異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【17-2】
帝国は強い。
そして揺ぎ無い。
それは侵略戦争を数度繰り返した結果でもある事は確かだけれど、
そうして取り込まれた帝国市民となった者は、
少なくとも戦争を起こそうと無駄に軍事費に費やして、
内政をボロボロにした滅んだ国より良い暮らしをさせて貰える者もいる。
世代が変われば帝国民とも血は混じり合い統合された帝国は更に強靭な国へと、
変容と遂げて言っているのだ。
寛容と言って良いのか解らないけれど今の所、帝国は優秀過ぎる皇太子と、
皇帝陛下の名の下順調な発展を遂げている。
出なければ私がこんな手厚い看護を受け続ける事は出来ないという事も、
あるけれど、第3皇子の求める発展すら順調に続けているのだから。
少なくとも皇太子が帝国を継いだ後でも帝国は滅びない。
しっかりと無理なく堅実な発展を続けるだろう。
少なくとも野心欲に駆られた王国の国王と王太子の様なバカな事はしない。
「わ、我が国は、優秀なのだ。
優秀だから、他国を侵略した帝国は優秀な我が国の意見を取り入れれば、
もっとよりよく発展できるのだ。
だから、その、て、手本を見せようとしたにすぎん。
て、帝国の豊かさはまやかしなのだ」
「…国王よ?意味が解らんぞ?ワシの質問に答えろ。
王国国民は帝国国民より良い暮らしを出来ていたのかの?」
「それは…それは…」
出来ていないのだ。
内部で反乱を起こそうとする野心家の貴族だっていた王国は、
その対応や内乱を起こさせない為にも必死に反抗貴族を押さえつけた。
けれどそれだけでは足りず武力を持って制圧した土地も数多くある。
王国を豊かにするには戦争が必須という方向に自然と動いていた王国内の土地は、
荒れ果てている。
それでも反抗貴族から「奪う事」が出来れば、王国は存続出来たのだ。
それだけじゃない。邪教なのかどうだか解らないけれど、
神聖な王国を守ると言う意味で変な宗教と教会を作り上げて、
御祈りとお布施を王国は求めたのだから。
その宗教が私と同じ黒目黒髪の姫を「邪悪な塊」としたのも自然だった。
王国はその事すら利用したのだ。
生活が楽にならず王家に対する不満を「黒薔薇姫」という、
邪悪な存在が生まれたから上手くいかない事にして不満を減らした。
その成れの果てが私の体に付けられた刺し傷だったのだから。
王族は例外なく国政を「失敗」させたのだ。
その帳尻を合わせる為の最後の手段が帝国から難癖を付けて富を奪う事。
だから、私の嫁入り道具として用意された「悪女の花嫁」となる様に、
帝国の望むままに支度金を用意させたのだ。
帝国に言われるがままに払ったと言う「愛」を見せつつ、
「不吉な悪女となった黒薔薇姫を処分する費用として」なら、
王国と、それを支援する教会なら喜んで資金を払えたのだ。
けれど、その「悪女の処分費用」として集められる資金のお陰で、
王国民の暮らしは更に苦しい物になる。
王国の王族から言われた「言葉」によって王国国民の生活は悪化する。
それでも進み続けた道の先がこの場なのだ。
帝国国民の方が良い暮らしをしている。
それを認めてしまったら国王が作り上げた大義名分が崩れさる。
この場で認められない事を皇帝陛下は口にさせるのだ。
全てはまやかしであり虚像の王国だったと。
「…国王よ、同じ「国」を治める立場の人間として、
今一度だけ問おう。
帝国民より、王国民は良い暮らしをしているのか?」
「わが、国は…我が国の国民は…
地べたを端つくばる様な暮らしをしている者がほとんどだ…」
「ではその原因はなんだか、解っているのかの?」
「…もう、許してくれ。これ以上…これ以上…私は、私は…」
何の言い訳も出来ず、国政をめちゃくちゃにした王国最後の「国王」として、
失敗を認められず、ただ、ただ涙を零していた国王は、
「自覚できぬのならそれでも良いのだが「国王」よ、
大それた夢を持ちすぎたの」
「違う、ちがう!わ、私だって帝国の皇帝の様な立場だったら…」
「何も出来ぬよお前のような「国王」には、な。
これ以上夢を見るのは疲れただろう?」
「あ、あぁ。つかれた、のだ」
「なら、楽にしてやろう「国王」よ。大地に帰る事を許してやる。
魔封じの装具と共に土の中に返してやろう」
「そ、れは…」
「せめて土の中で良い養分となるがよい。
連れていけ」
い、いやだぁ!せめて!せめて毒杯で!高貴なる者として最後を!
