異世界召喚された私は姫様の影武者として生かされ、そして復讐を誓う【16-1】
皇帝陛下との面談から更に二日くらい過ぎた頃だった。
私の体も徐々に回復の度合いを強めて来ていた。
とは言っての左腕と両足に力が入ると言うレベルではあったが。
けれど、私の回復の度合いは周囲の侍女達から見ても早いと思えるほどの、
速度で体力を取り戻し始めていたのだった。
けれどそれでも私の体は相変わらず、細かく分割出来る革で出来た、
白くて固いダイビングスーツの様な矯正具を着せられ続けていたのだった。
毎日休みなく私は第3皇子殿下に愛され続けているからそれに対応した、
物ではあったけれど、そろそろ自分の体が戻ってくると同時にこの、
革の矯正具もはずしてくれて、何時ものコルセットとバスク型の保護具で、
代用できるぐらいにはなっていると思うのだ。
流石にそろそろ外して貰いたくなってくる。
それは術後の無意識の「外したい」と言う気分とは今回は違うのだけれど…
それでも下着の「下」直に身に着けさせられていて、
どうにも侍女達は「体」としてこの矯正具を扱い始めている様な気がするのだ。
…あまり考えない様にしているけれど、入浴とかは本当に気を使われていて、
大き目に用意した湯舟は何時の間にやら、白く色付けされていたのだ。
そして、不自由な私はその浅くて広い湯舟の中に沈められて、
体が見えない状態で矯正具が外されて、体を洗われると湯舟から出される前には、
タオルで全身を包まれた状態で出されるのだ。
その後は、袖の無いスモッグの様な物を被らされて、
私自身が体を見られない様にしながら手間を掛けて私の体を拭いていくのだ。
それが終わればまた全身に革の矯正具を取り付けられて、
最後にスモッグを脱がして貰えるのだ。
徹底的に私は自分の体を見ない様にされていたのだ。
「大丈夫だから。驚かないから。だから普通に体を見せて」
私は落ち着いて平静を装いながらそう侍女達にお願いしたのだけれど。
侍女達は、悲しそうにしながら私の体の事を話すのだった。
「第3皇子妃様が大丈夫と言われましても、
申し訳ありませんが今はまだお見せする訳にはいきません」
「もう少しの間ですから御辛抱くださいませ」
けれど、そんなに私の体は酷いのだ廊下と思ってしまうのだ。
だって順調に回復しているのにそこまで私に見せられないなんて、
一体どうなっているのかを気にせずにはいられない。
「傷跡が酷いの?」
「それも無いとは言いませんが、その…例外もあるのです…よ」
「え、えと、そのですね。皇子の愛の形が…」
「と、ともかく私達と言うより皇子殿下が、
お見せして良いと言うまでは駄目なのです御辛抱ください!」
な、何やら、侍女達は全員顔を赤らめて、その口を紡ぐのだ。
一体どうなっているのか知りたいと思う以上に、なんだか知る事も、
怖くなってくる。
「け、決して危ない事ではないのですよ!」
「そうです!そうなのです!ですからもう少しの間御辛抱を!」
「もうすぐですから!もうすぐなのです!」
3人の侍女達は私に矯正具の下は絶対に見せない様にして…
それで日常を過ごさせる事に必死いなっていたのだった。
けれど、その日の入浴の後は、何時もと様子が違っていた。
とは言っても、あまり私が気にする事ではなかったのだが。
身に着けた矯正具一式が新しい物になったのだ。
体の締め付け具合も変わって少し息苦しくなっていた。
とはいえ我慢できるレベルだったし、
なにより軽くなったような気がしたのと、
関節部分が更に柔らかくなって、
非力な私でも楽に動けるように配慮されたみたいだった。
真新しい装具を身に着けた私は
何時もの様に丁寧な入浴が終わればベッドへと戻るのだ。
腰とお腹周りに力が戻って来た証拠と言うほどでもないけれど、
両肩にベルトを繋いで上から吊るされなくても倒れ込まない。
「体が自然にバランスを取れるようになった」のだ。
自分でも気づいていない事だったから少し嬉しくて。
今まではベッドに寝かされたら動けなかったのが新しい装具と、
力が戻って来たお陰なのか、もぞもぞとベットの上で動けるようになったのだ。
自分で体を動かして動ける事が嬉しくて。
いつもなら私の呼吸が落ち着くのを待って抱き寄せてくれる第3皇子に、
使える用意なった左腕を伸ばして皇子の首に腕を絡めたのだ。
そのまま―、うんしょ、うんしょと唸りながら、皇子の胸の上に頭を乗せたのだ。
ふぅっと一息ついて、耳を胸に当てれば彼の心音トクントクンと聞こえてくる。
その一定に聞こえてくるリズムがまた私を落ち着けてくれるのだ。
術後から私の体は分厚い矯正具の革の下に押し込められていたから、
触れ合っていてもあまり体温を感じる事が出来ない。
