を見て、
そこまでで満足するべきなのだと。
その日の夜も変わらず私は入浴が終わった後、
皇子の待つベッドへと寝かされると
また皇子の方に向かってトレーニングの様な、
全身を使った匍匐前進をする事になった。
柔らかいベッドの上だけでも自分一人で動けることは嬉しくて、
皇子は私がいつもの様に自分の上に来るまで待っていてくれるのだった。
そこで息を整えていると今日は、何時もとちょっと違っていて、
いつもと違う薄いシーツの様な物で私を包んだ後、
私を抱き寄せるのではなくで横に寝かしつけると腕枕をされた状態となった。
それが不思議な感覚で、皇子は何の脈絡もなく話しかけてくるのだ。
「アレはお前が見て良い物ではない。その迷子を見届けると言う事は、
お前の魂が穢れかねないのだ」
いきなり言われた事が解らず、私はきょとんとしてしまう。
たぶん昼間の王族の最後を見ないと言う判断に付いて言っている様に、
聞こえるのだけれど、それ以上にわざと抽象的に言って、
私にその真意を知られない様にと言うか、言葉にしない様にしている様にも、
聞こえていた。
「その、魂が穢れるとは?」
「意味は解らなくともよい。
お前は俺を見ていれさえすればよいのだ。
穏やかな生活と、体を元に戻す事だけを考えればよい…
もしも会いたいと願うのなら「二人の姫」になら合わせる事は許可しよう。
けれど会話は駄目だ。
眺めるだけであり「姫」達と、言葉を直接交わす事は許さない」
「それは、私が王国に未練を持っている様に見えるからですか?」
「第3皇子妃としての「理由」なら、それだけとも言えるが…
お前は「呪い」に弱い事は話したな?俺が加護を与えているのも覚えているな?」
「はい。覚えています」
「なら、話は簡単だ。
王家は少なからず「お前を恨む」のだ。
そしてそれは形を変えて「呪い」へと昇華する事も考えられるのだ。
言葉を使って、相手を縛り付ける事も残された「姫」はするかもしれない。
もちろん、俺の魔力を馴染ませた今のお前なら、なんら問題は起きない。
けれど、風邪を引いたかのような体調の悪さを当分の間受ける事になる。
もう、お前が呪いで苦しむ姿は見たくないのだ」
それは、第3皇子の願いとも言える言葉だった。
呪いをその見い受けるのはもう嫌だって思っていたし。
風邪をひいた状態程度でも皇子が心配すると言うのであれば、
私は近づかないつもりではあった。
どんな物でも呪いは…怖い。
「では、「お姫様」とも、合わない方が良いのですね?」
「それはどうだろうな。
深くは言えないが、お前の心のしこりが取れるかもしれないと…
皇帝陛下は言っていたのだ」
それは意外な返答だった。
あの二人の「お姫様」はまた「呪」を造るかも知れない危険な存在だと、
私が近づいてはいけない存在なのだと思っていたのだから。
その呪いを発生させる原因が私の心のしこりを取るとは?
どういった意味なのだろうかいまいち解らないのだ。
危険でしょう?危ないのでしょう?それを知ってなお近づくべきと、
言われると不思議になってくる。
妃は安全な所で生きる事が重要だと、あれほど言われて来ていたと言うのに。
皇帝陛下は私の怒りのはけ口としてあの二人の姫を仕えとでも?
「…王族に召喚された恨みは私の中で残り続けているとお考えなのでしょうか」
「呪いを掛けられ続け、捨て駒にされた恨みが、
皇帝陛下が裁きを下したからと言って消える訳じゃない。
魂は捕らわれるなと言いながら矛盾していると思われても仕方が無いが…
皇帝陛下が裁きを下したと言っても、
その裁きは「第3皇子妃」が納得する物であったとしても、
「帝国の白薔薇姫」となったお前が納得しなくては意味がない。
皇帝陛下はそうお考えの様だ」
王国に対する負の感情を募らせるぐらいなら、
安全にサンドバックとなった「姫」達にその負の感情をぶつけて発散しろって、
事なのだろうか?
恨み辛みを貯める位なら、そのはけ口として利用しろという事?