最後を迎えさせてくれ!」
「何を言っておるのか。自身の国政の失敗も認めらぬのだろう。
だったら最後まで王国の国王として出口のない地下を用意してやる。
その中で小さな国を統治させてやるのだ。
喜びこそすれ、悲しむ必要はないだろう」
その判決の言い渡しの直後「国王」口の中には、大量の布が詰め込まれ、
何も喋られなくされてしまったのだった。
「うぅ、うかぁ…」
「喜ぶがよい新しい王国は「王家」の墓の近くに作ってやる。
そのまま埋葬という形となるからよくご先祖様と語らえば良い」
「うぅ!ィ――――」
そのパニックを起こしたような表情を見ながら、
私は一人の人の人生の末路を無表情で見る事になっても、
ちっとも悲しくなれなかった。
一応、立場上は私の父親という事になっているのだけれど。
私にご慈悲を頼まなかっただけ、よいと思う事にしたいとは思うけれど。
それから直ぐに「国王」は退出を命じられて、すぐさま刑が執行される事に、
なったみたいだった。引きずられる様に会場から放り出された「国王」は、
王国の墓標前に作られた出口のない地下室で一生過ごす事になる。
その時の私は地下室で生かされるのか。
やっぱり一国の国王としては殺す事は出来ないんだって簡単に考えていた。
それよりも次の話に皇帝陛下は移ってしまったし国王の裁きの事は、
私の頭の中から消えていたのだった。
だって次は呪いを掛け続けていた王妃の裁きが始まったのだから。
私としては彼女への報復がどうなるのかが、気になって仕方がなかったのだ。
「では王妃、お主は喜ぶと良い。
お主は何故かこれから、何故か呪いにかかってしまうようだ。
だから、第3皇子妃と同じ事を体験させてやろうと思うのだが?
大切な娘と同じ思いが出来てうれしかろう?」
「そ、それは…、ご慈悲を…自分のやって来た事は理解しているつもりです。
ですから、せめて楽に楽にして」
「ふむ?王城で呪いを掛けていたのは王妃ではないと認めなかったではないか。
なら最後まで認めず何故か呪いをその身に受けると良い。
誰が掛けたか解らない「呪い」を、
第3皇子妃はまた受けてしまう事になるのだろう?
その時、どうすれば「愛娘」の命を救う事が出来る様になるのか近しい人で、
試しておきたいと言う親心を理解してもらえると思ったのだ。
同じ親としての立場を持つ者として、解って戴けると思ったのだかの?」
「そ、それなら!私と黒薔薇姫に繋がりはないのです!
帝国に差し出した娘は影武者です!わ、私で試しても!何の意味もありません!」
「…そうかそうか。
何。それなら血の繋がりが無いのなら、
第3皇子妃が心を痛める事が無いから安心だのぅ。
それならこれか尊い命を燃やして、貴重で良い資料を取るために頑張っておくれ」
「…え?」
「ワシの可愛い愛娘はの?第3皇子の妃となった者なのだ。
そこに王国の血が入っていようと、いまいと関係のいのだ。
娘と同じ呪いを受けて延命理療が何処まで出来るのか心置きなく試せるのぅ
それを持って帝国の役に立てたとして解放される事を許そう」
「うそ…嘘でぃぃぃぃぅぅうぅ」
王妃もまた口を防がれるとすぐさま新しい兵士に抱えられて会場から、
連れ出される事になったのだ。
けれど、同時にその兵士と共にやって来た「特殊」な姿の人にが、
皇帝陛下に対して、一礼をした後、質問したのだ。
「何か質問はあるかの?」
「ありがとう御座います。良い資料となる様に励みます」
「うむ。まぁ1年半程度は、資料として有効に扱ってくれると有り難いが、
価値が無くなったら好きにしてよい」
「はい、ではその辺りまで「使おう」と思います」
「くぅぅぅぅ!」
それだけの言葉を残して、王妃は連れて行かれたのだった。
二人が退場した事で少し寂しくなってしまった会場で、
まだ皇帝陛下の裁きは続くのだ。