だから、傍で寝ていても温もりを感じずらかった皇子は術後体が安定して、
一緒に寝れる様になってからは私を自分の上に乗せて眠る事が普通となっていた。
それが一番お前が生きている事を感じられると言って私は、
皇子の上でうつ伏せになって眠る事に慣れていた。
だから、私が自分でその定位置に這い上がろうとするのを、
ゆっくりと待っていてくれたみたいだった。
とは言っても上半身を胸上に持ち上げるのが今の私の限界だったけれど。
ふぅふぅと、息を乱して嬉しそうに動いていた私に手を回して、
スルリと私を自分の体の上に押し上げると、
私を定位置において背中をさすってくれる。
いつもの事なのだけれど…今日はその皇子の手の温かさが伝わってくるのだ。
私はそれも嬉しくて大人しく皇子の上で呼吸を整えるのだった。
「一人で、動けましたぁ…」
あまりにも嬉しすぎてニコニコしながら皇子に伝えると今度は頭を、
撫でてくれるのだ。
子供扱いにも感じるけれど、私は自分が回復していると言う事実が余りに、
嬉しすぎてただただ、背中を支えながら頭を撫でられるがままになっていた。
そんな私の様子に皇子も安心しているのか、
それから私は矯正具を身に着けさせられていた、
もう一つの理由を教えられる事になったのだ。
「今日、侍女達から報告を受けた「転写」が安定したそうだ」
「え?」
「お前には済まないと思ったが最後の仕上げをさせて貰う事にした」
それは、「呪い」に対する対抗策だったのだ。
そもそもの問題で、異世界から落とされた私は「世界」からすれば、
いわゆる異物であり、この世界ではない「物」を持っているらしかった。
それは特徴的な「魔力」と「存在」なので目立つらしいのだ。
だから、本来なら届く距離ではない筈の「呪い」を、
隣国から飛ばす事が出来たのだと。
呪いを補助する為の「起点」を取り出された後でも、
継続的に呪いを受け続ける事になってここまで酷い目にあったのは、
その辺りも関係していると言われてしまった。
けれど、呪いの解除後に皇子から受けた、たくさんの「愛」のお陰で、
「存在」は弱くなって皇子の持つ「魔力」に近しい波長をもつようになっのだと。
けれど、それでも完全じゃない。
他の妃達に比べて「魔力」と「存在」は順当に弱くて「呪い」に対する、
抵抗力は普通の帝室の人間より低いままなのだと。
だから―――
「お前に俺の一部を与える事にしたのだ」
そう言いながら私の頭を撫でていた手は私の背中に手を回されるのだ。
綺麗い革の下に隠れる様にしてつなぎ目が解らないよに止められている、
矯正具のベルトのバックルに手を伸ばされてカチャカチャと音を立てて、
ベルトが緩められると、体の締め付けが無くなるのを感じたのだ。
ポロリと私の首下から胸やお腹を覆っていた矯正具が外されると…
その下には、胸上とお腹周りに、銀色の線で模様が刻み込まれていたのだ。
「お前は一人では呪いに抗えない。外部から降り注ぐ呪いの侵入を防ぐために、
俺の魔力を練って作った「力」をお前の体に転写させて貰った。
目立たないようにしたつもりだがこれが限界だった。許してくれ」
けれど、そんな事を言いながら、「呪い」を防ぐためだけじゃない事に私は、
気付いてしまった。
その書き込まれた模様は私の手術跡に沿って書かれていたのだ。
汚くなってしまっている縫合跡や引っ張られて肌の質感が変わってしまった、
部分に対する境界線の違和感を無くすために、自然の綺麗な体に見せる為に、
刻まれた後だった。
消しきれなかった「呪い」受けていた跡を消し去る為の必死の処置。
それでも、私が自分の体の傷を気にしなくていい様に皇子自身が泥をかぶる形で、
「俺が刻んだと」言って…
「体が傷だらけなのは俺の所為だから俺を恨め」
と言っている気がしてならないのだ。
だから私はド直球で答えを返す事にするのだ。
「…私の体は醜いですか?汚いですか?」
「汚いものか!醜いはずがないだろう!綺麗に決まっているだろう!」
「なら、良いのです「誰に汚い」と言われても。
「醜い」と言われても。
あなたが「綺麗」と言ってくれるのなら…
私にはそれで十分なのですよ」
二人で私の体に刻み込まれた模様を見ながら…
それでも私は皇子に笑顔を向ける事が出来るのだ。
第3皇子にだけ「綺麗」と言ってもらえるのであれば私には十分なのだ。
私はそれ以上を求めない。
とはいえ、まだ治りきっている訳では無いから、
矯正具は身に着けていなくちゃいけない。
けれど、その日の夜は本当に何も身に着けていない状態で、
初めて愛を注がれたのだ。
その満たされた気持ちが嬉しくて私は次の日、
起きた時に身嗜みが整えられて矯正具が元の形に身に着けさせられていた事すら、
覚えていられないほど深く眠っていたのだった。