「「安全に白薔薇姫が笑顔になれる「道具」としてなら利用価値がある。
戦争ゲームの景品にする前に同じ命を狙われ続けるのも物白い」
とな。
人の感情のはけ口は、やはり必要という事なのではないか?」
「わ、私は…そこまで拗らせている様に見えるのでしょうか?」
「済まないが俺には解らん…
が、前世を持って生まれた俺に皇帝陛下は、父として話してくれた。
「その遠き日の記憶を忘れるべきでない」と。
「必ずその記憶がお前の助けになる時が来る」とも言っていた。
お陰で俺はお前と言う「帝国の白薔薇姫」を手に入れる事が出来たのだ。
この世界で女性に興味を持てなかった俺が唯一惹かれたのは黒薔薇姫だったし、
黒薔薇姫に興味を持ったのは、俺に前世があったからでもある。
何が先で何が後かなんてどうでも良い。
ただ、俺は自分の妃として「帝国の白薔薇姫」がいる事が全てだ。
そう言った意味で王国の「姫」とは一度だけでもあっておくべきなのかもな」
「…解りました」
「もちろんお前の気が向いた時に呼び出せば良い。
全てお前の予定に合わせさせる。
それが「姫」達の義務だからな。
気まぐれに呼んでやると良い。
当分は、第2皇子妃の玩具かも知れんが…
その辺りは仲良く「姫」という玩具を義姉妹で仲良く共有してくれ」
「はい…」
…私には王国の王家の「サンドバック」が必要という事なのだろうか?
ただ、この世界に召喚されて苦しかった王国での命がけの影武者生活の事を、
今でもしっかりと思い出せるくらいには忘れられていない事だった。
確かに私は苦しかったのだ。
自爆するつもりで半ばやけくそで帝国に来たのだ。
そこで影武者じゃない私を見つけてくれた人がいたから。
その前世を持った第3皇子がいたからこそ私は、
自分を保って「黒薔薇姫」ではなくて「私」でいられたのだ。
第3皇子が「私」を見つけてくれなかったら?
帝国内をめちゃくちゃにしても、帝国を王国に差し向けたと思う。
それが悪い最悪の姫と呼ばれるようになったとしても…
私は、最後まで王国を許せない。
許す必要もないと思っている。
やっと、解放されたと思って全てが終わったと考えていたのだけれど、
皇帝陛下の見立てでは違うのだろうか…
いつもと違い良く解らないシーツの様な物にくるまれた私はその夜は、
不思議な気持ちに浸りつつ夜が更けていくのを感じていた。
第3皇子に愛される夜ではなくて、
けれど私は別の温かさで満たされていた様な気がするのだ。
いつのまにやら、皇子の体に背中を押し付ける様な体勢になっていた。
うつ伏せで背中に手を回して貰って皇子に愛を注いでもらった後に、
皇子の上でそのまま背中に手を回して貰って支えられながら眠る形が、
いつのもスタイル。
けれど、今日は片腕に頭を乗せでもう片腕はお腹を宛がわれていた。
その宛がわれた腕がまた何故だか心地い温かさを持っていたのだ…
なんだろう体の変な部分が治されている様な…
今までにない温かさの下私は何時もより深い眠りについていたのだった。
その日の朝の目覚めは何時もより遅くて…
第3皇子のプライベートスぺースにある寝室で起きたはずなのに、
不思議な気持ちだったのは言うまでもない。
そう、その日の朝は何時もと違った朝だったから。
「おはようございます第3皇子妃様」
「おはよう…」
私の朝は遅い。
現在の所、帝室の中で一番遅いのではないかと思う位には遅かった。
それでもその事を咎める人は誰もない。
けれど遅すぎた朝は別の意味で侍女達を楽しませる事となったのだ。
いつもと違う眠り方をしていた私は起きた時もまた、
不思議な寝姿で起きる事になる。
それは、大したことではなかったのだけれど、
昨晩眠る時に体に巻きつけられていた物を未だに私は身に着けていたのだ。
そしてその体に巻きつけられていたシーツの意味を知る事になったのだ…
第3皇子が私に愛を注がなかった理由…
それが、私の体が復調していると同時に…
私の体はこの世界に来て以降無くなっていた女性特有のアレが、
戻って来たという事だった。
考えてみれば影武者をやらされて直ぐに刺されたから、
体調が万全の状態に回復出来る様な事はこの世界に来てなかったのだ。
別に子宮が潰された訳じゃなかったけれど、
辛すぎる精神状態に削られ過ぎた体力ではもちろん体に余裕なんてなくて、
その余裕が無いから、もちろん月のものは来ていなかったのだ。
それがやっと…
やっと戻って来たと思えばこれほどうれしい事は無かった。
私は、私は第3皇子の子供が産める可能性があるのだ。
正常な月のものの到来は、侍女達にとっても嬉しい物だったらしく…
私が付けてしまったシミを見て、ルンルンになりながら、
私の朝の入浴ではなくて、体を拭く事を進めていくのだ。
未だ左腕しか自由に動かせないのだがそれでも、
「おめでとうございます第3皇子妃様!」
「とっても喜ばしい日ですね!」
「やっと…やっと第3皇子妃様の女の子の日を確認出来ましたね!」
恥ずかしいやら、
体が正常化して嬉しいやらで何とも言えない気分には、
なるのだけれど…
その日のお仕度はいつも以上に入念に施されて、
私は一日を過ごす事になったのだ。
お、皇子としても、その…
解っているから、何も言わないのだと思っていたら、
その日の夕食は「お赤飯もどき」が用意されていて、
しかもそれを皇子の膝の上で食べると言う…
最大級に羞恥心を煽られる事態となっていたのだった…
それでも嬉しさが上回る辺り何とも言えないけれど、
この世界での初めての女の子の日は決して忘れられない日にもなったのだ…
立場的に言うのであれば私は周囲の人に女の子の日の周期を監視されていても、
おかしくない人なのだとも思ったけれど…
皇子の手で温められた昨晩のお腹はとっても気持ち良かった事を思い出して、
1人顔を赤くしていた私もいるのだった。
それでも、この世界に私と血のつながった人を作れれる喜びは、
何にも代えがたい。
異世界人の私は何処まで行っても周囲には血のつながらない、
他人しかいないと言う孤独感が襲って来るのだ。
それは帝室に入って大切にされれている事とは別の私の心理的問題で、
何処まで行っても同じ人間であるはずなのに「転移」して来たと言う事実から、
この世界で私は異物なのだという孤独感が襲ってくる事がある。
皇子はもちろんその事を忘れさせてくれるけれど、そうだとしても、
私は私自身がその孤独感を埋める事が出来ていなかったのかもしれない。
…そうか。
私はなんだかんだ言い訳をして結局第3皇子との間に子供が欲しかったのだ。
そして女の子の日が来た事でそれが叶えられる事が嬉しくて仕方ないのだ。
自然とその事に気付いた私は、
頭の片隅にあった故郷に帰る方法を探すべきなのかと言う、
問いに対して答えを導き出していたのかもしれない。
私の選択は、決断は、この世界で生きることなのだ。
これからの私の時間は第3皇子と生まれてくる子供の為に費やすべきなのだ。
私を影武者として扱った王国はもう何もできない。
黒薔薇姫の影武者として王国に復讐する事を考える日々は終わったのだ。
私には「次」が用意されている。
帝国の白薔薇姫としてこの世界で生きていく。
これで
異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされそして復讐を誓う
は、終りです。
ご愛読ありがとう御座いました。
主人公の復讐は果たされ、
彼女は異世界から元の世界に戻る事を考えるのは辞めて、
この世界の「帝国の白薔薇姫」として生きていくでしょう。
主人公が子供を産めるまで回復する所で、
第3皇子との子供を欲しがり、
自分の生きていく軸足を「異世界」と定めた所で主人公は、
「黒薔薇姫」であることを終らせ第3皇子妃として、
帝国と皇子の為に「帝国の白薔薇姫」として生きる事を決断しました。
つまり、もう「異世界から帰る事を諦めたのです」
今までは「復讐が終わればどうとでもなれ」でした。
そこから「第3皇子の為に生きていたい」となり、
次に「愛しい人の子供を産みたい」となりました。
主人公が、「復讐を終わらせて次に進んだ」のです。
物語に的には復讐を完遂するまでと考えていたので、
取り敢えずここまで。
後は後日談となります。




